【インタビュー】気鋭のゲーム開発会社「スーパーアプリ」が求める未来とは? 社長の飯沼正樹氏に訊く
名古屋に拠点を置き、『ガドラン★マスター!』や『ドラゴンキャバリア -最後の騎士団-』、そして『ライバルアリーナVS』など、さまざまなソーシャルゲームを精力的に開発している株式会社スーパーアプリ。この秋、晴れて東京への進出を果たすこの気鋭の会社を率いる飯沼正樹氏とは、はたしてどのような人物なのか? 氏と交流浅からぬゲームDJ・安藤武博がインタビュアーとして、スーパーアプリのこれまでの軌跡と、飯沼氏の思い描くこれからの未来像について訊いた。
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■名古屋に拠点を置くゲーム開発会社「スーパーアプリ」とは?
安藤武博(以下、安藤):本日はお時間をいただきましてありがとうございました。飯沼さんとは以前からお仕事をご一緒させていただいてきましたが、今日はあらためて、色々なお話を聞かせてもらえればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
飯沼正樹氏(以下、飯沼):こちらこそよろしくお願いいたします。
安藤:ではまず、そもそも「スーパーアプリ」とはどのような会社なのか……というところから教えてもらいたいのですが。そもそも、拠点を名古屋に置くというのは昨今のゲーム開発会社としては結構めずらしいですよね。
飯沼:たしかに、名古屋にゲームの開発室があるなんてお話はあまり聞きませんね(笑)。拠点をこちらに決めたのは、私が名古屋出身であることも大きいのですが、利便性を考慮してのことでもあります。名古屋はとても「ほどよい」んですよ。人も多すぎず少なすぎず、ほどほどにいて、お店などの施設もほどほどに充実していて、とてもバランスがとれている。加えて、じつは交通の便もよく、自分が自分のペースで仕事をするという点で、じつに理にかなった場所なんですよね。
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安藤:名古屋であれば、ゲーム開発の主流といえる東京や大阪にもアクセスしやすいですもんね。
飯沼:ええ。もともと名古屋という街は、パチンコの開発会社さんが数多く拠点にしている側面もあって、エンターテインメント志向が高いんですよ。エンターテインメントを楽しむこと、そして人を楽しませることが好きな人間が多いんです。
安藤:なるほど。名古屋がエンターテインメントの街、そしてクリエイティブの街であるというのは、私も名古屋生まれとして納得です。食事もユニークですし、遊技機発祥の地でもある。独自のエンターテインメント路線が確立されていますよね。
飯沼:ええ。東京などに比べると、ゲーム開発の知識や経験がある人材こそけっして多くはないのですが、そのぶん、東京や大阪とはひと味異なるクリエイターたちが集まってくるのではないかとも考え、拠点を構えました。
安藤:ゲームの開発会社といえば、最近ではレベルファイブさんやサイバーコネクトツーさん、ガンバリオンさんなど、福岡がアツいと感じていましたが、スーパーアプリさんが旗手となって、いずれは名古屋もそのようなメッカになるのかもしれませんね。
飯沼:もちろん、そうなれればとても嬉しいですけどね(笑)。
安藤:私は何度か名古屋のオフィスにもお邪魔させてもらっていますが、会社が新幹線の駅から直結していて、広いうえに見晴らしもよくて素晴らしいなといつも思うんです。ここまで市内からアクセスがしやすい環境で仕事ができるというのは、東京ではなかなか困難なこと。クリエイターにとって「開発しやすい」環境だろうなという印象を受けました。
飯沼:クリエイターにとってベストな環境を作ることが私の仕事の1つなので、そう言っていただけるのはありがたいです。
安藤:大きな会社ともなると、パーテションで間を仕切られて、見通しがよくなかったりする。部長や社長に至っては、別室やちょっとカベに囲まれた場所で仕事をしていたりとか。でも、スーパーアプリさんのオフィスにはそういったものがなくて、とても風通しがいいですよね。飯沼さんご自身が、普通のデスクでお仕事をされている。
飯沼:スタッフとの間に距離感を作りたくなかったので、オフィス立ち上げの際から仕切りなどは入れない作りで考えていました。
安藤:そういったスタッフ同士の距離感の近さこそが、気鋭のベンチャー企業って感じがして、好感が持てます。壁を取り払って距離感や速度感を共有することは、すごく大事なことだと思いますので。
飯沼:おっしゃる通りかと。そのスタンスは今後も、それこそ東京にオフィスを構えても変えたくはない部分ですね。
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■語られるルーツ……未来に悩む飯沼氏の転機となったもの
安藤:では、そもそも「スーパーアプリ」を立ち上げることになった経緯からお教えいただけますか?
