『アズールレーン』という現象を読み解く
鮮烈なヒットを飛ばし、多方面に衝撃を与えた「アズールレーン」。

ネットの記事を拝見しておりますと「中国産のゲームが〜」や、「艦これの中国版で〜」といった文脈で論じられることが多いようなので、本稿ではもう少しユーザー目線で「アズールレーン」という現象に迫ってみたいと思います。というのも、筆者がいま凄まじくハマっているからです。ほんと面白い。

なお、本稿でお伝えする内容は全て、客観的な事実とそれらを元に筆者の推測を述べたものとなっております。長文となりますが最後まで読んでいただくと「アズールレーン」のヒット要因を体系的に理解できる内容となっている、はずです。

目次
1. アーリーアダプターは誰か?
2. なぜ高いセールスを維持できているのか?
3. なぜユーザーは継続するのか?
4. まとめ
※限りなく業界向けの内容です。
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「アズールレーン」の愛宕。・・・すごく、いい。
1. アーリーアダプターは誰か?

ヒット要因を考察すると、シンプルにキャラクターデザインが秀逸(かわいい・セクシー)である、というのは、大変わかりやすい理由だとは思いますが、ではそこにどんな人が食いついたのか、というのが「アズールレーン」という現象を理解する上で重要であると筆者は考えております。

つまり、「アズールレーン」にとってのイノベーター〜アーリーアダプターはどんな人なのか、という話で、イノベーターは間違いなく、「艦これ」ユーザーならびに「艦これ」オマージュ作品である「戦艦少女R」などをプレイするユーザー群や、アプリの事前予約プラットフォーム等でその存在を知ったユーザーたちであることは間違いないのですが、アーリーアダプターはどんな人なのか。

おそらく、一大勢力として考えられるのは、「Fate/Grand Order(FGO)」のユーザーたちです。

なぜそう考えたのか、という理由は単純明快で、筆者自身がここ数ヶ月は特に「FGO」をメインでプレイしており、Twitter上のゲーム専用アカウントに関しても、主にFGOのプレイヤーたちをフォローし、タイムラインを構築していたため、多くの「FGO」ユーザーたちが「アズールレーン」に興味を持ち始める様をいちユーザーとしてリアルタイムに観測してたからです。

実際に振り返ってみましょう。

リリース初期からだいたい一週間ほど経った頃でしょうか。徐々にFGOユーザーたちのTwitter上のつぶやきの中に、アズールレーンの話題が入ってきたのです。

そこから徐々にタイムラインに変化が見られました。ゲームのスクショや、ゲームそのものについてのつぶやきが行われるだけでなく、二次創作イラストが増え始め、「FGO」「艦これ」などの同人誌を制作している人気の同人作家たちも「アズールレーン」に食いつき始めました。9月末にはその潮流は明らかなものとなり、多くの「FGO」ユーザーたちが「アズールレーン」に関するつぶやきを行っていました。ちょうど9月末からイベントが始まったのも相まって、セールスランキングが大きく伸長したのが印象的でした。

逆に「FGO」はハロウィンイベントの復刻(直前はネロ祭の復刻)と、ひたすら周回作業を繰り返すイベントかつ復刻であったことも相まって、あまりつぶやくネタがない中で、「アズールレーン」がタイムラインに登場し、「なんとなくみんながプレイ開始している」様子を目の当たりにすると、興味を持つのは自然な流れだったのではないかと推測できます。

なおかつ、「中国産のゲーム」という文脈よりも、公式のイラストや二次創作のイラストなどで「キャラがかわいい・セクシー」という文脈で目に入ってくることが多かったことからも、「キャラクター」というものにプレイモチベーションの多くを依存する「FGO」のユーザーにとっては跨ぎやすい敷居だったのではないかとも推測できます。

このようにTwitterを「FGO」ユーザーの目線から観測するだけでも、異常とも言えるほど話題に上がる「アズールレーン」は、もはや現象と言っていいレベルで流行しているコンテンツであると言えます。

また、近頃はTwitterのフォロワー数をキャンペーン施策で伸ばすことも少なく無いため、フォロワー数の多寡の評価がしづらい側面もありますが、こと「アズールレーン」に関しては毎日4,000人以上のフォロワーが純増し、リリースから一ヶ月で20万人以上のフォロワーを自然に集めているという点も、マーケティング目線ではどこまで伸び続けるのかが気になるところです。(「FGO」のTwitterアカウントのフォロワー数は今でもなお毎日1,000人単位で純増し続けており、ついに100万人を突破しました。)

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これがノーマルだと・・?レアリティ仕事しろ!!
2. なぜ高いセールスを維持できているのか?

