ゲームサウンドは文化である! JAGMOオーケストラコンサート「剣士達の交響乱舞」取材レポート
シシララTVのタダツグです。去る3月の下旬、僕は東京・文京区とあるコンサート会場にいました。理由はたった1つ……JApan Game Music Orchestra、略して“JAGMO”。「ゲーム音楽を音楽史に残る文化にする」というビジョンのもと、オーケストラ公演を実施する日本初のゲーム音楽プロ交響楽団のコンサートにご招待いただけたからです。
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そもそもコンサートというものにあまりご縁がない僕。スーツを着た社交界的な人々ばかりがいたらどうしよう……なんて考えながら、ダウンジャケットにジーパンで現地に向かったのですが、なんというかその心配は杞憂でした。現場はまったく堅苦しくなく、むしろとても居心地がいい感じ。考えても見ればここにいる人たちは、みんながみんなゲームが好きで、ゲームサウンドを愛しているフレンズなわけですから、そりゃもう完全にアットホームな雰囲気にもなるというものです。
なんと、シシララファミリーのみずがめさんと現地でバッタリお会いできるなんてサプライズもあり、めっちゃ興奮しながら着席! 今日の公演は「剣士達の交響乱舞」ということで、『ゼルダの伝説』や『ファイナルファンタジー』、『ファイアーエムブレム』に『モンスターハンター』と、誰もが知っている伝説の剣士たちの戦いを彩った名曲が奏でられるとのこと。まさに血肉滾る狂乱の舞ですよ!(←公式サイトにあった文言をパクっちゃったけど、まさにそんな感じだったんだから仕方ない)

ということで、当日の演目はこんな感じ(公式サイトより)。
■『FINAL FANTASY』シリーズより
「閃光」
「ビッグブリッヂの死闘」

■『ゼルダの伝説』シリーズより
・ゼルダの伝説
「メインテーマ」

・ゼルダの伝説 時のオカリナ
「タイトル」
「大妖精の泉」
「コキリの森」
「ハイラル平原メインテーマ」
「迷いの森」
「森の神殿」
「ゲルドの谷」
「風車小屋」
「ボス戦闘」

・ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド
「メインテーマ」
「戦闘(フィールド)」
「ガーディアン戦」
「リトの村(昼)」

■『ファイアーエムブレム』シリーズより
・ファイアーエムブレム
「メインテーマ」

・ファイアーエムブレム 覚醒
「遠征~炎」
「貴様らが...姉さんの言葉を語るな!」
「『Ⅰ』~為」

・ファイアーエムブレムif
「光射す彼方へ~颯」
「汝、光の同胞よ」
「汝、闇の同胞よ」
「すべての路の果てに~地」
「いつかきた旅路~轟」
「if~ひとり思う~」

ほか、『ファイアーエムブレム ヒーローズ』『ファイアーエムブレム Echoes』より

■『モンスターハンター』シリーズより
・モンスターハンター
「英雄の証」
「咆哮~リオレウス」

・モンスターハンター2
「炎国の王妃~テオ・テスカトル&ナナ・テスカトリ」
・モンスターハンターポータブル 2nd G
「闇に走る赤い残光~ナルガクルガ」
「絶対零度」

・モンスターハンター3
「健啖の悪魔~イビルジョー」

・モンスターハンターポータブル 3rd
「閃烈なる蒼光~ジンオウガ」

・モンスターハンター3G
「剛き紺藍~ブラキディオス」

・モンスターハンタークロス
「灼熱の刃~ディノバルド」

■『大神』より
「タイトル」
「プロローグ」
「オイラのテーマ」
「神州平原」
「妖怪退治」
「ウシワカ演舞~ウシワカと遊ぶ」
「常闇ノ皇」
「Reset」
「太陽は昇る」

■『キングダムハーツ』シリーズより
・キングダムハーツ
「Dearly Beloved」
「Night of Fate」
「Traverse Town」

・キングダムハーツⅡ
「Roxas」
「Tension Rising」
「Old Friends, Old Rivals」
「Darkness of the Unknown」
「The 13th Struggle」

