「人狼 ザ・ライブプレイングシアター #28:VILLAGE XIV 月凍る夜」公演中! 代表の桜庭未那さんに『人狼TLPT』5周年の想いを直撃!!
みなさんは、舞台『人狼 ザ・ライブプレイングシアター(以下、人狼TLPT)』をご存知でしょうか? こちらはその名のとおり、人気パーティーゲーム「人狼ゲーム」を用いて催される舞台劇。ステージ上の13名が言葉を尽くし、千変万化の物語をアドリブで紡ぐライブ・エンターテインメントです。
脚本はオープニング以外まったくなく、開演直前に6種類13枚のカードで決まる役割に従って、「人間 対 人狼」の頭脳勝負が即興で繰り広げます。

13名の中に潜んでいる3匹の人狼。人間たちはその正体を解き明かし、処刑することができるのか? それとも、人狼たちが正体を隠し通し、ついに人間を滅ぼしてしまうのか? 繰り返される昼と夜が、手に汗握る人間ドラマを描き出します。
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今年で5周年を迎えたこの『人狼TLPT』。「シシララボドゲ部」実況のちっひーさんが「エドガー」として出演されていることもあって、我々としても非常に気になっていたところ。じつは先日開催された「5th Anniversary #27:VILLAGE XIII 東京公演」にご招待されまして、ゲームDJとわたくしタダツグの2人で観劇してきました!

我々が拝見したのは10月28日の「プリンセスステージ」。こちらは通常とは異なる設定で、男性キャスト13名が女性に扮して上演するという特別なステージ(!)でした。

舞台は客席参加型になっており、開演前に渡される解答用紙にどの人物が何の役を演じているのかを予想することになります。解答用紙は物語の中盤である“3日目の夜”に回収されてしまうので、そこまでの彼らの行動をヒントに、正解を導き出す必要があるわけです。

●「人狼ゲーム」のルールはコチラ
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実際のところ、この「3日目の夜までに答えを出す」という縛りはじつに的確。与えられるヒントは決して多くないので、解答する我々としても、舞台上の演者さんたちと同様に頭をひねる必要が出てきます。

結局のところ、ゲームDJも僕もほとんどの問いに不正解ということで、難易度はかなりのもの。東京公演は退場したメンバーの役職が明かされない「フルクローズ」という特殊ルールだったこともあり、大惨敗を喫しました(苦笑)。

とはいえ、この『人狼TLPT』のおもしろさにすっかり魅せられてしまった我々。いつかまた観劇してリベンジを……そしてどこかでシシララTVでもこの「人狼ゲーム」をプレイしてみたい! そんな野望を燃やしているところです。そのときはぜひちっひーさんにも登場してもらいたいものですね!!
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なお、今回は特別に、この『人狼TLPT』をプロデュースする株式会社オラクルナイツの代表である桜庭未那さんへの直撃インタビューも敢行! なぜ『人狼TLPT』が生まれ、そしてこれほどまでの人気を得るに至ったのか、その秘密をおうかがいしてみました。

■エンタメの原点! 『人狼TLPT』のコンセプトは「観ているお客さまを楽しませる」こと

安藤武博(以下、安藤):今回、『人狼TLPT』にお招きいただきありがとうございました。タダツグさんと2人で解答にも参加しましたが、2人とも全然当てられなくて悔しいです(笑)。

桜庭未那さん(以下、桜庭):(笑)。今回は「フルクローズ」なので難しかったと思いますよ。普段の『人狼TLPT』は、追放されたプレイヤーの役割が公開されるのでそれをヒントに出来るのですが、「フルクローズ」はその名のとおり、一切の情報がクローズされていますので、難易度は一番高いんです。

安藤:鑑賞に来られていたお客さんのうち12人の方が正解されていて、感心してしまいました。あの短い時間でキャストの性格を把握して、その嘘を読み解くというのはすごい洞察力だと思います。

桜庭:たしかに。フルクローズで12人も正解者が出るのはすごいことですね。

安藤:観劇に来られた人のなかには何度も劇場に通っている人もいるでしょうし、もしかするとその経験を生かして推理している方もおられるかもしれませんね。「このキャストは普段、こういったことは言わないハズだから怪しい」といった形で。

桜庭:そういってメタ推理で当てられた方もいるかもしれませんね。

安藤:わたしなんかはまんまとやられてしまいましたけど。正解に至りやすくなるコツがあったりするのでしょうか?

桜庭:舞台がライブ感を重視していることもあって、なかなか一概には言えないのですが。キャストの行動を見て「この人を信用しよう」と決め、その行動を軸にして推理を組み立てていくというのがセオリーですね。

安藤:人狼側と人間側、どちらが有利・不利というのはあるのでしょうか?

