くっ殺なんてもう古い!? オークは倒すものではなく愛でるもの! 『シャドウ・オブ・ウォー』で理想のオークを探そう【hororoのこってり洋ゲー専科/第1回】
合戦や攻城戦って、男の子だよね。剣でガシガシ斬り合う感じって、闘争心の塊というか、見ていて胸が熱くなる。男は誰でも心に戦士を宿しているもの。なんなら武士でも、騎士でも、グラディエーターでも、クシャトリヤでも、宿したものの名前は問わないが、つまりは戦いに焦がれる魂を持っているハズだ。
もちろん、同じようにチャンバラの魅力に焼かれる女性も少なくないだろう。そんな貴女はアマゾネスなんてどうかな?

……いや、そんなことはどうでもいいんだった。まずは自己紹介を。「シシララTVで洋ゲーの記事書かない?」と言われて、まんまと釣られてきたゲームライターのhororoです。よろしく!

このやり取りやタイトルでわかる通り、俺がメインで遊んでいるのは海外産のゲーム……いわゆる洋ゲーってやつ。主食が洋ゲーというだけであって、国産ゲームもスマホゲーも、アナログゲームだって遊ぶけど、このコラムで取り上げるのは洋ゲーのみに絞っていくつもりだ。

洋ゲーと言っても、世界的な超大作からインディーゲームまで幅広いけど、俺が好きなのは簡単にいえば超スペクタクルな作品。最高にリッチで、ド派手であるほどいい。もちろん、中小の開発スタジオが創意工夫を凝らして作り上げた作品のなかにも、格別にいいものがあることは知ってる。でも、正直に申し上げてしまえば、俺は映像で心を盛り上げてくれるものが大好きなのだ。大艦巨砲主義サイコー、マネーイズパワーなのである。
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そんな俺が、連載を始めるにあたり最初に取り上げるのは、2017年10月12日にワーナー ブラザース ジャパンから発売された『シャドウ・オブ・ウォー』。発表時から、大いに俺の心を震わせてくれていたタイトルである。なんてったって、地味に発売されて、地味に数々の賞を取り、地味に称賛された、あの『シャドウ・オブ・モルドール』の続編なんだから。

「おや? モルドールとな?」と勘付いた人もいるかもしれない。そう、このゲームは、かの近代ファンタジーの礎を築いた小説「指輪物語」や、その映画「ロード・オブ・ザ・リング」、「ホビット」と同じ“中つ国”を舞台としたもの。モルドールといえば、物語の主人公であるフロドたちが向かう、敵の総本山。冥王サウロンのお膝元である。本作は、その敵の本拠地でただ一人戦うことになった男、タリオンの物語が描かれていく。
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いかがだろう。ファンならこれだけでグッとくる何かを感じるハズ。そもそも「ロード・オブ・ザ・リング」のゲームというだけで、ファンならば買わない理由はない。

何? ファンなのにまだ買ってないだって? ならばキミはこんなコラムを読むのはやめて、今すぐ買いに行きなさい。絶対損はしないから!

さて、原作ものと聞くと、小説や映画を見ていないとわからないのでは……と身構える人がいるかもしれない。でも、そこは安心してほしい。本作はいわばスピンオフ作品。陳腐な言い回しだが、原作なんて知らなくても問題なく遊べる逸品となっている。それより何より、もっとゲーム的な面でオススメしたい魅力がたくさんあるのだ。だから、まだグッとくる何かを感じていない人は、ちょっと時間を割いてこのゲームのアピールを聞いて(読んで)いってくれ。

■1:世知辛いオークの社会で自分の派閥を作り広げていく

先にも述べたように、本作の舞台はいわゆる敵の本拠地。孤立無援なんて生易しいものじゃなく、周りを見ればとにかく敵ばかりだ。というか敵しかいない。

では、タリオンはライオンの檻に入れられた一匹の子ウサギなのかといわれると、答えは否。だって彼は、敵を支配し自分の僕として操る力を持っているのだから。くわえて、タリオンは死なない。正確に言うと、すでに死んでいるから、倒されてしまってもすぐに復活する。

