新作『ダービーストーリーズ』は他の競馬ゲームとどこが違うのか? ~ゲームDJ安藤武博の7日間徹底プレイ&レビュー~
2017年10月25日(水)に配信がスタートしたばかりのiOS/Android向け新作競馬ゲーム『ダービーストーリーズ』(以下、ダビスト)を、ガッツリ1週間遊び倒してみました。
TEXT by 安藤武博(ゲームDJ)
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■競馬ゲームは心のオアシス

競馬ゲームは、コンシューマでは『ダービースタリオン』や『ウイニングポスト』などを、スマホでは『ダービーインパクト』を嗜んできました。アーケードは『StarHorse』はやってないけど『DERBY OWNERS CLUB』は結構やりました。一番好きなのは『G1 JOCKEY』シリーズ。29歳の時に拙作『ヘビーメタルサンダー』が6億の赤字を出してドン滑った時に、なくなった俺のMPを徐々に回復してくれたのはこれら競馬ゲーム達でした。

リアルな競馬自体もシステムの塊ですし、前述した作品群はそれを見事にゲームに昇華させているわけですから、いわばシステムの鬼。忘我の境地で繰り返し遊べるものが多いんですよね。本当無心になれるんだよ。
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■競馬好きの俺が週のうち3日ダビストで朝を迎えた

ちなみに小生、大学時代はWINSで緑の制服に身を包み、今年の春競馬は20万円プラスの状態で宝塚記念に挑戦、キタサンブラックにまるっと20万円飲み込まれた最新経歴のある男でもあります。そんな奴が秋天でキタサン買えるかよ! つまり……競馬と競馬ゲームにはちとウルサイですよ。あ、『ダビスト』にもしっかりキタサンブラックは出てきます。強いです。

閑話休題。ゲームは動画配信がひと段落した夜中にガッツリやり始めるわけですけども、7日間のうち、3日間は気づけば朝でしたね。コイツは時間泥棒です。結論から言うとそのくらいしっかりハマまれるゲームでした。多分これからも続ける。理由は後述。

■競走馬育成ゲームに必要なものはひと通りそろっている

まず、他の競馬ゲームに実装されているお作法や演出などは、この『ダビスト』にもきちんと入っています。

3Dでのレースシーンはダイジェストで、最後の直線のところまでスキップできます。それすらスキップしてレース結果まで飛ばすことも可能。とはいえ、グラフィックスの出来栄えがスマホだと最高峰のクオリティなので、飛ばさずについ見てしまいます。
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プレイヤーは自らが経営する牧場で生まれた仔馬に名前をつけることができますが、中野雷太アナによる実況(競馬場に行くと聞こえるラジオNIKKEIのあの声の人)では、この命名した生産馬の名前をちゃんと喋ってくれます。

イントネーションの設定もバッチリ可能。これをしっかり設定しておかないと、まるでロボットのように読み上げられますが、俺はそれが好きな発音マニアだよおっ母さん! B'zは“ビーズ↓”じゃなくて尻上がりに“ビーズ↑”だからよろしくな! そんな事にこだわれるわけです。

配合理論も、これまで俺たちが培ってきたノウハウを惜しみなくブチ込める。血統マニアではないけど、フリックでどんどん種牡馬をあてがって良いコメントをスムーズに確認できるようになっているので、じっくりと良配合を選べる便利仕様です。
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個人的にありがたいのは、『ダビスト』には不受胎がないという部分。狙った獲物は逃さない、百発百中種牡馬野郎たちなんですね。これはもう、那須与一の霊がまたがってた馬と一緒に降りてきたとしか思えませんが、「ああ不受胎だった」、「一年&マネーを棒に振ったわ……」ってのがないのは極めてストレスフリー!