次に、一過性でなく、高いセールスを維持し続けている現状を鑑みて、いわゆるキャズムを超えた、と考えられる「アズールレーン」の、ユーザーの流入のその先にあるヒット要因をユーザー目線で因数分解してみましょう。

まず、本稿を執筆している2017/10/23現在において、10月上旬から本日までの間、いわゆるガチャイベント的なものが全く無いのにも関わらず高いセールスランキングを維持している、という事実に業界関係者の方々はお気づきでしょうか。プレイヤーとして遊ばれている紳士諸君や、「アズールレーン」をある種の特異点として気付き研究されておられる諸兄を除けば、ノンIPタイトルである「アズールレーン」がリリース1ヶ月でこのような異常事態を引き起こしてることを知ると震えること請け合いでしょう。

この異常事態を読み解くことができるかどうかが、「アズールレーン」という現象を、ビジネス的に理解する上では重要となります。

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良心的な輩出率。
本腰を入れてプレイをすると理解できますが、「ガチャ」で課金を煽るタイプのゲームではありません。なぜなら、ガチャ(建造)の原資(キューブ・資金)はゲーム内で毎日簡単に入手できます。もちろん課金で購入できますし、ガチャといっても日本で主流のタイプのそれとは異なるものではありますが、例えば「FGO」と簡単に比較すると下記のようになります。

・最高レアリティキャラの輩出率
1%(FGO) vs 7%(アズールレーン)

→加えて、「アズールレーン」の場合、クエストドロップで恒常ガチャのキャラの多くが手に入ったり、むしろクエストドロップ限定のキャラが非常に強かったりと、キャラ入手方法がガチャに依存していません。また、ガチャ(建造)限定のキャラが現状それほど多くなく、一般的なキャラガチャに比べるとはるかに少ない投資、あるいは完全な無課金でも比較的容易に揃えることができます。なお、両タイトルのガチャ1回あたりの単価で比較しても、定価ベースで2倍以上の開きがあります。

・限界突破要素
同キャラが素材として4体必要(FGO) vs 同キャラもしくは突破用素材が4体必要(アズールレーン)

→「FGO」の場合は限界突破要素が宝具の威力アップのため、限界突破要素としては比較的エゲツなさが少ないのですが、輩出率がエゲツないため、自分の好きなキャラクターかつ高レアリティなものを完全な状態まで育成するためには途方もなくお金と時間がかかる、というのは「FGO」ユーザーの皆様であれば周知の事実かと思います。(これは批判ではないです。筆者も「FGO」が大好きなので。)
一方で、「アズールレーン」の場合は、そもそも限界突破の敷居が異様に低いです。端的に言えば、一体目のキャラが手に入ってしまえば、あとは無理にそのキャラの排出を狙わずとも、完全な育成は可能です。

要は、キャラクターをコンプリートする・完全な状態まで育成する、ということに対する課金要求度が異常なほどに低いということです。どんなスマホゲームでも無課金でも遊べます的文言はありますが、「無課金でも本当にキャラコンプできる(可能性がある)」ゲームは、キャラというものがガチャの要素として存在しているゲームにおいては日本初なのでは・・・と思います。

ではなぜ高いセールスを維持できるのか。少なくともガチャが要因ではないのは明らかかと思います。筆者の考えとしては「燃料」への課金が一番多いのでは無いかと推測しています。

いわゆる一般的なゲームにおける、スタミナに相当する要素なのですが、継続的に遊んでいるととにかくこれが枯渇します。また、時間回復や委託(放置要素)でも入手できるのですが、満タンまで回復するためには相当な時間がかかります。

一方で、「燃料」への課金をしないとまともに遊べないのか?と問われるとそんなことはなく、筆者の場合だと、正直「FGO」と並行してプレイして、「FGO」のスタミナ(AP)が切れたら、アズールレーンを遊ぶ、というような遊び方をすると、かなり丁度良い遊び方ができます(笑)もちろん本気で周回するときはついつい燃料を買ってしまいますが。

ゲーム性としては、シューティング要素のある艦これ、といった捉え方をされますが、それはそれで正しいのですが、肌触りとしてはいわゆるハクスラ系のゲームをやっているそれと同質の、ひたすらレベリングとレアドロップを狙ってステージを周回し、強くなってまた次のステージに進む、というタイプのゲームなので、とにかく周回すること自体がゲームの根幹となります。

それゆえに、スタミナ(燃料)は枯渇しがちで、一方でゲームそのものの根幹であるがゆえに、ガチャほど高額にはならずとも、燃料のための少額決済で課金しているユーザーが非常に多いのではないかと推測しています。(いわゆる課金率が高く、ARPPUが低いタイプのゲーム。)

そして、少額決済を中心に大きくセールスを生むとなると、継続率の高さも必要とされます。そういう意味では、ユーザーが継続しうる絶対的な理由があると筆者は考えます。
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ダイヤ一摘みで低燃費編成なら相当数周回できます。
※補足として、本題からズレますが、燃料消費量はクエスト固定ではなく、使用キャラのレアリティや限界突破レベルに依存するため、高レア・完凸キャラのみで編成すると、燃費が凄まじく悪くなるのと、キャラのレアリティよりも装備やスキルのシナジーが重要なため、国産スマホゲームでありがちな、最高レアリティ以外はゴミ!みたいなゲームバランスにはなっていないのも特筆すべき点です。

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委託を駆使すれば全キャラ育成イケますね(震声)
3. なぜユーザーは継続するのか?