・キングダムハーツ 358/2 Days
「Vector to the Heavens」

・キングダムハーツ バース バイ スリープ
「Birth by Sleep -A Link to the Future-」

■『アークザラッド』シリーズより
・アークザラッド
「アークザラッドのテーマ」
「戦闘 2」
「戦闘 6」
「セーブ&ロード」

・アークザラッド2
「エルクのテーマ」
「LAST BATTLE」 「明日へ」
いかがですか? ゲームファンなら誰もが知っていると言っても過言ではないラインナップ! ゲームを知らないゲームライターである僕ですら、たいがいのタイトルは知っている……むしろ遊んだことがあるものばかりでございました。
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まずは「ゼルダの伝説」から公演スタート! 壮大なアレンジを施された「メインテーマ」はあまりにも印象的で、オープニングミュージックとして最適。弦楽器はもちろん、木琴や鉄琴などの打楽器がいい味を出していました。板のようなものを叩いて、シンバルとは違った金属音を表現したりと、奏でる音の質への追求がすさまじい! ここらへんが、JAGMOが多くのファンに愛される由来なのかなと。
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指揮を担当するのは、永峰大輔さん。躍動感がものすごく、その姿はさながら勇ましい剣士のよう。指揮棒を剣の代わりに、舞うようにカンパニーを率いていました。ちょうど『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』を遊んだばかりだったこともあり、「ガーディアン戦」を聴いたときは、あの日のパリィの奇跡を彷彿とさせましたね。

お次は『キングダムハーツ』。こちらはメインテーマを聴いただけで泣きそうになってしまいました。初めてこのゲームをプレイしたのはもう15年も前になるのに、音楽をしっかりと鮮明に覚えていたことに自分でも驚き。メドレーがものすごく美しく、周りのみなさんもしんとして聞き入っていました。

どの楽器も素晴らしいのですが、とりわけピアノがステキ。“『キングダムハーツ』の楽曲はピアノが最高”と自分の中でずっと思ったいたのですが、その思い込みが確信に変わった瞬間ですね。
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そして演奏は『モンスターハンター』へ。じつは、このコンサートの直前に『モンスターハンター ダブルクロス』を購入したばかりだったものの、仕事が忙しすぎて開封するのを我慢していたところだったので、予想もしない形で狩猟魂をくすぐられることになりました。なんというか、やはり『モンハン』の楽曲には戦闘意欲を掻き立てるナニカがありますね。なんというか、『ロッキー』のテーマに通じるナニカ(笑)。
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とにかく、和太鼓がいい仕事をしていました。なんて勇ましいんだ。モンスターごとにテーマ曲があるというのも、はなはだ素晴らしい。というか、曲を聴いただけでそのモンスターとの死闘を思い出すほどイメージがひもづいているというのは、じつはものすごいことなんじゃあなかろうか。

肉焼きのフレーズが巧みに挿入され、「上手に焼けましたー!」って叫びたくなったのは僕だけではないハズ。そして「英雄の証」を聴くと、居ても立ってもいられずに血がざわめくのもまた、僕だけではないハズ。何度でもいいますけど、マジで狩猟本能をかきたてる音楽の数々……こんなん、ひと狩りいっちゃうしかねえだろっ!
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休憩明けは、待ってましたの『ファイナルファンタジー』。シリーズに名曲は数あれど、マイランキングの中でかなり上位に位置する「閃光」と「ビッグブリッヂの死闘」が流れます。驚いたのは、和楽器で独自のアレンジを盛り込まれていたこと。『FF』と和楽器って、頭の中で簡単には直結しなくないですか? それをいとも簡単に(いや、簡単にではないのかもしれないけど)やってのけてしまうJAGMO……サイコーかよっ!