飯沼:ええ。……といってもお恥ずかしながら、最初から明確に「ゲームクリエイターになろう」とか、「開発会社を立ち上げよう」といった構想があったわけではないんですよね。ある程度流れに任せて進むうちに、少しずつ目標が定まってきて、結果的に今に至っているといいますか。
安藤:そうなんですね。
飯沼:じつは私は、大学卒業後の1年間は東京でフリーターとして生活していました。ちょうど就職氷河期の時代でもありましたし、そもそも自分の中で、「なぜ就職しなければならないのか?」という本質的なところで、解が出ていなかったんですよ。
安藤:社会に出て働くということが、なんだか腑に落ちていなかったってことですか?
飯沼:はい。学生時代は陸上部に所属していて、常にほかの人たちと競争し、常に目標がありました。ただ、大学を卒業した後は、すぐにそういったわかりやすい目標を見つけられなかったんです。
安藤:それは興味深いですね。普通の大学生であれば、流れに乗るというか、「就職すること」それ自体が目標になっている人が多いと思います。でも、飯沼さんはその先にある「就職することで自分は何を成したいのか」に焦点を当てていたってことですよね?
飯沼:そうですね。企業説明会などにも参加こそしていたんですけど、どうにも自分の中の違和感が消えなくて。ですから、フリーターとして1年間自分の力でお金を稼ぎながら、その答えというか、目標を見つけようと考えたんです。
安藤:素直というか、自分の中の違和感にウソをつけなかったってことですかね。
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飯沼:当時は時給がいいパチンコ屋でアルバイトをしていたんですが、そこで図らずも、これまでの自分の周りにはいないような人たちと交流することができました。
安藤:具体的にいうと、どんな人たちとの交流でしょう?
飯沼:私は感性は大切にしつつも、基本的に理屈というか、論理的なものを基準に物事を判断する人間なのですが、パチンコをたしなむ方々やパチンコ屋の店員さんって義理人情が篤いというか、人間味があるというか、喜怒哀楽があってとても魅力があるんですよ。そういった人たちと交流するのが、当時の自分にはとても新鮮だったんです。
安藤:なるほど。常に計画的な飯沼さんにとって、自分の価値観とは異なる生き方をしている方たちと接点を持てたということですか。それってとても意味があることだったかもしれませんよ。私も学生時代はずっと競馬場でアルバイトをしていましたが、あの独特の熱気というか、人間の感情がほとばしる姿に触れるというのは、他ではなかなか得難いものですからね。
飯沼:たしかに得難い経験でした。「人間の感情を揺さぶる」という、エンターテイメントの原点に触れたことで、自分の中におぼろげながら目標が見えたような気がしましたからね。とはいえ、そういったエンタメに触れつつ、1年が経過しても「具体的な何か」を見つけることはできなかったんですけど……(苦笑)。
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安藤:なるほど。では、そんな飯沼さんにとって転機となったことはなんだったんでしょう?