桜庭:我々もリサーチしているのですが、公演ごとに多少のばらつきはあるものの、本当に五分五分なんですよね。必勝法というのは存在しないんです。

安藤:これほどの回数を重ねているのに、勝率が五分というのはおもしろいですね。それだけルールがしっかりと練り込まれている証だと思います。『人狼TLPT』は2017年で5周年を迎えましたが、今の率直なお気持ちはいかがですか?

桜庭:最初に始めた頃は「もう1度出来たらいいな。次を実現させたいな」としか思っていませんでした。ここまで長いプロジェクトになるとはまったく考えていなかったんですよね。

安藤:『人狼TLPT』を立ち上げることになったきっかけはなんでしょう?

桜庭:私個人がイチ「人狼ゲーム」好きのオタクだったので、ずっと「舞台役者が「人狼ゲーム」で役割を演じながらプレイすればおもしろいのに!」と思っていたんです。私はオラクルナイツを立ち上げる前に、とあるドラマキャスティングや企画制作を行う会社に勤めていたのですが、その会社で『人狼TLPT』の草案を企画してみたところ、実行のOKをもらえなくて。

安藤:前の会社で企画を出しておられたんですね。

桜庭:当時は「人がプレイしている「人狼ゲーム」を見る」ということが一般化していなくて。上司から「人がゲームをプレイしているのを見て何が楽しいんだ?」と言われ、NGを出されてしまいました。でも、どうしても諦めきれなくて……。

安藤:だったら、自分でやってしまおうと?

桜庭:はい。最初の公演は自腹で開催することにしたんです。

安藤:自腹でですか? ずいぶん思い切った決断をしましたね。

桜庭:正直、あそこで転んでいたらとんでもない借金を抱えることになっていたかもしれません(笑)。でも、おかげさまで多くの方々にご支持をいただき、こうして5周年を迎えるところまでやってこられました。

安藤:「人狼ゲーム」はルールが難しいこともあって、前の会社の上司は「そう簡単に理解してもらえないだろう」と考えたんでしょうね。でも『人狼TLPT』は、「人狼ゲーム」の複雑なところを出来るだけ簡略化して噛み砕き、観客にわかりやすく伝えている。そこがすごいと思いました。

桜庭:「プレイログ」という形でこれまでの結果を表で出したり、毎晩夜の時間になるたびに戦況を説明したりと、できるだけわかりやすくなるようにさまざまな趣向を凝らしてきました。この『人狼TLPT』はライブ・エンターテインメントなので、まさに今この瞬間も生で試行錯誤しながら、お客さまと一緒に成長させていただいているところなんです。
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▲オラクルナイツの代表である桜庭未那さん。
安藤:桜庭さんが「人狼ゲーム」のファンであることも大きいですよね。「こうすれば観ている人にわかってもらいやすいのでは?」といった仕組みやプレイングのノウハウが、すでにご自分の頭の中にあったでしょうから。

桜庭:そうですね。実現まで2年かけてルールを考えたこともあり、2回目の公演からシステム自体は大きく変わってはいません。ちょうど2時間くらいの公演レギュレーションで、「お客さまが当てたり当てられなかったりする」ギリギリのラインがどこかを模索して、今のルールに落ち着いたんです。

安藤:3日目の夜に解答用紙を回収するというレギュレーションは、ゲームをつくっているわたしの目から見てもこれ以上ないベストタイミングだと思いました。

桜庭:最初はキャストが12人と偶数だったので、微妙にモヤモヤする展開で終わってしまうこともあったのですが、2回目の公演からは奇数の13人となったことで、そのモヤモヤも解消され、システムとして確立されました。

安藤:まさに発明ですね。今日の劇場は満員御礼となっていましたが、リピーターの数も相当増えているのではないですか?

桜庭:おかげさまで、リピーターの数は本当に多いですね。リピーターの方がお友だちを誘ってまた観劇に来てくれて、そこで面白いと思ってくれた方がまたリピーターとなって、新たなお客さまをお連れになってくれる……そんなとてもありがたい状況になっています。

安藤:毎回犯人が変わるミステリーなので、観ていておもしろいんでしょうね。

桜庭:「人狼ゲーム」ってルールが難しいし、頭を使うゲームなので自分でプレイするのは怖いって人もいると思うんですよ。「はじめて参加したらいきなり人狼になってしまって、何をすればいいのかわからないうちに処刑されてしまった」なんてことも起こり得るわけで、それは確かに怖いと思うんですよね。でも、観ているだけでもおもしろいゲームなのは間違いないので。だったら「観て楽しむ」ところに特化したものがあってもいいのでは、というところがコンセプトとしてあります。

安藤:桜庭さんにとっては、この5周年ですら通過点なのかもしれませんが、今後10年、20年をにらんでいくにあたって、何かやってみたい目標などはありますか?