調教もおすすめからマニュアルまで自在。UI(ユーザーインターフェイス)が相当洗練されているので(ここ、作り手から見ても結構すごい)、成長具合や調子などもわかりやすく管理でき、じっくり育成に打ち込めます。厩舎&調教師の先生が強制的に決まっているのも俺好み。『ダビスタ』でも、結局いつも藤枝厩舎一択だったからな。これでいい。
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要は、ちゃんとしています。丁寧に作り込まれている。DonutsはWEB系出身の会社ながら、内部&外部の会社と上手に組んで、ちゃんとネイティブアプリも開発しますよね。

おそらくこのゲームも、過去に競馬ゲームの開発を経験したノウハウのあるチームが関わっているに違いない。ゲームプロデューサー的嗅覚がそう言っている。スマホの他ゲームも徹底研究したんでしょう。安心して遊べる仕上がりです。

基本めんどくさいとところは「おすすめ」でガンガンいける。めんどくさいと思わなければマニュアルでズブズブやり込める。ちょっとした移動の空き時間から家でじっくりなどプレイスタイルも自在になっとります。

■課金のポイントは体重管理を中心に種牡馬&ジョッキー

安心して遊べると書きましたが、マネタイズはどうなってんのよ? そこ大事。こちとら7日で自腹1万円の課金兵となりました。結論から言うと、額面半分以下でも十分楽しめましたね。俺の育成が下手だっただけで、慣れてきた3日目以降は力押しの富豪プレイになっちゃったくらい。

ちなみにうちのスタッフは、無課金で最強を目指して楽しんでいました。『ダビスト』を実況プレイした生放送で、運の要素もあったものの、年度代表馬まで育成できたのはいい思い出。
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もちろん無課金ですよこれ。

■ガチャだけでなく自らの力でG1を獲る喜びがある

なお、マネタイズの花形は種牡馬。ガチャで強烈な父を引くと強い仔が生まれる可能性は高くなり、まとまんない話もまとまりやすくなりますが、現在スタートで最初に無料で回せるガチャと母馬ダイワスカーレット姐さんで十分いける。仔馬のランクは最高SSからS、AA、A、B、Cまでですが、Aでもちゃんと仕上げたらG1勝てます。Aで勝つと結構感動しますよ。
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ゲームを進めるとゲーム内資金5000万から3億、ときには有料販売アイテムのダイヤで馬を売ってくるNPCが登場します。3頭から選ぶんですが、たまにここにSSの馬が入っているという大盤振る舞い。これを発見した瞬間は思わず声出た。

■実在有名ジョッキーはG1まで温存せよ

次はジョッキー。本作は発表会に武豊ジョッキーが登場したくらいです。名実ともに彼がスタージョッキー。他にもルメール、デムーロなど実際のキャリアに応じたスキル設定がされています。

では彼らを乗せないと勝てないのか? そんなことはない。俺はどうしても勝ちたいG1レースのみ騎乗依頼します。しっかり仕上げたご褒美&おまじない感覚と言った印象。武ジョッキーは無料で騎乗チケットがもらえるけど、もったいないから序盤ではあんま使わないようにね。
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だいたい新人女性ジョッキーの富士河ナミちゃんが主戦。みんなもそうだろ。可愛いもんね。同じく新人の濱口俊介も乗せてやってくれよ! 多分野郎ってのとナミちゃんがUIで俊介の上にくるから乗せてないんだろう。勝手にそう思ってから、俺は俊介も乗せるようにしている!

■体重管理重要。超重要。

最後に、餌や温泉などの体重管理要素について。このゲームでおそらく最も重要なのが馬体重で、これをプラスマイナス2kg以内に仕上げてレースに挑まないと……いや、できればジャスト増減0にしないと凡走の可能性が上がる。

激しい調教は能力を上げるが、体重も大きく減るので、このリスク&リターンの管理こそが名馬育成への道と言えるでしょう。一気に体重を8kg戻すリンゴはしっかりダイヤで買おう。
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疲労度は100%まで引っ張ってもOKだと思う。ダイヤで温泉に入れて、貴重な調教期間を節約するスタイルです(放牧すると最大3カ月何もできない&温泉でいつでも呼び戻せる)。
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有料販売アイテムのダイヤですが、『ダビスト』は超絶細かいフラグでミッションが達成されまくり、その度にインセンティブのアイテムがもらえるので、上手く運営すれば無課金でも結構いけるはず。

運営が軌道に乗ってきて、ゲームの楽しさを理解できたらさらに強い馬が欲しくなる……そんなデザインだから、納得ずくで有料課金アイテムを買えるって感じ。最初は「いろんなとこで有料アイテムいるんだな、このゲームは……」と思ってたけど、これは俺の育成が最初下手&雑だっただけですね。 その他、本作はAPというスタミナの概念も入っており、これもダイヤで回復できますが、基本的にスタミナはほとんど気にせず遊べる。スタミナ切れまで遊ぼうと決めてたら朝を迎えていた……そんな感じでした。