一応、詳細な設定も下に書いておく。書いておくけど、興味のない人はここは読み飛ばしてくれてもOK。
※本作の舞台設定は、ざっくりと説明すると「ホビット」と「ロード・オブ・ザ・リング」の間。タリオンは黒門を守るゴンドールのレンジャーだったが、前作の冒頭でモルドール軍の襲撃を受けて死んでしまう。しかし、前作の宿敵である黒の総大将が行った儀式により(彼との思惑とは異なり)、その身にとある幽鬼を宿して復活。憑依したのは、ケレブリンボールという名前のエルフ……すなわち「ロード・オブ・ザ・リング」の物語の中心となる“指輪”を作った人物である。死者と一体となったタリオンは、死から見捨てられた存在としてモルドールで戦いを続けていく。その様子から、オークからは“墓を歩く者(グレイブ・ウォーカー)”と呼ばれ、恐れられているのだ。
……えっと、なんの話だっけ。そうそう、オークを支配できるという話だった。本作では、敵は各エリアごとにピラミッド状の組織を構築している。エリアごとに存在する砦を支配する“首領”。その下に付き、砦の防衛を担う“軍団長”が2~4人。そしてフィールドを徘徊し、思い思いに行動している“小隊長”と続き、モルドール中に蔓延る無数の一般オーク、という図式。
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小隊長クラスともなればなかなか手ごわく、そんなものがワラワラ沸いて来られては、さすがに不死身のタリオンといえど攻略は困難。ということでオークを支配し、自分の味方を増やして戦うのが、本作での常道となる。相手が数でタコ殴りにしてくるなら、こっちも数を揃えてやり返してやればいいのだ。

なお、支配は基本的にどの役職のオークでもできるがもちろん制限もあって、自分よりもレベルの高いオークは支配できない。だが“恥をかかせる”ことで敵のレベルを下げられるので、その後であれば改めて支配することは可能だ。
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敵を支配し、操るだけのゲームなら過去にもあっただろう。しかし、本作の醍醐味はまさにココから。支配した小隊長以上のオークには、いくつか指示を出せる。例えば護衛や攻撃指示。オーク流に言えば「寝る間も惜しんで俺を守れ」だとか、「あのいけ好かねぇヤロウをブッ潰してこい」かな? オークの小隊長同士が互いをののしり合いながら戦うさまは、見ていて飽きない。俺みたいに、自分の手を汚さずに周囲を動かすのが好きな、裏ボス的立ち位置が好きな人は絶対に楽しめると思う。
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操ったオークを軍団長の護衛として送り込むことだってできる。つまりスパイってやつ。これもなかなか面白くて、いつもは砦に籠っている軍団長をちょいと呼び出してくれたり、急に後ろから斬りつけたりしてくれる。

こんなことを繰り返して敵の軍勢を切り崩したら、いよいよ盛り上がりの絶頂! 攻城戦のスタートだ。支配下のオークたちを従えて突撃の号令を発するシーンは、ヤバいくらいにテンションが上がる瞬間だ。

攻城戦の素晴らしいところは、小隊長を何人か引き連れていけるっていうところ。その中の数人は、攻城戦開始時のデモシーンで気の利いたセリフさえ披露してくれる。コレってサイコーだと思わない?
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ちなみに、各小隊長には“攻城アップグレード”というものを付けられる。特殊な兵を配下に加えたり、シージビースト(投石器を背負ったトロルだ! 超絶クール)を迎えられたりと、本当に多種多様。戦場の見た目も華やかになるので、俺は付けられるときはどんどん付けちゃう。
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最終的に砦の奥にある広間にいる首領を倒せば、そのエリアはキミのものとなる。この後の戦後処理も楽しいひととき。というのも、配下となるオークのなかから、次の首領を選ぶことになるからだ。オークにはいろいろな特性があるから、それぞれのステータスを考えて決めてもいいし、何だったら好みの見た目のやつを選ぶのもいい。あとで入れ替えもできるから、気軽に決めちゃってOKなのだ。
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支配、侵攻、制圧というこの流れ……すこぶる楽しい。まさに将軍となって一部隊を率いている気分だ。まあ配下は全員オークやトロルだけど、まあそんなことは些細な事。むしろ洋ゲーに興味を持ってる人たちなら、普通の女の子よりオークのほうが好きなハズだ。違うかい?

■2:理想の相手はどこかしら? 最強で最高のイケオークを探し出せ!

人間がそれぞれ違うように、オークにも個性があってしかるべき。しかし、ほとんどのゲームは敵側の固有キャラクター以外に個性を付けたりなんてしない。手間はかかるし、ゲームとして大して重要じゃないんだから、そりゃ当然だ。しかし、本作はなんとそれをやってのけてしまった!