もちろん、いかに新しいことに挑戦したところでアレンジがカッコ悪かったらガッカリなわけですが、これがまためちゃくちゃカッコいいからシビれるんですわ。「閃光」から「ビッグブリッヂの死闘」への繋ぎとか、マジで神がかってましたからね。休憩明けからとんでもないものを聴かせていただけました。

お次は『アークザラッド』。何を隠そう、僕がPlayStationで最初に遊んだRPGがこの『アークザラッド』だったので、思い入れが強いタイトル。そのサウンドは、今聴いてもなんら色褪せることなく輝いていました。個人的に、『アークザラッド』は初代も『II』も含めて、そろそろPS4などでリメイクしていただきたいわけですが……SIEさま、いかがでしょうか。ちょこの正体がわかった瞬間の衝撃とか、今の若いゲーマーはほとんど知らないのか……と思うと、なんだか非常にもったいない!
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ちなみに、日によっては『アークザラッド』の代わりに『ワイルドアームズ』の楽曲が奏でられた日もあった模様。『ワイルドアームズ』も『アークザラッド』と双璧をなすPSのオリジナルRPGだけに、両方聴いてみたくなるってものですよね。両方が演奏された金曜日夜の回がうらやましすぎる!(ご招待いただいた者が言えることでもないですけどね 苦笑)

そして演奏は『ファイアーエムブレム』へ! 「メインテーマ」がかなり軽快でポップなアレンジを施されていてビックリ。これはこれで味がありましたけどね。

今回、『覚醒』や『if』の音楽がかなり演奏されたのですが、僕はなぜかあまり原曲を覚えていなくて。「はて、おかしいぞ……」となったわけですが、これはもしかするとケータイゲーム機ならではのジレンマかも。すなわち、ニンテンドー3DSで移動中の電車内などで遊ぶ機会が多かった作品だけに、BGMを切って遊んでいた時間が長かったからなのかな……とね(同様のことが『FEヒーローズ』にも言えるわけですが)。

もちろん、オーケストラで聴いただけで、これらの作品の楽曲も素晴らしいことはすぐ理解できました。とはいえ、そろそろコンシューマでゴリッゴリの『ファイアーエムブレム』を遊びたくなっている今日この頃です。
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そして最後は『大神』! 尺八や和太鼓にオーケストラの楽器が重なって、めちゃくちゃ神々しいことになっていました。コンサートの感想を書くときに「神々しい」って単語はちょっとオーバーなのかもしれませんが、ホントに神々しいんだから仕方ない。めちゃめちゃ叙情的でわびさびが効いていて、これは和楽器ならではの表現力だなぁと。

三味線のソロからの尺八とのセッションなど、あまりにも雰囲気が粋で、シャッター音が気になって撮影ができませんでした。本当にすごかったよ!
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和太鼓同士のセッションは、まるで力のぶつけ合い。ものすごく力強くてイカしてました。和楽器と洋楽器がコラボして奏でるサウンドというのは、本当にお祭り感がヤバいですね。今後もぜひ続けていってもらいたいところです。

アンコールで「閃光」からの「ビッグブリッヂの死闘」をもう1度聴かせてもらい、至福の時間はあっという間に終了。お世辞抜きで、JAGMOのコンサートは最高でした。アレンジや演奏の素晴らしさはもちろんのこと、「ゲーム音楽を音楽史に残る文化にする」という活動の指針には本当に胸を打たれます。ぜひ、今後ともこのスタンスのままブレることなく頑張っていただきたいと切に思いました。

さて、そんなJAGMOさんですが、すでに次回公演も決定しているとか。公演名は「旅人達の追想組曲 - Dear once Journeyer -」。僕も今から注目しているわけですが、いったいどんな内容になるのでしょうか? 少しでも気になっている方は、下記の公演詳細をぜひご覧になってみてください。それでは、本日はこのへんで!

● JAGMO 公式サイトはコチラ
●「旅人達の追想組曲」の詳細はコチラ

テキスト:タダツグ(Tadatsugu) シシララTV編集部、電撃編集部などで活動中のゲームライター/編集。生放送にも出演中。いつまでも少年の心を忘れないピーターパン症候群を自認するケツ合わせ系テキスト書き。好きなゲーム:『ニーア』シリーズ、『ヴァルキリープロファイル』シリーズ、『ペルソナ』シリーズ、『パズル&ドラゴン』など多数。

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