前提として、継続するユーザーなりに「アズールレーン」を好きになるポイントがそれぞれあるのは当然ですが、結論を言ってしまうと、そもそもの設計が「他のゲーム(それこそ「FGO」)と並行しても十分楽しめる」つくりになっていることが、「アズールレーン」ユーザーが継続している大きな理由の一つだと考えられます。

基本的に多くのスマホゲームが、そのゲームにおける滞在時間を伸ばそうとする傾向にある中で(例えばスタミナ制がない、PvPを無制限にできるなど)、「アズールレーン」は委託(艦これで言うところの遠征。キャラを一定時間ロックする代わりに経験値などが貰える。)や寮舎(キャラを配置すると、食糧を消費して経験値が稼げる要素。食糧は燃料で交換できる。)の存在により、端的に言えば毎日集中してプレイ時間が取れず、放置気味になったとしてもキャラクターは十分に育成できるし、スタミナ要素である燃料に関しても報酬の大きい委託や寮舎の食糧で消費できるため、スタミナ制のあるゲームではストレスポイントになりがちな「スタミナが溢れる」という現象すらも回避できており、「アズールレーン」以外にヘビーに遊んでいるゲームがあったとしても、十分楽しめるようになっています。

ゆえに、離脱者も少なく、無課金ユーザーも廃課金ユーザーも複数ゲームを遊んでいるユーザーも皆等しく継続的に「アズールレーン」を楽しめているのではないかと推測しています。

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道半ばの筆者のドック。3-4だけで1000回以上出撃してますが、いまだに赤城加賀落ちず。チュートリアルが終わらない。
4. まとめ

「アズールレーン」開発陣や運営陣が、日本市場を狙い撃ちにして、本稿で取り上げた要素を盛り込んだかどうかは定かではありませんが、結果だけを見れば、今の日本市場のスマホゲームの在り方に一石を投じたタイトルであるのは間違いありません。

一方で、下敷きになっているのは明らかに「艦これ」であり、わかりやすく「艦これ」のストレスポイント(羅針盤や轟沈)を取り除き、「艦これ」の味の一つとも言える建造システムすらもインスタントなものにし、徹底的にスマホに最適化した結果生じたものが「アズールレーン」とも言えるので、オリジネーターとしての「艦これ」が尊いのは間違い無いですが、フォロワーとしての「アズールレーン」が「艦これ」の模造品かと言われると、筆者は全くもってそう思いません。

乱暴な例えですが、「アズールレーン」は「艦これ」の模造品であるという論調は、ロック音楽で言うところの「オアシス」は「ビートルズ」の模造品である(「オアシス」の部分は色々と差し替えできますね)と同質の表現だなぁと思ってしまいます。オリジネーターの影響下にあるのは間違い無いですが、フォロワーであることが欠点になっているとも思えない、という話です。

決して万人受けするコンテンツでは無いと思いますし、比較して国産のスマホゲームを卑下する気持ちも毛頭ないですが、本稿でお伝えしたいことは、日本のスマホゲーム市場に関わる方々がネットの記事を見て、少しだけ遊んで「ああ、あの中国版の艦これね。」程度の認識で「アズールレーン」というコンテンツ、いや、現象を理解したつもりになってしまうことは大変もったいないことではないか、と思ったということです。

この「アズールレーン」という現象を正しく理解することは値千金です。しかしながら、スマホゲームのビジネスを理解している人ほど、色眼鏡で見て、カテゴライズをし、日本で当たった中国産の萌え系ゲームなどと十把一絡げにしがちです。どんなユーザーがなぜ「アズールレーン」を評価し、絶大な人気と商業的な成功を生んでいるのか、そこと真摯に向き合う姿勢は必ず糧になるものだと筆者は考えております。

そして、「艦これ」という素晴らしいゲームがあったからこそ、「アズールレーン」という素晴らしいゲームが生まれたのと同様に、「アズールレーン」があったことで、これからまた素晴らしいゲームが世の中に生み出されることを強く強く願っております。

現場からは以上です。
引き続き、筆者はロングアイランドちゃんに愛を注ぎたいでござる。
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干物妹化するロングアイランドちゃん。声がいいんだよ、声が。
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テキスト:Yuji Yokota(GEEKPOCO) 
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