シシララTVでおなじみの声優・西口有香さんと桐島ゆかさんが出演する舞台『陰謀の摩天楼にて』が8月10日から12日まで、東京・調布市のせんがわ劇場にて上演されています。
カスタムプロジェクトによる観客参加型推理劇シリーズの最新作である本作は「出題パート」、「推理パート」、「解決パート」の3部構成。出題パートで得たヒントをもとに事件の真犯人を推理する、観客参加型推理×演劇という、2軸の面白さが詰め込まれています。
<舞台の流れ>
1:出題パート 役者が事件のあらましを演じる
2:推理パート 捜査資料をもとに観客自身が推理し、解答用紙に記入・提出する
3:解決パート 事件の全貌を役者が演じ、解決する
この舞台シリーズの常連である西口有香さんはもちろん、今回は桐島ゆかさんも初舞台を踏むということで、お2人と縁が深いシシララTVとしても見逃せない舞台! そんな『陰謀の摩天楼にて』のゲネプロレポートをお届けします。
観客参加型ミステリーの第4弾となる『陰謀の摩天楼にて』。雪に閉ざされた山荘を舞台にした『吹雪の山荘にて』、古くからのしきたりが残る閉ざされた村が題材の『因習の村にて』、学園を舞台にしたデスゲームもの『疑惑の教室にて』に続き、今回は立てこもりの強盗犯チームと警察チームの息詰まる交渉劇が楽しめます。
【ストーリー】
とある高層ビル内のオフィスに強盗犯3人が人質を取り立てこもった。
犯人逮捕と人質奪還のため、必死に交渉しようと試みる警官たち。
しかし、犯人が指名したのはアメリカから交渉術の講師として来日していた「リサ・一木戸」だった。
「ご指名ありがとう。どこかで会ったことある?」
やがて……人質の一人が殺害されるが強盗犯は自分たちの犯行ではないと供述し始める……。
正直、筆者は1年前に本公演の予告を見たとき、古き良きミステリー小説風の『吹雪の山荘にて』や『因習の村にて』、アニメやゲームのデスゲームものを彷彿とさせる『疑惑の教室にて』に比べて、やや設定が弱いように感じました。ただ、そこはさすがのカスタムプロジェクト。鑑賞を終えたあとの感想は……「やっぱりおもしろい!」。
今までの公演と同じく、序盤からこまかい伏線が丁寧に張られており、後半にはその伏線を回収するどんでん返しの連続。「なるほど、そういうことだったのか!!」と気持ちよく騙してくれました。
ちなみに、前々作の『因習の村にて』の完全正答率は3.2パーセント、前作『疑惑の教室にて』の完全正答率は5.6パーセントとかなりの歯ごたえでしたが、今回はどうなるものやら。自分は残念ながら正解にはたどり着けませんでしたが、これまでの作品に比べれば難易度はやや抑えられているようにも感じられました。これから観劇される方は、ぜひ完全正答を目指してがんばってみてもらいたいですね。
今回は立てこもりの強盗犯たちが潜伏しているビルと、人質の奪還を目指す警察官たちの対策本部の2カ所が舞台となっているため、目まぐるしく場面が転換していくのが特徴。
これまでの舞台はコメディシーンをはさみつつも凄惨なシーンが多かった印象ですが、今回はギャグ成分がかなり多めで、笑いながら見られるのもポイントです。
なんの前触れもなく、いきなり踊り(ダンスというか……踊り)が始まったときには、心がざわっとしました(笑)。
毎回ギャグキャラを演じている浦島雅海さんはもちろん、前回では天才高校生探偵を演じた迫 瑞樹さんなども今回はコミカルな役回りになっているので、今までの公演を見ていた人は新鮮な気持ちで鑑賞できるのではないかと。
ちなみに、桐島さんが演じるのは仙川署特殊班無線係の八尾。本作のキャラクターは一木戸(いちきど)や仁科(にしな)、三橋(みつはし)など全員に数字がついていますが、『夢現Re:Master』というゲームで八尾というキャラクターを演じていた桐島さんに同じ名前を付けるところに、スタッフの遊び心を感じました。
クールな性格の女性で、シシララTVで見せてくれている素の桐島さんとは異なる雰囲気のキャラクター。ぜひ、そのギャップを舞台で見てみてほしいです。
我らが(?)西口さんは立てこもり事件の人質役として登場。推理小説が趣味で、コミュニケーション能力に難があって、独身というキャラクターです。今回はメガネをかけた姿で登場するのでファンは必見!
ほかにもネゴシエーションの研修講師をしている一木戸やクラッカーとして有名な犯罪者・ナイン、オタサーの姫であるOLの七菜など魅力的なキャラクターたちばかりとなっており、それぞれメインとは異なるこまかいところでもおもしろい演技をしているので、隅々まで要注目ですよ。
あまり内容を書きすぎるとネタバレになってしまうので、ゲネプロレポートはここまで。最後に作・演出を手がける東 幸希さんよりコメントをいただいたので、こちらもチェックしてみてください!
東幸希さんコメント:『陰謀の摩天楼にて』は、ミステリーにはよくある「交渉劇」を描いてみたくて生まれた作品です。前作や前々作も同様ですが、世間に対して何かを訴えかけたいといった強いテーマがあるわけではなく、ただ純粋に、見に来てくれたみなさんにミステリーを楽しんでもらおうというのがコンセプト。
せっかく劇場まで足を運んでいただくので、調査資料などを照らし合わせて1人で推理できるようになっていますし、周囲の人の言葉に耳を傾ければ、そこからヒントを得て答えが閃くこともあるでしょう。それがこの舞台ならではの面白さだと思っています。
じつは、前回は謎解きの難易度がちょっと高すぎたと個人的に思っておりまして。本作ではお客さまにもう少し「謎を解明した快感」を味わってもらいたく、難易度調整をしたつもりです。なかなかそこらへんのデバッグは簡単ではないので、実際のところはお客さま自身にご判断いただきたいなと思います。8月12日まで公演しておりますので、興味がある方はぜひ謎解きに挑戦しに来てくださいね!
テキスト:カワチ(Makoto Kawachi) ビジュアルノベル好きのフリーライター。さまざまなメディアに記事を寄稿しており、マニアックな知識や小ネタなどで読者を唸らせている。深みのあるゲームが好きかと思えば、「エロければなんでもいい」と豪語する猛者。
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