【センチメンタルグラフティ】ツンデレお嬢様の秘めた情熱から日々を戦う意味を知る【ギャルゲーBAR☆カワチ_第1回】
都会の喧騒から少し離れたところにひっそりと佇む"ギャルゲーBAR☆カワチ"。ここは、日々繰り広げられるコンクリートジャングルでの生存戦争に負けそうになっているメンズたちのピュアハートを、ゲーム好きのマスターが「ギャルゲートーク」で癒してくれるという、シシララTVオススメのゲームBARなのだ……。
そんな体裁で始まったこのギャルゲーコラム。さて、気になる第1回目のお客様の悩みと、その痛みを癒してくれるゲームとは……?
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■誰もが夢中でセンチメンタルになった! 僕らが愛した『センチ』というゲーム
──(カランカラン)マスター、こんばんは……。
マスターカワチ:おう、いらっしゃい。久しぶりだな。
──あ、ビールください……はぁ。はぁぁぁぁぁ(ため息)。
カワチ:い、いきなりどうした!? 座った瞬間から“せつなさ炸裂”みたいなその顔、気遣ってくれオーラがビンビン過ぎるんだが……って、そういえば今日は1人かい? いつも一緒に来ている奥さんの姿が見えないね。
──いや、アイツとはちょっと倦怠期っていうか……。何しろ最近、仕事がうまくいってなくて。どう頑張っても万年2位っていうか。2人しかいない営業部で2位っていうか。
カワチ:(すなわちビリってことか)……っておいおい、また随分と具体的で生々しい悩みだなぁ。
──おかげで仕事がつまらなくて……もう働いたら負けだと思い始めてます。それで最近、アイツともケンカが絶えないし。
カワチ:なるほどねぇ。なら俺が、そんな今のお前さんにピッタリのゲームを紹介してやろう。とりあえず、こいつをプレイしてみるといい。
──なんですか、その暑苦しい笑顔。……『センチメンタルグラフティ』? いいですよ、こんなの。それより早くビールをくださいよ、ビールを!
カワチ:いいから黙ってプレイしてみろ。じゃないと話が進まないりゅん!!
──りゅ、りゅん!?
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カワチ:えみりゅんの言葉尻を知らないとか……やれやれ、本当にこの名作を知らないんだな。まぁ仕方ない。どれ、ゲームをスタートしたか? まずはこの遠藤晶という女の子を見てみろ。俺の嫁だ。フフフ、カワイイだろう。
──嫁? えっと……白いヘアバンドをしていますね。
カワチ:ああ、ちなみに夏は黄色、制服のときはピンク色だ。続編にあたる『2』では赤だったし、アニメ版『センチメンタルジャーニー』では青かった。結構バラバラだな。すなわちこれが女心ってヤツだ、うつろいやすいんだよ。お前さんにはわからないかもしれないがな。
──いや、それってただ単にオシャレさんなだけなのでは……。
カワチ:遠藤晶。10月31日生まれ。長崎県長崎市出身、県立誠林女子高校在学。好きなものは「センスの良いアクセサリー」で、嫌いなものは曖昧な言葉とハッキリしない態度。趣味はテニスとショッピングだ。
この作品には女の子ごとに、声をあてている声優が歌うテーマソングが存在してな。晶のテーマソングは『1』が「振り向けば I love you」で『2』が「September Rain」という。俺はとくにこの「September Rain」が大好きでね。今でも9月の雨の日はアルバム『センチメンタルグラフティ2 スーパーベスト』を引っ張り出して、必ずこの曲を聴いているくらいさ。
──それは随分センチメンタルなご趣味なようで、ちょっとキモ……すごいッス。
カワチ:そうだろうそうだろう。で、どうだ? この晶のビジュアルは? 金髪のロングウェーブに端正な顔立ち、そしてバツグンのプロポーション。俺は正直『センチメンタルグラフティ』で1番美しいのは彼女だと思っているんだ。嫁自慢みたいですまんな(照)。
──嫁自慢? それはともかくこのゲーム、たくさんの美女が登場するみたいですけど、つまりマスターはこの晶ちゃんが好きってことですね。
カワチ:いや……。正直に言うと、京美人である若菜も捨てがたい。もっと言えば、優やほのかの持つポテンシャルも素晴らしい……素晴らしいんだが! うん、やっぱり晶がフェイバリットだな!