登場するオークたちはじつに多種多様で、名前や姿だけでなく、耐性や特性、弱点といったものまで設定されている。もちろん、これはただの酔狂で搭載されている機能ではない。……いや、もしかしたら開発陣のなかに、めちゃくちゃオークを愛する人がいるのかもしれないけど。とにかく、このオークごとの特徴が、ゲームを攻略するうえで重要になってくるのは間違いない。
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例えば“耐性”の項目では、ここに書かれている攻撃手段に耐性を持つことを表し、該当する攻撃では一切ダメージを与えられない。“憎悪”に書かれている行動を目にすると、オークは激昂状態になる。その怒りたるや、空腹時に目の前に肉を置かれた状態で1日待たされたあげく、最終的にその肉を横取りされた狼のごとくで、本当に手が付けられない。可能限り激昂させないほうが戦いやすいってことは覚えておくといい。

そのほかにも、野獣を呼び寄せる特性を持っているやつや、特殊な護衛を引き連れているやつ、何かを見るとビビって逃げ出すやつや、致命的な弱点を持つやつなんてのもいて、攻略の参考になる……何より、見ていて楽しい。もちろん顔の造形もさまざまなので、俺なんかは「コイツなかなかイケメンだな……採用!」なんてことを日々繰り返している。

そう、本作ではオークのリクルートが非常に重要なのだ。もちろん、攻略するうえで有用なんだけど、俺が見据えているのは「コンクエストモード」と呼ばれるオンライン要素。
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オンラインといっても、プレイヤーとプレイヤーがガチ対戦するというわけではない。簡単にいえば、ほかのプレイヤーの砦を攻められるモードって感じ。当然、こちらを迎え撃つのは砦を持つプレイヤーが任命した首領や軍団長たち。

そう、つまり俺がやってるのは、ほかのプレイヤーの襲来を見越して、防衛役として強そうなオークを探しているってわけ。そう考えると、オークを見る目も少し変わってこないかな? まあ俺はビジュアルにもこだわりたい派なので、能力だけでなく見た目も重要視する。

今のお気に入りは彼、ドューシュ“黄金”。黄金といういかにも強そうな二つ名に加え、弱点らしい弱点を持たない。何より装備が二つ名そのものの金ぴかで格好いい! 今はレベルが低いので、じっくり育ててあげたいね。
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ちなみに、コンクエストモードの砦は、いわばデータのコピーのようなもので、プレイしているゲームの状態には影響を与えない。つまり死んだり支配されても、自分のデータから消えるってことはないので安全安心だ。

といっても、シングルプレイ中では死ぬ可能性があるので、むしろ通常のプレイ時こそ扱いに気を付けたほうがいいかもしれない。

■3:背景設定の妄想が捗るオークの言い回しが激アツい!

これは人によってはフックにならないかもしれないけど、俺がこのゲームを愛する理由でもあるから書かせてほしい。オークのデータとしての多様性は項目2で触れたけど、ここで伝えたいのは演出というか、彼らのセリフや振る舞いについてだ。

まず言いたいのが、オークのセリフがめちゃくちゃ多いということ。タリオンやライバルのオークと出会ったとき、見得を切るのがサイコーすぎる。ぜひ多くの人に見てほしい。シチュエーションによってセリフが違うし、オークの二つ名に合わせたセリフもあるしで、尋常じゃないこだわりを感じる。やっぱり開発者のなかに、極度のオークフェチがいるんじゃないかな。

ここでひとつ、“苦痛好き”という二つ名のついた小隊長のセリフを例にあげてみよう。
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──痛みを与えているようだな! 羨ましいぞ。他の連中にやったように痛くしてくれ! いや、もっと痛く! 俺なら耐えられる。欲しいんだ。さあ!
これね。Mっ気全開なのはともかくとして、セリフから“苦痛好き”であることがわかると思う。さらにいえば、体中に傷跡が見て取れるわ、鎧をそのまま肌にブッ刺しているわで、苦痛好きにもほどがあろうという感じだ。

こんな感じですべてのオークが形作られているので、妙にリアルというか、存在に説得力があるのが素晴らしい。そして、この説得力はセリフだけに留まらない。ちょっと俺の体験した面白い展開を聞いてくれ。

まず、オークの特性のひとつに“兄弟”というものがある。これは、ほかの小隊長と深い絆で結ばれていることを意味していて、タリオンが兄弟の片割れを殺していた場合、残されたほうはタリオンに恨みを抱く。

