安藤:桜庭さんが「人狼ゲーム」のファンであることも大きいですよね。「こうすれば観ている人にわかってもらいやすいのでは?」といった仕組みやプレイングのノウハウが、すでにご自分の頭の中にあったでしょうから。
桜庭:そうですね。実現まで2年かけてルールを考えたこともあり、2回目の公演からシステム自体は大きく変わってはいません。ちょうど2時間くらいの公演レギュレーションで、「お客さまが当てたり当てられなかったりする」ギリギリのラインがどこかを模索して、今のルールに落ち着いたんです。
安藤:3日目の夜に解答用紙を回収するというレギュレーションは、ゲームをつくっているわたしの目から見てもこれ以上ないベストタイミングだと思いました。
桜庭:最初はキャストが12人と偶数だったので、微妙にモヤモヤする展開で終わってしまうこともあったのですが、2回目の公演からは奇数の13人となったことで、そのモヤモヤも解消され、システムとして確立されました。
安藤:まさに発明ですね。今日の劇場は満員御礼となっていましたが、リピーターの数も相当増えているのではないですか?
桜庭:おかげさまで、リピーターの数は本当に多いですね。リピーターの方がお友だちを誘ってまた観劇に来てくれて、そこで面白いと思ってくれた方がまたリピーターとなって、新たなお客さまをお連れになってくれる……そんなとてもありがたい状況になっています。
安藤:毎回犯人が変わるミステリーなので、観ていておもしろいんでしょうね。
桜庭:「人狼ゲーム」ってルールが難しいし、頭を使うゲームなので自分でプレイするのは怖いって人もいると思うんですよ。「はじめて参加したらいきなり人狼になってしまって、何をすればいいのかわからないうちに処刑されてしまった」なんてことも起こり得るわけで、それは確かに怖いと思うんですよね。でも、観ているだけでもおもしろいゲームなのは間違いないので。だったら「観て楽しむ」ところに特化したものがあってもいいのでは、というところがコンセプトとしてあります。
安藤:桜庭さんにとっては、この5周年ですら通過点なのかもしれませんが、今後10年、20年をにらんでいくにあたって、何かやってみたい目標などはありますか?
桜庭:コンテンツをさらに広げていくことですね。この『人狼TLPT』をアニメ化したり、ノベライズしたりといった二次コンテンツ化することで、より多くのお客さまに楽しんでいただけるものになると思うので。
安藤:それはおもしろいですね。実現したら、TRPGの誌上リプレイから「ロードス島戦記」が生まれて以来の快挙になるかもしれません。
桜庭:たしかに! それはちょっと夢を見てしまいますね。
安藤:コラボレーションの幅がものすごく広いのも印象的です。アニメの『PSYCHO-PASS サイコパス』とか『宇宙兄弟』、そして2018年には『ドラゴンクエストX』 とのコラボレーションも予定されていますよね?
桜庭:そうなんです。ありがたいことに、さまざまなコンテンツとコラボレーションさせてもらっています。我々としては、「そのキャラクターが口にしないようなセリフは絶対に言わない」といった制約を課しつつ、そのコンテンツを「人狼ゲーム」に落とし込んでいくのが本当におもしろいんですよね。
安藤:コンテンツの幅が思ってもみなかった方向に広がりますよね。演じるキャストさんたちも、きっと楽しいのではないでしょうか。
桜庭:「人狼TLPT」は本当にキャストが優秀なんですよ。演技指導だけではなく、ゲームプレイのティーチングをしてくださるゲーム指導の児玉健さんもいたりして、ほかの舞台とは一味違った稽古内容になっています。キャスト一同が演技はもちろん、ゲームにもしっかりと精通している、まさに精鋭たちなんですよね。
安藤:ゲームプレイの稽古もあるんですね。そこで培われるノウハウもきっと多いと思います。
桜庭:そうですね。たとえば自分の役割を明らかにする「カミングアウト」についても、「このタイミングまで」としっかり決めていたりします。舞台としてのおもしろさ、そしてゲームとしてのおもしろさを両立させるために、さまざまな試行錯誤を繰り返しているんです。ゲームをプレイするとき、ほとんどのプレイヤーは「自分が楽しむ」ことをメインに遊ぶと思うのですが、うちのキャストはもちろん自分も楽しみつつ、何よりも「見ているお客さまを楽しませる」ことに主眼を置いています。「魅せる人狼」でなければ、舞台でやる意味がありませんからね。
安藤:「お客さまを楽しませる」というコンセプトがしっかりと決まっていて、そこがブレないところが『人狼TLPT』の人気の秘訣なのかもしれませんね。そういったチューニングができるのも、桜庭さんが「人狼ゲーム」を愛しているからこそではないでしょうか。
桜庭:オタクですからね(笑)。でも、「人狼ゲーム」オタクにしかできないことはあると思うので、これからもそこは貫いていきたいと思います。
安藤:最後に、記事を読んでこの『人狼TLPT』に興味を抱き、一度見てみようと思った初心者の方に、何かアドバイスはありますか? やはり、どうしてもハードルの高さを感じてしまう方もおられるとは思うのですが。
桜庭:『人狼TLPT』の公式サイトをご覧いただければ、過去の公演内容がプレイログとして閲覧できますし、ニコニコ生放送のアーカイブ動画などもご覧いただけますので、いきなり劇場にお越しになるのは勇気がいる……という方は、まずはこれらの過去作品を見ていただければと思います。それだけで「人狼ゲーム」の魅力がおわかりいただけると思いますし、そこでより興味を深めていただけたら、次は舞台を鑑賞していただければうれしいです。どうぞよろしくお願いいたします!
■年末年始に『人狼TLPT』の最新公演が決定! 気になる人はぜひ舞台をチェック!!
桜庭さんたちスタッフ陣、キャスト陣、そして観客が一丸となってつくりあげていく『人狼TLPT』ですが、この年末年始に最新公演も決定しています。その名も「人狼 ザ・ライブプレイングシアター #28:VILLAGE XIV 月凍る夜」! こちらは東京・新宿村LIVEで公演され、一部のステージはニコニコ生放送でも中継されることになります。
開催期間:2017年12月28日(木)~2018年1月7日(日)
公演ページ:
http://7th-castle.com/jinrou/perform.php?028
少しでも興味がある方は、ぜひ上記のサイトをチェックして見てはいかがでしょうか? 「人狼ゲーム」ファンはもちろん、ゲームを未プレイの方も、きっと素敵な経験になると思いますのでオススメです! それでは、今回はこの辺で!
テキスト:タダツグ(Tadatsugu) シシララTV編集部、電撃編集部などで活動中のゲームライター/編集。生放送にも出演中。いつまでも少年の心を忘れないピーターパン症候群を自認するケツ合わせ系テキスト書き。好きなゲーム:『ニーア』シリーズ、『ヴァルキリープロファイル』シリーズ、『ペルソナ』シリーズ、『パズル&ドラゴン』など多数。
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