──「うん」って溜めるあたりがなんともマジっぽくてこう……。
カワチ:ちなみに晶は女子力が高いから、美容にも相当気をつかっているはずなんだ。お金持ちだからブランド物のスキンケアをたくさん持っているに違いないし、何しろファッションセンスがいい。ほかのヒロインたちは年相応の格好をしているんだが、お嬢様である晶は大人っぽい服装をしていることが多くてたまらんぞ。それこそ、スーツ姿とかな。
──いや、僕は会社でスーツ姿の女性は見飽きていますけど……。
カワチ:おいおい、それは本気で言ってるのか? 「高校生がスーツを着ている」という、その背伸び感がいいって話をしているんだぜ!? ゲームの発売当時、高校生だった俺は、晶が醸し出すこの「オトナなオンナ」な雰囲気にメロメロだったもんだ。晶ではなく晶様と呼んでいたくらいさ……他のお客さんには内緒だぞ。
──えぇ、そりゃあもう。こんなことを話して理解してもらえる友だちとか、僕にはいませんし……。
カワチ:そんな彼女は天才バイオリニストでもあるのだが、コンクールで1位が取れずに荒れてしまう時期もあるんだ。そう、今のお前のようにな……。
──こ、こんな美少女にも僕のような悩みが? ちょっと晶ちゃんのことが気になってきました……。
カワチ:うん。ならばまずは『センチメンタルグラフティ』というゲームそのものについて教えてやろう。このゲームは、1998年にNECインターチャネルから発売されたギャルゲーだ。最初はセガサターンでリリースされ、のちにプレイステーションにも移植されている。
──もう18年も前のゲームってことですね。
カワチ:フッフフ……当時の人気はすごかったんだぜ。シナリオは大倉らいた氏。氏はノベルス版『約束』『再会』も執筆している。これもまた素晴らしい作品だった。センチメンタルな物語を書かせたら右に出るものはいなかったこの大倉氏だが、現在ははたしてどんな活動をしておられることやら。
──え? なんですか、消息不明ってことですか!?
カワチ:ああ。もしかしたら俺の知らないところで名義を変えたりして、作品を発表しているかもしれんがね。またいつかどこかで、氏のシナリオを読んでみたいものだよ……。
そしてキャラクターデザインは甲斐智久氏。彼は「水谷とおる」という名義で『同窓会』という作品のキャラクターデザインも手がけていたんだが、当時はそれを公にしてはいなかった。現在はオープンな情報になっているけどな。まぁ、『同窓会』についてはまた別の機会に教えてあげよう。これも名作だからな。
──なんて言うか、甲斐さんの描いたイラストとゲーム中のグラフィックには、だいぶ違いがありますね……。
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カワチ:そこに気づくとは。むしろ、普通はちょっと言いにくいことをズバッと言ってのけるとは、おぬし中々やるな。……まぁ、確かにキャラデザインのグラフィックとゲーム内のグラフィックには隔たりがある。しかし、ファンは脳内補完をしながらがんばっていたんだぜ。
──脳内補完? ハードル高っ!
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カワチ:容易なことさ。『センチメンタルグラフティ』は、発売前からすでにひとつの「現象」になっていたくらいの人気だったからな。とはいえ、ブームになったといっても、今でいう『ポケモンGO』のような幅広い世代に受けたわけでもなければ、『魔法少女まどか☆マギカ』のように普段ゲームやアニメに興味を持たない一般人を巻き込んだってわけではない……。ゲーマーの裾野を広げたわけではないんだ。
──じゃあ、どんな「現象」を巻き起こしたっていうんです?
カワチ:コアなファンをより深いところへ導いたのさ。雑誌連載、ラジオ放送、イベントコンサート……様々なメディアミックス展開で、当時のゲームファンの心をわしづかみにしたんだよ。つまりは、生粋のオタクをよりディープな世界へと引きずり込んだんだ。そりゃあもう、どっぷりとな。深淵だよ、深淵。
──な、なんて罪作りな……。
カワチ:もちろん、『センチメンタルグラフティ』がきっかけでオタクに目覚めたっていう人も、それはそれで多いと思う。発売前からキャラクターそれぞれに固定ファンがついていたくらいだからな。当時は人気投票やキャラクターの派閥争いも激しかった。今でいう「○○は俺の嫁!」の先駆けだよ。「推し被り」や「推し変」もあったぞ、発売前だというのにな(笑)。
当時の人気投票では若菜や真奈美、ほのか、明日香、そして晶あたりが上位だったことを記憶している。今となってはなつかしい話だ……(遠い目)。
──せ、青春ですね……。
カワチ:そんなわけで、本編よりも前に発売されたプレディスク『ファーストウインドウ』は、即完売で何万円もするプレミア価格になるほど、とにかく大盛り上がりだったのさ。
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カワチ:ただ、肝心の本編の内容がな……。
──本編の内容……ダメだったんですか?
カワチ:フフ、少なくともぶっ飛んでいたよ。主人公の設定なんて、親の仕事の都合で12回以上の転校を繰り返した高校生だったりするんだぞ。
──えぇ!? そんな今どきのライトノベルでも見かけないようなムチャクチャな設定、許されたんですか?