飯沼:きっかけはPCですね。じつは、当時の私はPCを自作するのが好きだったんですよ。
安藤:ショップで既製品を購入するのではなく、自作されていたんですか? それは生粋ですね。
飯沼:あの時期はちょうどインターネットが普及をはじめた時代で、とても活気づいていまして。Windows95が発売され、さっそく購入してインストールしようとしたら、PCのスペックが足りなくてダメだったってことがあったんです。ならばPCを自作しよう……って流れからPCが好きになり、そこから「これからはテクノロジーが中心の時代になっていくので、エンジニアになれば、きっと世の中から必要とされる人材になれるだろう」と考えるようになっていきました。
安藤:なるほど。そこに目標や、やりがいを見出したんですね。
飯沼:そうなりますね。そうこうしているうちに、サーバー管理などを行う、いわゆるサーバーエンジニアのお仕事を引き受けることができまして。
安藤:結構、早い時期ですね。まだネットワーク系のゲームが根付いていたわけではないですよね? アウトプットの形も、インプットの形も見えていなかったはず。
飯沼:そうです。なので、ゲームには一切かかわらないお仕事でしたよ。ケータイキャリアのサーバー管理を任されていました。
安藤:サーバー管理ですか。それは当時、何らかの専門知識があったからもらえたお仕事なのでしょうか?
飯沼:いえ、サーバー管理のノウハウなんてちっともありませんでしたよ(苦笑)。PCを組めるってだけの知識しかありませんでした。ただ、私はちょっと凝り性なところもあるので、自宅にPCを10台ほど購入して、サーバー運用の真似事のようなことも試したりはしていました。当時、まだ最先端であったLinuxをPCに入れて運用してみたりとか……。
安藤:先見の明ですね。
飯沼:そうしてエンジニアとして活動をしていくうちに、「Flash(※1)」に出会いまして、そこから世界が文字通り一変することになりました。

(※1:Macromedia社(現Adobe社)が開発した、音やグラフィックのアニメーションを組み合わせてWebコンテンツを作成するソフト。 マウスやキーボードの動きに連動させて様々な動きをつけることも可能なため、ゲームの開発にも用いられた)
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■「Flash」がもたらしたもの……スーパーエレメンツの立ち上げ
飯沼:当時は海外のクリエイターが、この Flashを使ってかなり物語性の強いサイトを作ったりしていたので、私もずいぶん影響を受けたりしました。そうして Flashの知識を深めていくうちに、それがお仕事につながることになったわけです。具体的には、ある大学の受講システムについて、 Flashを用いた先進的な形で作りたいといった提案を受けたんですよ。そういった新しいシステム開発やコンテンツ制作などを手掛けていくうちに、さまざまな形で Flashの仕事が舞い込むようになっていきました。
安藤:すでにその時点で、活動の拠点は東京ではなく、ご自身の出身地である名古屋になっていたのでしょうか?
飯沼:ええ。サーバーエンジニアになってからは、名古屋を拠点に活動していましたね。そして徐々に、Flashでゲームを手掛けるようになっていったんです。
安藤:少しずつ目標が定まってきた感じですね。ちなみに、飯沼さんはゲーム自体、お好きだったんですか?
飯沼:大好きでしたよ。とくに、『ファイナルファンタジーXI(以下、FFXI)』にはどっぷりとハマっていました。
安藤:そうだ。私が飯沼さんと最初にお会いしたとき、『FFXI』のお話で盛り上がったことは今でも覚えています(笑)。
飯沼:そうでした、そうでした(笑)。
安藤:では、Flashでゲームを作れるようになってから、ゲームクリエイターとしての道が拓けた?
飯沼:そうはいっても、Flashによる簡素なゲームばかりでしたので、ゲームクリエイターを名乗るのもおこがましい気はするのですが(苦笑)。フリーランスとして活動を続けていくうちに、今から10年前くらいでしょうか。私の活動を応援してくださる方々や、エイチームの代表取締役社長である林高生さんとの出会いがありまして。それらを機に「スーパーエレメンツ」という会社を立ち上げました。
安藤:飯沼青年に、まさに大きな転機が訪れたわけですね!
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安藤:ちなみに、スーパーエレメンツとは、今の「スーパーアプリ」の前身というか、母体となった企業になるのでしょうか?
飯沼:いえ、今でもスーパーアプリとは別の会社として運営していますので、母体そのものというわけではありませんね。今は私の思いや、精神的なより所といった位置づけとして存在している会社です。
安藤:では、スーパーエレメンツを立ち上げて、具体的にどのような活動をされるようになったのでしょうか?
