「フリージング」は「エリア88」の影響を受けている!? ──『フリージング エクステンション』クリエイター対談(後編)
クリーク・アンド・リバー社が2018年夏に配信予定のiOS/Android用アプリ『フリージング エクステンション』。その魅力をゲームDJ安藤武博が聞き出すインタビューをお届け。 後編ではゲーム『フリージング エクステンション』だけの話に留まらず、原作「フリージング」の制作秘話やクリエイター陣が影響を受けた日本の作品についてもトークが広がっていく。
05
▲写真左から金光鉉氏、林達永氏、安藤武博、金度亨氏。
前編はコチラ→原作者との共同開発で「フリージング」の世界を再構築する

■『フリージング エクステンション』に込めたこだわりと想い

安藤武博(以下、安藤):みなさんが今回『フリージング エクステンション』開発するにあたって、最もこだわった部分はどこでしょうか?

林達永氏(以下、敬称略):「フリージング」は10年以上続いているマンガなので、設定的に「ここは改善したほうがいいだろう」という部分もありました。今回の『フリージング エクステンション』では、そういった部分をカスタマイズしています。現在のバトルとお色気が主流の「フリージング」も楽しく作っていますが、もともと、この作品で描きたかったテーマは“生命と犠牲”でした。

生命は誰かから受け継ぎ、そしてまた誰かに受け継いでいくものなのであるということ、人は誰かのために犠牲になることができるのだということを、この作品でお伝えしたかったんです。そのすべてをマンガで表現することは難しかったのですが、今回のゲームでは伝えられなかった部分を含めて、しっかりと盛り込んでいるつもりです。

金度亨氏(以下、敬称略):開発サイドである僕としても、原作サイドのお2人がやりたいことはできるだけ取り入れたいと思いました。マンガとゲームでは表現方法が違うため、それぞれがやりたいことにはどうしても差があります。原作の意見を尊重して作ったことで、ゲームとして得たものと失ったものの両方があると思いますが、わたしは得たもののほうが多かったと信じています。
06
安藤:ゲームには「テクスチャーブレイク」という特徴的なシステムが搭載されていますが、採用された経緯についてお聞かせください。

林達永:もともと自分がお色気作品が好きだったんです(笑)。でも、そういう作品を実際に見てみると、中身もしっかりおもしろいことが多い。ならば、自分たちもそういった作品を作らなければ……と考えて生み出したシステムです。ただのお色気要素ではなく、戦略として活用していくことでゲーム性が深まるようなシステムになっていると思います。

金度亨:「フリージング」は大切な人のために自分のことを犠牲にするストーリーなので、そういった部分を表現するために「テクスチャーブレイク」を搭載しました。キャラクターのセクシーな部分やかわいい部分をユーザーさんに見せるシステムではありますが、あざとくなりすぎないよう注意しています。本質を見失わない、ギリギリのラインを見極めて作っているつもりです。単なるビジュアルではなく、しっかり「テクスチャーブレイク」をゲームシステムに絡ませられるよう、試行錯誤の嵐でしたね。
D
安藤:みなさんはもともと日本のゲームやアニメは好きだったのでしょうか? 影響を受けた作品などはありますか?

林達永:自分はインプットがなければアウトプットが出来ないと思っています。そのため、今は仕事だと思って1日にいくつものマンガやアニメ、ゲームに触れています。わたしが子どものころは、韓国で日本のアニメに触れることはできなかったのですが、それでも「機動戦士ガンダム」などには多大な影響を受けています。

安藤:日本のクリエイターにも、「ガンダム」の影響を受けている方はたくさんおられますよ。

林達永:自分の作家人生で、最も影響を受けているクリエイターは松本零士さんです。あとは、高田裕三さんの「3×3EYES」を読んだときの衝撃が今でも忘れられません。
金光鉉氏(以下、敬称略):わたしは「超電磁ロボ コン・バトラーV」や「マジンガーZ」などのロボットアニメが好きでした。そのため、作画にもスーパーロボット作品の影響が少なからず出ていると思います(笑)。また、「サイレントメビウス」などを手掛けた麻宮騎亜先生にも影響を受けていますね。

林達永:「フリージング」への影響という意味では、「エリア88」の存在も大きいです。仲間のために戦って散っていく様子や現実のつらさを描いた部分には、大きな影響を受けています。

金度亨:危機的な状況にあって、それでも一生懸命に生きている人間たちが描かれているところは「フリージング」も「エリア88」も同じですね。「フリージング」に関して、あの状況で恋愛などをしている場合ではないと思う人もいるかもしれませんが、彼女たちは仲間たちのためにいつ死んでもいいように、今できることを一生懸命やろうと考えているんですよ。

安藤:恋愛感情は、そのひたむきな生き方のなかで自然と生まれるものということですね。
E
金度亨:ちなみに、原作サイドのお2人は好きなものの趣向が似ているのですが、じつは中身は正反対なんです。金は男らしいものが好きですが、林は少女マンガのような繊細な展開に惹かれることが多い。日本の作品でいえば「キャンディ・キャンディ」や「小公女セーラ」に代表されるものですね。「フリージング」が“女性同士の内ゲバの展開が多い”と言われているのは、その影響が大きいと思います。

安藤:それは興味深い貴重な話ですね。確かに、少女マンガは少年マンガに比べて、人間関係のエグい展開が描かれることも少なくありませんから。アニメやマンガに関してお聞きしましたが、ゲームに関してはいかがでしょうか?