カワチ:許されたのさ……少なくとも、俺は許したよ。小学1年から小学4年前半を青森、小学4年後半を仙台、小学5年前半を札幌、小学5年後半を大阪、小学6年前半を京都、小学6年後半を名古屋、中学1年前半を広島、中学1年後半を長崎、中学2年前半を金沢、中学2年後半を横浜、中学3年前半を高松、中学3年後半を福岡……いろいろな場所で思春期を過ごしたものさ。
──いや、さも自分がそのような思春期を過ごしたみたいな言い方はやめてくださいよ(汗)。
カワチ:主人公に感情移入するとはこういうことだよ。ちなみに、ゲーム内の主人公の行動力もすごくてね。「あなたに会いたい」と書かれた差出人不明の手紙の送り主を捜すために、北は北海道から南は九州まで、全国12都市を旅して回るってストーリーなんだが……。
──12人と同時恋愛できるってことですよね? そんなスーパー高校生がいるんですか? めっちゃリア充じゃないですか! 
カワチ:そう、当時の俺たちはリア充だったんだよ。平日はきちんと学校に行きつつ、アルバイトで旅の資金をかせぎ、ときに野宿などもしながら全国12カ所の女の子と交流していくんだぞ。普通では考えられないバイタリティだろうが。
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──なるほど。つまりはそういう設定で、全国の女の子たちにちょっかいを出せる恋愛シミュレーションゲームだったわけですね。
カワチ:そんな身もフタもない言い方……。まぁ『センチメンタルグラフティ2』はそんな主人公の葬式から始まるんだがな。
──ウソでしょ! 感情移入していた主人公がいきなり続編で死んじゃうんですか!?
カワチ:な? ツッコミどころだらけだろう!? ちなみに、あまり知られていないが『想い出は永遠に…』というドラマCDでは、なんと主人公はヒロインたちの生んだ妄想の存在であった……という設定にまでなっている。……あのドラマCD、なんだったんだろうね?
──ぼ、僕に聞かれても……。
カワチ:前作主人公のお葬式からはじまる『2』のオープニングも相当インパクトがあるが、『1』の暗闇のなかで太極拳をしているかのようなオープニングも、当時はかなり話題になったもんさ。というより、今でもゲームファンの中では語り草になっている。
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カワチ:見ろ、これが『1』のオープニングだ。暗闇のなかで踊るヒロインたちがなんとも言えないオーラを醸し出しているだろう。
──せ、せめて背景くらいあれば見え方も変わってきたような……。
カワチ:じつは当時、『センチ』のことをクソゲーだとバカにするヤツも少なくなかったよ。まぁ実際にいびつなゲームであることは確かだから何とも言えないがね……。ちなみに本当のファンは『センチメンタルグラフティ』を『センチ』と略す。『セングラ』と呼ぶヤツはモグリだと俺は思っているよ。まぁ『チングラ』と呼ぶアンチよりはマシだが(笑)。
──また随分と極論ですね(汗)。
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■「大切な存在」が力になる! 晶に学ぶ「頑張る」ことの意義
カワチ:避けては通れない話題だから解説したわけだが……ただな。俺が見てほしい『センチメンタルグラフティ』はそんなところじゃないんだ。一途でひたむきな女の子たちの姿。それこそが本作最大の魅力であり、至高の部分なんだよ。今のお前さんに欠けている部分でもあるな。
──ぼ、僕に欠けている部分? 僕だってひたむきに頑張ってるつもりですよ!?
カワチ:ああ、それは知っているよ。だが、話はまだ続きがあってな。
──そういえば最初に教えてくれた遠藤晶ちゃんでしたっけ、そろそろ彼女のことをもっと詳しく教えてくださいよ。
カワチ:うん。だいぶ横道に逸れてしまったが、いい加減、話を晶に戻そう。彼女を演じる声優は鈴木麗子さん。麗子と書いて「うららこ」と読む。
──これまたハイカラな名前ですね。晶にぴったりな雰囲気ですけど。
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──一般公募でヒロインの声優さんを選ぶというのは、またスゴイ企画ですね。
カワチ:ちなみに、そんな麗子さんが演じる晶は、父親が一流企業の重役を務めている裕福な家庭の生まれだ。いわゆるお嬢様だな。
そんな彼女の最大の萌えどころは、『2』で捨てネコをあやしたり庶民の食べ物であるハンバーガーを上手に食べられずにいじけている姿であろう……。俺たちの見たかった晶がここにいる!
──ち、ちょっと見てみたいかも。
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カワチ:彼女とデートをすると、クルーザーに乗せてもらうこともできるぞ。
──すげえ! でも、そんなお嬢様と主人公はどうやって出会ったんです?