飯沼:じつは当時、Flashを使ってコンテンツを制作する会社は名古屋にほとんどなかったんですよ。それだけでとてもアドバンテージがありました。いざ会社を立ち上げたら、エイチームさんや東京のゲーム会社さんなどからお仕事をいただけまして、ケータイでも遊べるFlashのゲームを月に数本手掛けることになりました。
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安藤:ガラケー時代のゲーム開発のひとつの典型ですね。しかし、そういった経験からノウハウを溜めて、新しいゲームを作る懸け橋になったところもあるのでは?
飯沼:その側面はあったと思います。当時、絵を描くことができなかったので、そこだけは仕様書を作成して、デザイナーに発注していたのですが、そのほかのシステムはすべて自分で構築していました。当然、すぐに私だけでは手が足りなくなってきましたので、弟に技術を教え、一緒に会社を回していくようになりました。
安藤:弟さんとの二馬力体制でガンガン前進していったわけですね。
飯沼:おかげさまで、開発を引き受けるたびにガラケー向けFlashの技術や知識に詳しくなっていきましたし、とにかくガムシャラにやっていましたね。そうして会社が軌道に乗ってきた頃に、ソーシャルゲームの開発のお話が来たんです。これを手掛けたことで本格的なゲーム開発のノウハウを蓄積できまして、これはもう、自分たちでオリジナルコンテンツを作れるのではないかというお話になり、晴れて「スーパーアプリ」という会社が立ち上がったわけです。
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■「レイドバトル」の概念を初めてスマホゲームに盛り込んだ野心作『ガドラン★マスター!』
安藤:スーパーアプリとして最初に挑んだタイトルは『ガドラン★マスター!』ですよね? 当時はよく遊んでいましたよ。良いゲームが出てきたな、って。
飯沼:ありがとうございます。安藤さんのおっしゃる通り、GMOインターネットさんの「アプリやろうぜ!」というプロジェクトに参加して『ガドラン★マスター!』というタイトルを手掛けました。今、あらためて見直すと、なんて我流で作り上げたタイトルだろうとも思いますが、こちらはおかげさまで多くのユーザーさんからご好評をいただくことができましたね。
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安藤:今、飯沼さんは「我流」とおっしゃいましたけど、その「我流」こそがスーパーアプリタイトルの強みであり、面白い部分だと思いますよ。
飯沼:そうですね。そういう意味では、最新作である『ライバルアリーナVS』も、とても我流な形で作り上げたタイトルだと思っています。とはいえ、もちろん参考にしているタイトルや影響を受けているタイトル、目標にしたタイトルなどはたくさんありますけどね。
安藤:その目標にしていたタイトルって、具体的にはどのあたりですか?
飯沼:いくつかありますけど、スーパーアプリ立ち上げ当時の原点という意味で思いつくところを挙げれば、『マフィアウォーズ』でしょうか。テキストゲームに近くて、とにかくレベルを上げて、資産を増やしていくことが目標というシンプルなゲームなんですけど。
安藤:私も遊んでましたよ、『マフィアウォーズ』! ものすごくなつかしいですね。まさにiPhoneのゲームの黎明期。
飯沼:当時、スマッシュヒットを記録したタイトルですよね。後に一世を風靡した『怪盗ロワイヤル』なども、この『マフィアウォーズ』の系譜を受け継いだ作品だったと思います。ほかにも色々なゲームをプレイしまして、「コレクションを増やす」という目標の設定は、プレイヤーにとって大きなモチベーションになるということを学びました。
安藤:「このキャラやアイテムを手に入れたい! そして自分好みに育成したい!」というモチベーションは、ミニ四駆やビーダマンに通じるものがありますよね。エンターテイメントの根幹として確立されているものだと思います。
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飯沼:おっしゃる通りですね。とはいえ、それだけに固執してもゲームとしては面白くありませんので、プラスアルファの要素は常に模索していました。そこで、先ほどのお話にも出た『FFXI』はなぜ面白かったのか? と考えたんです。どうして自分はあそこまで『FFXI』が好きだったんだろう……と。
安藤:その答えとは?