■他ゲームとの最大の違い「クラブ」と「オンラインレース」

ここまで読んでくださった競馬ゲーム好きの皆さんは思ったかもしれない。「他の競馬ゲームと同じじゃないか」と。

そうですよ。大半が同じです。でもそれがいいんです。奇をてらった発明はスマホの競馬ゲームにはいらないと思う。しっかり作られているから、もう他作品とは車の乗り味みたいな感じで選べばいいと思う。
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『ダビスト』は堅実なドイツ車っぽいな。安定感ある。俺好みでした。あとはちょうど始まったタイミングで何が目の前にあるかは重要。始まったばかりのゲームって色々いいことあるように設計されているからね。今から競馬ゲームやろかなって人には最新作&安定の内容ってだけで始める価値はある。

でもそれだけじゃなかったんだよな『ダビスト』。おまけ程度かなと思っていた「クラブ」機能。私はこれで『ダビスト』をやめられなくなりました(笑)。
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つまりはギルドみたいなものが入っているんですね。競馬ゲームなのに。「クラブ」に所属すると調教施設がシェアされます。この施設は調教にプラス効果をバフってくれるので、「クラブ」に所属するのは基本的にいいことしかありません。

クラブ全体で賞金ランキングや勝ち鞍、生産馬なども条件に応じて加算されていく「クラブポイント」が溜まっていくので、みんなで資産を増やしていく感じがたまらん。チャットもスタンプ付きでできるよ。

じつは、このクラブポイントでしか買えないすげーリンゴとかもあるんですよ、おっしょさん! 体重管理だけでなく、調子までアップしてくれるすごいやつです。通常、他のゲームだと課金アイテムとして売られていそうなものだけど、『ダビスト』ではみんなで頑張った成果のクラブポイントでしか入手できないんだよ! つまり、みんなで頑張るようにデザインされてるんだよ!
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今やクラブ最大22名を率いる身となったゲームDJ。やり込み度合いを示すオーナーレベルは20とクラブ一番の進捗……。これを守りたい、そしてみんなで伸びていきたい。ベンチャー心をくすぐるじつに良い仕様です。あと、クラブの敷地には農園があって1日に1回ニンジンを収穫できる。これはプレイヤーにとって大きな恩恵!

さらに、餌やプレミヤムチケットが当たるふくびき所もあるからね。ウォーリーが探せない俺はプレイ5日目にこれを発見したので、もうちょっとわかりやすいところにガラガラポンを置いといてほしかったぜ……(本音)。

そして「オンラインレース」。自分で冠レースが開催できる。賞金はゲームシステムから分配されるので登録して走ってみよう。リアルの地方競馬でも数万円で自分の好きな名前を冠したレースが開催できますが『ダビスト』ではこの気分が賞金付きで味わえます。マッチング中も並行してゲームが進められるので、オンライン対戦がプレイの邪魔になることもありません。シシララ記念レース、盛り上がったね。
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■今年の秋競馬は『ダビスト』と過ごす

全く秋競馬真っ盛りのこの季節にタイミングよく競馬ゲームが出たもんだぜ……。華麗に秋の夜長の時間を奪っていきよった。キタサンブラックの宝塚記念で「もう馬券ええかな……」と思ってた(まだ言う)俺のハートに火をつけることにもなった。

競馬が盛り上がる季節。『ダビスト』で無心の境地に至りながら馬券予想に思いを馳せる。そんな年末になりそうです。エリザベス女王杯はクラブのみんなとチャットで予想大会をしようかな。良いゲームに出会えました。


テキスト:安藤武博(Takehiro Ando) 1975年生まれ。ゲームを「つくる」「伝える」「混ぜる」人、ゲームDJ。シシララTV代表。『F-ZERO』のMUTE CITY Ⅰを1分59秒台で駆け抜ける。好きなゲームは80年代のシブサワ・コウ作品たち。F-1と競馬とヘビーメタルに深くハマる。現在は宝塚歌劇を愛する。メディアと新作ゲームプロデュースに全力進軍中。

ツイッターアカウント→安藤武博(ゲームDJ)@takehiro_ando
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