ある日とあるオークから奇襲を受けた。その相手は、なんと支配下に置いていたオーク。能力的にも優秀だったため、特に目をかけていたヤツだった。そいつが、あろうことか主の俺に牙を剥くことになるなんて。

もうお気づきだろうか。じつは俺は、知らず知らずのうちに彼の兄弟を殺めてしまっていた……。

このゲームでは、オークたちはすべてのできごとを記憶している。プレイ中はオートセーブのため、俺が彼の兄弟を殺し、彼が反乱した事実は消せないのだ。
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──覚えてるか? みっともない豚野郎の噂が、全て本当だったとわかるまでお前に仕えていた。お前らは全員、殺されるためだけに存在するんだ。

……このセリフである。正直、彼を失いたくはなかった。しかし彼のセリフから、兄弟を失った悲しみと、主に裏切られた怒りがひしひしと伝わってはこないか? これはもう取り返しがつかないことなんだな……心の中で涙を流しつつ、俺はその手に剣を握ることになった。

別の機会では、支配したオークに兄弟を襲わせるという命令を下してしまったこともあった。もちろんワザとじゃない。気づいたのは彼らが出会ったときのセリフからで、「主の命令だから仕方ねぇ」、「お前を殺して、命令した奴もブッ殺す」みたいなやり取りをしていた。とりあえず肉体言語前提なあたり、オークらしくて非常によいのだが、正直申し訳ないことをしてしまった。
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さらにある時なんか、敵にやられそうなところを配下のオークに救ってもらったこともある。敵にトドメを刺される演出が発生し、「もうダメか……」と思った次の瞬間、支配下のオークが敵を串刺しにしていた。そして俺に言い放つこのセリフ「もっと気を付けてくれ」。……どう? 胸キュン必至でしょ!?

オークのセリフの多さは無駄に多いなんてレベルじゃない。むしろそれぞれの個性が生きていて、ハッキリと“意味のあるもの”だ。俺は彼らのセリフを聞くために、プレイをしていると言ってもいい。

例え「またやられに来たのか? まあ何回も殺せて嬉しいし、俺はいいぜ」とか、「あれ? 剣が変わったな。あっ、そういえば前の剣は俺に折られたんだった!」というように煽られても、それはそれで楽しいのである。
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ただなぁ……剣を折ったヤツは許さねぇかんなッ! 負けたときに剣を折る演出があったけど、まさか本当に装備を壊されてるとは思わなかったよ。まぁ折った本人を倒せば戻ってくるからいいけどさ。

いざ振り返ってみると、見事にオークの話しかしていない。このゲームは「ロード・オブ・ザ・リング」の話なのに、これでは「ロード・オブ・ザ・オーク」ではないか。だって仕方ない。オークの魅力が多すぎるんだもの。

もちろん、本作はアクションゲームとしての質も折り紙つき。ストレスのない移動に、映画のアクションシーンを彷彿とさせる剣戟やステルスプレイ。幽鬼の力を使った特殊能力など、ヒーローものに近い爽快なプレイを楽しめる。
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ゲーム内で手に入る装備も、性能や付加効果がランダムで付く、いわゆるトレハン要素があるため、よりよいアイテムを狙って敵を倒すのもおもしろい。
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それでも、本作ならではの魅力はやはり、オークにあると思う。オークを語らずして本作は語れないのだ。もう本作は、オークと出会えるアドベンチャーゲームと言ってもいいのではないだろうか? さあ、みんなもいっしょに、理想のオークを探してキュンキュンしようじゃないか。

最後に、個人的にオススメの「フォトモード」について軽く触れよう。昨今の洋ゲーで流行りの機能で、ゲーム中に自由にプレイを停止して、角度や光の調整、フィルタの適用などをして撮影できる。今回使った画像も、いくつかはこのフォトモードを使って撮影した。
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映画のワンシーンのような写真をかなりお手軽に撮れるので、ついつい本編そっちのけで写真を撮ってしまう。正直、ファンタジー好きならこの機能だけで買いだと思うほど。俺もみんなの作品を見たいから、ぜひ『シャドウ・オブ・ウォー』を買って、SNSへ写真を投稿してほしい。

テキスト:hororo 洋ゲー的なバタ臭いデザインが好きなゲームライター。特に獣人とか、いいよね。暇なときはミニチュアゲームのミニチュアを塗っていたりする。将来の夢は不老不死。

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