飯沼:もちろん、魅力はたくさんあったと思うのですが、とくに私が夢中になっていたのは、ネットワーク感というか、「仲間と助け合って共闘しながらプレイしていく」という楽しさであると分析しました。これをなんとかして『ガドラン★マスター!』に盛り込みたくて考えたのが、特定のボスに仲間と協力して立ち向かう、いわゆる「レイドバトル」のシステムです。じつは、ケータイゲームにレイドバトルの要素を盛り込んだのは、この『ガドラン★マスター!』が最初なんですよ。
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安藤:そうだったんですね。「レイドバトル」の導入、まさに革命だったのでは?
飯沼:もちろん、オンラインゲームではずっと前からあったシステムではあるのですが、「ケータイでもここまでできる!」というのを示すことができたという意味では、とても大きな意味があったと思います。
安藤:そういった「本質的に面白いものを積極的に盛り込んでいく」というのは、スーパーアプリのタイトルに一貫している要素であると感じますね。
飯沼:これはサイトにも書かせていただいているんですけど、スーパーアプリの経営理念が「世界一の感動創造企業になる」なんですよ。常に新しいもの、オリジナルにこだわり続けつつ、本質として「遊んでいて楽しいものなのかどうか」という手触りを大切にしているつもりです。
安藤:それこそがスーパーアプリの“イズム”というわけですか。先ほどの「我流」という言葉にも通じる、一貫したコンセプトですね。ずっと遊んでいたくなる、手触りがとてもいいタイトル群を多く発表してこれたこともうなずけます。
飯沼:私は、ソーシャルゲームで最も大切なことはユーザビリティであると感じています。『ガドラン★マスター!』を手掛ける以前から、そういった手触り感は大切にしてきたつもりなのですが、それをはじめて作り込めたと思えたのは、2作目となる『ドラゴンキャバリア』のときでしたね。
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安藤:『ドラゴンキャバリア』には、いわゆる「ガチャ」も盛り込まれて、マネタイズの仕方も大きく変化したタイトルでしたね。
飯沼:ええ。『ドラゴンキャバリア』は、『ガドラン★マスター!』で出来なかったことを掘り下げた、自分の中でとても完成度の高いタイトルでした。ガチャによるキャラクター強化のバランス、物語に沿って流れを覚えていけるよう導入からしっかりと作り込んだチュートリアルのシステムなど、すべてが計算通りに作り込めたタイトルでしたね。
安藤:飯沼さんのクリエイトが爆発したタイトルだったんですね。
飯沼:その反動ってわけではありませんが、そこから2本ほどはうまくいかない時期もあったんですけど……(苦笑)。それはひとえに、すべてを自分が見ようとし過ぎたがゆえの失敗だったと感じています。ですので、最新作である『ライバルアリーナVS』については、スタッフに任せて回すようにシフトしました。それが功を奏した部分はたくさんあると思っています。
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安藤:ここでちょっとおうかがいしたいのですが、常に最先端を走ってこられた飯沼さんから見て、「Unity」はどのように捉えられていますか?
飯沼:お恥ずかしながら、ブラウザで伸びていた我々からすると、Unityを軽視していた部分はありました。それもあって、ネイティブアプリの開発は後塵を拝したとも考えています。Unityは2014年から活用していますが、これによって出来ることは格段に広がりましたね。これまでに我々が「我流」で培ってきた要素に、プラスアルファが加えられるようになったのはとても大きかったです。Unityの導入以降、ゲーム制作の経験者を採用するようになり、ネイティブアプリの開発の手が広がりましたので。とはいえ、名古屋にはゲームクリエイターが少ないので、基本的には自分たちでノウハウを蓄積しているところではあります。
安藤:今後も名古屋に根を張ってゲームを開発していく一方で、新しい人材を増やしていく苦労があるわけですね。より力をつけていくために、東京に支社を作ることを考えられたということでしょうか?
飯沼:おっしゃる通りですね。とはいえ、名古屋と東京のどちらかに注力するというわけではなく、双方がより高め合っていけるような関係にしたいと考えています。
安藤:身内であっても切磋琢磨しあえる関係というのは貴重です。
飯沼:私としても期待しているところです。
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安藤:東京支社においてはどのような人材を求めているのでしょうか?