林達永:わたしはストーリーを書くお仕事をしているので、物語性の強いRPGが好きなのですが、原体験となるとアーケードでプレイした『マリオブラザーズ』になるでしょうか。あまりにもやりすぎてしまい、お店から追い出されたことがあるくらいです(笑)。あとはファミリーコンピュータでプレイした『ドラゴンクエスト』ですね。

安藤:『ドラゴンクエスト』はRPGの王道ですね。こちらは日本版でプレイされたのでしょうか?

林達永:はい、そうですね。

金度亨:『ドラゴンクエスト』は言葉がわからなくても「こういうことがやりたいんだな」と伝わってくるところが、とても素晴らしい作品だと思います。
07
林達永:『ファイナルファンタジー』シリーズも大好きなんですが、より心を動かされたのは『ドラゴンクエスト』でしたね。

安藤:金さんはいかがですか?

金光鉉:自分は格闘ゲームが好きです。とくに『ザ・キング・オブ・ファイターズ』シリーズがお気に入りですね。あとは、やっぱりロボットが好きなので『スーパーロボット大戦』シリーズも外せません。

安藤:スーパーロボットのなかでは、どの作品がお好きなのでしょうか?

金光鉉:どれも好きなのですが、やはり「超獣機神ダンクーガ」でしょうか。

安藤:「ダンクーガ」はアツいですね。でも、日本ではややマニアックな作品になるのですが……韓国で人気だったんでしょうか?

金度亨:どうですかね……。金と林が特別日本の作品に詳しいというだけで、韓国で「ダンクーガ」がものすごく人気があったというわけではないと思います(苦笑)。

林達永:韓国でいちばん人気だったロボットアニメは、やはり「テコンV」ですね。

金度亨:「テコンV」は日本のアニメから大きな影響を受けていたため、いろいろと言われていた作品なのですが、子どものころの自分たちにはそういったこともよくわかっていなかったので、純粋にかっこいいと思いながら見ていました。
09
安藤:ここからはゲームの話に戻ろうと思うのですが、この夏にリリースされたあとは、季節イベントといった期間限定イベントなどの予定もあるのでしょうか?

金度亨:はい。そういった限定イベントがファンのみなさんにとってうれしいものであることは理解していますので、もちろん実装していきたいですね。みなさんからの応援しだいで、コンテンツはどんどん充実させていけると思います。

安藤:他社コンテンツとのコラボ企画などはいかがですか? 個人的な希望などもあればお聞かせください。

金度亨:ほかのコンテンツとのコラボにも興味はありますが、そちらもみなさんの応援しだいになりそうです。ただ、大事なIPをお預かりすることになるので、実現させるとなると慎重に考えたいですね。

林達永:自分は『Wake Up, Girls!』が大好きで、ホテルではいつも『Wake Up, Girls!』のTシャツをパジャマ代わりに寝ています。

安藤:アイドルもののコンテンツがお好きということですか?

林達永:そうですね。『ラブライブ!』や『アイドルマスター』といった作品も好きなんです。でも、いちばん好きなのは『Wake Up, Girls!』なので、この『フリージング エクステンション』となんらかの形でコラボできればうれしいです。

金光鉉:自分はスーパーロボットが好きなのですが、さすがにコラボは現実的ではなさそうです(苦笑)。そのほかの作品となると「インフィニット・ストラトス」が好きなので、こちらとコラボできたらうれしいですね。

金度亨:みなさん、完全に個人的な趣味でお話しされていますね(笑)。そういう意味でいえば、わたしは初音ミクとコラボしてみたいかな。彼女が「フリージング」の世界観のなかで、シリアスな顔をして戦っている姿を見てみたいなと思います。

安藤:いずれも実現したらおもしろそうですね。では、最後に「フリージング」のファンの方、そしてゲームではじめて「フリージング」の世界に触れる方に向けて、それぞれメッセージをお願いします。
H
林達永:まずはファンの方たちについてですが、こんなにも長い間「フリージング」を応援してくれて本当にうれしく思っています。1巻で終わるつもりだった「フリージング」がここまでこられたのも、そして今回ゲーム化できたのも、すべてファンのみなさんのおかげです。『フリージング エクステンション』は、みなさんへのプレゼントとして生まれ変わった新しい作品として作ったものです。ぜひ楽しんでいただければと思います。

これから世界に触れる方へは、今の若い方たちにも「フリージング」が楽しめるようにしっかり再解釈してゲームを作っているので、これをきっかけに好きになってもらえればうれしいです。

金光鉉:ゲーム版はわたしたちの作った「フリージング」の世界や魅力がみなさんに伝わりやすいものになっていると思います。また「フリージング」を知らなくても、ひとつのゲームとして楽しめる作品になっています。これまで「フリージング」を愛してくれた方にも、新鮮に楽しめるような作品になるように作ったので、ぜひ遊んでみてください。また、ゲームがおもしろかったら原作も読んでみてもらえれば!

金度亨:「フリージング」のファンのみなさんのご期待を裏切らないよう、原作サイドのお2人のお力もお借りして作品を作りあげました。ゲームにはいろいろなシステムが搭載されていますが、序盤はシンプルで直感的に操作できるようにしています。ゲームアプリとしても自信を持ってお届けできる作品になっていますので、原作を知らない方にも遊んでいただいて、ぜひ「フリージング」の世界に飛び込んできてもらえればと思います。

安藤:このゲームをきっかけに、「フリージング」がさらなる飛躍を見せてくれることを期待しています。本日はありがとうございました!
08


テキスト:カワチ(Makoto Kawachi) 1981年生まれ。ライター。ビジュアルノベルに目がないと公言するが、本当は肌色が多ければなんでもいい系のビンビン♂ライター。女性声優とセクシー女優が大好き。
ツイッターアカウント→カワチ@kawapi
シシララTV オリジナル記事