カワチ:晶がひっそり音楽室でバイオリンを練習していたところに、主人公が鉢合わせたのがきっかけだな。
──え……意外と地味……ですね。なんで晶ちゃんは隠れて練習していたんですか?
カワチ:自分がバイオリンを練習する姿を、人に見られるのがカッコ悪いと思っていたからさ。それだけプライドが高いんだ。表舞台では華やかに見られがちな彼女だが、じつは影でひたむきに努力していたってことでもある。営業の成績が上がらず、ただイジけているだけの誰かさんととはえらい違いだと思わないか?
──くっ……。
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カワチ:晶はとにかく強気なところがいいんだよ。影の努力に裏打ちされた自信も手伝って、とても眩しく輝いてみえるんだ。なにもそれはバイオリンだけに言えることじゃない。女性としてもだ。
「東京にも私ほどの女の子はいないってわけ?」
「いいわよ、デートしてあげても」
こんな、下手すると嫌味に聞こえるようなセリフも、彼女がいうと不思議と嫌味に聞こえない。ほかの女の子が相手だったらイラッとしそうなセリフなのにな(笑)。
──そ、それはマスターがドMなだけなんじゃ……。
カワチ:ゴホン。それは否定できないところだが、晶はナチュラルに上から目線のことも多いんだぞ。買い物の荷物を当然のように持たせようとしてきたり……まぁお嬢様だからしょうがない。これを今でいう「ツンデレ」の一言で片づけてしまえばそれまでだが、仲良くなっていくことで少しずつ、かわいい一面も見せてくれるようになるのがたまらないんだよ。
いっしょに「ハート石」を見つけたときも、どんなジンクスがあるのかわざと教えなかったり、体に触れられたことをよろこぶ主人公に「な、なに言ってるのよ! バカ……」と照れたり、普通の女の子っぽいところもいっぱいあるんだなぁ。
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カワチ:『2』の主人公は空気を読むのが下手で、ファンからも「デリカシーがない」などと言われてしまっているが、それだけに彼といるときの晶はいろいろなリアクションを見せてくれるんだよ。無神経なレポーターに囲まれた晶を、主人公が手を引いて助けるイベントがあるんだが、「我慢できなかったんだよ!」という主人公に「…知らない!」とテレながら返す晶が本当に可愛いんだ。可愛いんだ……。
──大事なことだから2回言ったんですね……。でも、話を聞いているだけでも彼女が気高くて格好いい女性だってことがわかりますよ。
カワチ:ハハハ……。でもそんな晶もスランプになって自暴自棄になってしまうこともあるんだけどな。審査員に「演奏家としては一流だけど、音楽家としては二流だ」と言われたことでな。
──演奏家としては一流だけど、音楽家としては二流……?
カワチ:そこで俺は……、もとい主人公は、晶を上っ面ではげましたりはせず、逆に「なんだか晶の演奏って、あんまり暖かみがないような気がするよ…」と伝えたのさ。
──えぇ!? 傷ついている女の子にそんなこと言うのは鬼ですね。
カワチ:もちろん、ひと悶着はあったさ。ただ、晶はそれで気付くんだよ。音楽で人を感動させるには──演奏者には心から聞かせたいって思える相手が必要なことにな!
──な、なるほど……。
カワチ:対して、キミはどうなんだ? 余計なお世話かもしれないが、営業でトップになることばかりを考えて、大事なものを見失っているんじゃあないか? 
──マ、マスター……そうでした。俺、大事なことを思い出せましたよ。自分のためだけに働いているんじゃない。アイツを守っていくため、そして喜んでもらうために頑張ってるんでした……。
カワチ:うんうん。晶のおかげで、だいぶ見えてきたみたいじゃないか。
──自分自身のためだけじゃなく、大切な誰かのためにも頑張る……。そう考えれば、もっともっとやれる気がしてきました。
カワチ:それに気づくことができたのなら、こんなところでウダウダ言ってる場合じゃないと思うがね。
──マスター、俺、帰ります。今日は晶ちゃんの生き方に、大切な誰かのために努力する意味を学ばせてもらいましたよ。ありがとうございました!
カワチ:ああ、また何かあったら寄ってくれ。
かくして、今日も1人の男の疲れた心は癒された。もしも今、あなたが悩みを抱えているのなら、この隠れたBARを訪れてみたらいかがだろう。"ギャルゲーBAR☆カワチ"は、いつでもお客さんをお待ちしています。
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テキスト:カワチ(Makoto Kawachi) 1981年生まれ。ライター。ビジュアルノベルに目がないと公言するが、本当は肌色が多けれななんでもいい系のビンビン♂ライター。女性声優とセクシー女優が大好き。
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