飯沼:ゲームの開発スタッフはもちろん、プロモーションにも力を入れていきたいと考えています。じつは私、名古屋にはいろいろな製造業こそあるわりに、PRが控えめだと思っているんですよ。
安藤:わかります! 先日名古屋に行った際、「ヴィレッジヴァンガード」の発祥は名古屋であると知って驚いたんですよ。たぶん、知らない人が多いどころかヴィレッジヴァンガードは東京が発祥の地だと思っている人も少なくないと思うんですよね。
飯沼:土壌として、オリジナリティがあるものを作るのは上手な土地柄だと思うのですが、それをうまくPRして伝えていかなければ、これ以上先には進めないと感じ始めているところです。
安藤:そうですね。いいゲーム、面白いゲームが売れる……そんなのは幻想で、いかにしてお客様に知ってもらえるかはとても重要。プロモーションこそがタイトルの是非を決めるという側面はありますね。
飯沼:そこを考えると、やはり東京を主体にする必要があると感じています。もちろん、ゲームそのものが面白くないとまったく意味がないので、開発にも力を入れていきますけどね。遊んでもらわないとよさが伝わらないのは間違いないので、それを広くPRしていけるような人材を求めています。あとは……ビジュアルなどを突き詰めていこうとも考えていますよ。
安藤:プロモーションを踏まえると、ビジュアルの力、インパクトは重要だと思います。なんと言いますか……色気が必要なんですよね。いいビジュアルやロゴ、動きとかって、なかなか文字にできないぶん、挑みがいがあっていい。そこを社長さんがわかっているかどうかで、その会社の今後は大きく変わってくるでしょうし、飯沼さんのそのこだわりはとてもチャレンジングで素晴らしいと思います。
飯沼:ありがとうございます。ゲームというものはすでに社会に根付いている文化だと思っていますし、今や安部総理大臣がオリンピックのために、ゲームのコスプレをするような時代。我々としては胸を張って「感動を創造していける会社」にしていきたいと思っています。
安藤:もはや一寸先は見えませんから、そういった挑戦は必要でしょうね。会社が生き残っていくためにも。
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飯沼:その通りだと思います。そのためには新しい技術を求める人、感覚論で理解できる人、常識に当てはまらない人が必要不可欠なんですよ。ヒマつぶしのツールを作るのではなく、日常にモチベーションを持てるようなゲームを作っていく。そういった気概を持った人と一緒にお仕事をしていきたいです。
安藤:ゲームほどこんなにめまぐるしく変わっていく産業って、ほかには中々ないですよ。そういう意味では、大きい会社などが煮詰まったときとかに、スーパーアプリのような会社が前向きに進んでいくというのは業界にとっても必要なことじゃないでしょうか。ちなみに、ほかにも飯沼さんが求めている人物像って何かありますか?
飯沼:そうですね……。あとは仲間を大切にする精神は重視していますね。ゲーム制作はチーム制で挑むことになるので、自分たちが目指すものをしっかり共有し、実践していく必要がありますので。
安藤:スーパーアプリのリーダークラスのクリエイターたちと話すと、チーム間のテンションの上げ方などを常に気にされているのが印象的なんですよ。お会いするといつも、開発チームのモチベーションを維持する秘訣などを尋ねられたりします。先達として伝えられることは伝えているつもりですが、ひとえにその考え方は「人材を大事にする」スーパーアプリさんらしい。お世辞ではなく、何か新しいものを作り出す会社って、きっとこういうところなんじゃないかなと思えます。
飯沼:今後は作品にテーマ性を盛り込んでいければとも考えています。かつて自分が『ファイナルファンタジーX』をプレイした際、アーロンの「これはお前の物語だ!」というセリフに心が震えました。あの衝撃は今でも忘れがたい。そんなメッセージ性を盛り込んだゲームを作っていくことができれば、「感動創造」につながっていくのではないかと考えています。そうしていつかは、アプリという概念すら超越して、枠組みを取り外した何かを作っていきたい。それが私の野望です。
安藤:本日はどうもありがとうございました。スーパーアプリのこれからに期待しています!
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