桜庭:コンテンツをさらに広げていくことですね。この『人狼TLPT』をアニメ化したり、ノベライズしたりといった二次コンテンツ化することで、より多くのお客さまに楽しんでいただけるものになると思うので。

安藤:それはおもしろいですね。実現したら、TRPGの誌上リプレイから「ロードス島戦記」が生まれて以来の快挙になるかもしれません。

桜庭:たしかに! それはちょっと夢を見てしまいますね。

安藤:コラボレーションの幅がものすごく広いのも印象的です。アニメの『PSYCHO-PASS サイコパス』とか『宇宙兄弟』、そして2018年には『ドラゴンクエストX』 とのコラボレーションも予定されていますよね?

桜庭:そうなんです。ありがたいことに、さまざまなコンテンツとコラボレーションさせてもらっています。我々としては、「そのキャラクターが口にしないようなセリフは絶対に言わない」といった制約を課しつつ、そのコンテンツを「人狼ゲーム」に落とし込んでいくのが本当におもしろいんですよね。

安藤:コンテンツの幅が思ってもみなかった方向に広がりますよね。演じるキャストさんたちも、きっと楽しいのではないでしょうか。

桜庭:「人狼TLPT」は本当にキャストが優秀なんですよ。演技指導だけではなく、ゲームプレイのティーチングをしてくださるゲーム指導の児玉健さんもいたりして、ほかの舞台とは一味違った稽古内容になっています。キャスト一同が演技はもちろん、ゲームにもしっかりと精通している、まさに精鋭たちなんですよね。

安藤:ゲームプレイの稽古もあるんですね。そこで培われるノウハウもきっと多いと思います。

桜庭:そうですね。たとえば自分の役割を明らかにする「カミングアウト」についても、「このタイミングまで」としっかり決めていたりします。舞台としてのおもしろさ、そしてゲームとしてのおもしろさを両立させるために、さまざまな試行錯誤を繰り返しているんです。ゲームをプレイするとき、ほとんどのプレイヤーは「自分が楽しむ」ことをメインに遊ぶと思うのですが、うちのキャストはもちろん自分も楽しみつつ、何よりも「見ているお客さまを楽しませる」ことに主眼を置いています。「魅せる人狼」でなければ、舞台でやる意味がありませんからね。

安藤:「お客さまを楽しませる」というコンセプトがしっかりと決まっていて、そこがブレないところが『人狼TLPT』の人気の秘訣なのかもしれませんね。そういったチューニングができるのも、桜庭さんが「人狼ゲーム」を愛しているからこそではないでしょうか。

桜庭:オタクですからね(笑)。でも、「人狼ゲーム」オタクにしかできないことはあると思うので、これからもそこは貫いていきたいと思います。

安藤:最後に、記事を読んでこの『人狼TLPT』に興味を抱き、一度見てみようと思った初心者の方に、何かアドバイスはありますか? やはり、どうしてもハードルの高さを感じてしまう方もおられるとは思うのですが。

桜庭:『人狼TLPT』の公式サイトをご覧いただければ、過去の公演内容がプレイログとして閲覧できますし、ニコニコ生放送のアーカイブ動画などもご覧いただけますので、いきなり劇場にお越しになるのは勇気がいる……という方は、まずはこれらの過去作品を見ていただければと思います。それだけで「人狼ゲーム」の魅力がおわかりいただけると思いますし、そこでより興味を深めていただけたら、次は舞台を鑑賞していただければうれしいです。どうぞよろしくお願いいたします!

■年末年始に『人狼TLPT』の最新公演が決定! 気になる人はぜひ舞台をチェック!!

桜庭さんたちスタッフ陣、キャスト陣、そして観客が一丸となってつくりあげていく『人狼TLPT』ですが、この年末年始に最新公演も決定しています。その名も「人狼 ザ・ライブプレイングシアター #28:VILLAGE XIV 月凍る夜」! こちらは東京・新宿村LIVEで公演され、一部のステージはニコニコ生放送でも中継されることになります。

開催期間:2017年12月28日(木)~2018年1月7日(日)
公演ページ:http://7th-castle.com/jinrou/perform.php?028

少しでも興味がある方は、ぜひ上記のサイトをチェックして見てはいかがでしょうか? 「人狼ゲーム」ファンはもちろん、ゲームを未プレイの方も、きっと素敵な経験になると思いますのでオススメです! それでは、今回はこの辺で!
テキスト:タダツグ(Tadatsugu) シシララTV編集部、電撃編集部などで活動中のゲームライター/編集。生放送にも出演中。いつまでも少年の心を忘れないピーターパン症候群を自認するケツ合わせ系テキスト書き。好きなゲーム:『ニーア』シリーズ、『ヴァルキリープロファイル』シリーズ、『ペルソナ』シリーズ、『パズル&ドラゴン』など多数。

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