「キャラとのシンクロ」がより強烈な個性につながる──『サイキックフォース』アオキヒロシ×石川勝久×安藤武博クリエイター鼎談【前編】
1996年に登場し、熱狂的なファンを集めた格闘ゲーム『サイキックフォース』。アニメのような美麗なキャラクター、悲劇的なストーリーなどにより、格闘ゲームなのに女性人気が高かったことも、当時としては非常に珍しいことでした。そんな『サイキックフォース』を作ったのが、当時タイトーのゲームディレクターだったアオキヒロシさんと、サウンドクリエイターの石川勝久さん。ゲームDJ安藤武博がお二人に、『サイキックフォース』というユニークなゲームが生まれた背景についてお聞きしていくこの鼎談。前編ではおもにアオキさんに、ゲームとしてこだわった部分についておうかがいしていきます。
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アオキヒロシさん(写真左)
現・マーベラス所属のゲームクリエイター。『サイキックフォース』シリーズのディレクターを担当。代表作に『ダライアスバースト』や『スペースインベーダーエクストリーム』などがある。なお、シシララTVの生放送への最多出演回数を誇る。

石川勝久さん(写真中央)
TAITOのサウンドチーム「ZUNTATA」所属のサウンドクリエイター。『サイキックフォース』では効果音制作に加えてサウンドディレクションを手掛けた。おもな代表作品は『メタルブラック』、『武刃街』、『ダライアスバースト』など。現在、ZUNTATAの5代目リーダーとして精力的に活動中。愛称は「ばび~」。
■眠っていた企画が、プレイステーションの登場で蘇った
安藤武博(以下、安藤):『サイキックフォース』というゲームは1996年にアーケードゲームとして登場し、同年にプレイステーション用ソフトとして発売されました。その後、『サイキックフォース2012』という続編が1998年に全国のゲームセンターで稼働を始め、翌年にはその家庭用ソフトが出ましたよね。昨年は20周年ということでイベントなども開催されていましたが、世に出してから20年経った今のご心境は?

石川勝久さん(以下、石川):20年といっても、『サイキックフォース』がすごく盛り上がっていたのって、1996年から99年の3年くらいなんですよね。だから、あっという間に過ぎ去ったなという感じです。あれはちょっと特別な3年間でした。

安藤:原案はアオキさんが考えられたとうかがっているのですが、企画自体が生まれたのはいつ頃なのでしょう。

アオキヒロシさん(以下、アオキ):発案者は僕ではなく、当時タイトーにいた企画マンが考えたんですよね。それが、1991年から92年の間かな。91年にカプコンの『ストリートファイターII』が出て、すぐ人気に火がついたんですよ。そこで、タイトー社内でも「格闘ゲームを作るとしたらどうするか」という話が出たり、企画のコンペをしたりしていました。そのなかで、空中対戦はどうかというアイデアが出てきたんです。
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安藤:発売よりも、随分前なんですね! 僕はてっきり、1994年に「プレイステーション」が出て、3Dの演算がハードでできるようになったから、空間を利用した格闘ゲームを思いつかれたのかと思ってました。

アオキ:違うんですよ。当時は、他タイトルとの差別化だったり、これまでにない新規性といったことが企画の大本に来ることが多かったんです。で、「他社がやってない格闘というと、地上じゃなくて空中じゃない?」くらいの単純な発想でした。それで92年の初頭に、僕が仕事の空き時間にモック(アップ)で作ってみたんです。まだ2Dの状態です。そうすると、角度別のアニメーションをいくつも描かなきゃいけないんですよね。こりゃ大変だ、と(笑)。そうしたら、94年にプレイステーションが出てきて、絵を描かなくてもモデルを作れば、角度別のアニメーションを作らなくても済むようにようになった。それでもう一度、91年の企画を引っ張り出してきたんですよ。
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安藤:なるほど。眠らせていた企画が、ハードの技術革新によって蘇ったんですね。『サイキックフォース』は今振り返っても、とても独特なゲームシステム。格闘ゲームというジャンルにくくれないくらいの自由度があると思うんです。2Dみたいな構造で動くけれど、遊んでいる人たちは360度縦横無尽に動けるような感角で操作できる。

アオキ:システムが独特なのは、92年に作ったモック(アップ)がベースになってるからですね、きっと。たぶん、作りはじめのときに『鉄拳』や『バーチャファイター』があった上で空中対戦を作ろうとしたら、いまアーケードで展開している3Dの『ディシディア ファイナルファンタジー』みたいなシステムになっていたんじゃないかと思います。92年の時点では2Dの機能しかないハードで作っていましたから、いわゆる3次元計算なんてやろうとも思わなかった。3次元空間でどう動かすか、ではなく「あの『ストII』の延長で空中対戦をすることはできないか」という問いが発端にあるので、そもそも平面で戦うことに疑いがなかったんです。
■アニメっぽさを追求したら、少し変わった格闘ゲームができた

安藤:『サイキックフォース』で遊んだときに感じる、実質2Dな感じはそこから来ているんですね。また、この作品でとても印象的なのは、キャラクターデザインと悲劇的なストーリーです。この前、改めてゲームをやってみたんですが、『サイキックフォース』は相手を倒すと「死んだ」ことになるんですよね。『レイフォース』に始まるタイトーのレイシリーズに通じる、救いのない絶望感が感じられる。これは、聖悠紀先生の「超人ロック」とか石ノ森章太郎先生の「サイボーグ009」といった、60年代、70年代の超能力者のマンガにも通じるところがあると思うんです。
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アオキ:鋭いですね。まさに、超人ロックにものすごく影響を受けています。また主人公の親友であり、ラスボスのキースの衣装は、見たらすぐ石ノ森章太郎デザインにインスパイアされているのがわかりますよね。じつは、『サイキックフォース』のコンセプト資料には、「アニメ世界を表現する」とはっきり書いてあるんですよ。空中対戦というゲームシステムでいくというのがまずあって、空中対戦というシステムを取り入れるなら、マンガやアニメの世界観のほうがマッチすると思ったんです。

安藤:いま流行っているライトノベルなどの作品では、超能力を得た主人公は世界を救うヒーローになります。でも、『サイキックフォース』の世界では、超能力者は異端で鬼っ子だと差別されている。そこが、この作品のけれん味のあるところですよね。そして、そのお話を聞いて納得しました。当時の格闘ゲームとしては非常に斬新な、セルアニメーションのようなキャラクターデザインも、アニメ世界を表現するというコンセプトがあったからこうなっているんですね。

アオキ:そうなんです。それともう一つの理由が、当時の『バーチャファイター』や『鉄拳』といった格闘ゲームが、とにかくリアル方向に突き進んでいたから。リアル方面を後発の我々が追いかけても、追い抜くのは難しいので、独自路線を行こうと思ったんです。アニメっぽさを妥協せずに貫こうとしたことは、ロゴにも現れています。当時のアーケードゲームのロゴって大抵英文字なんですよ。最初デザイナーから上がってきたものも、「Psychic Force」と英文字だった。でもそこを、カタカナに直してもらいました。
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安藤:マンガやアニメはカタカナですもんね。ではもし、タイムマシンで20数年前に遡って、『サイキックフォース』を作り直していいよと言われたら、何をしますか?

アオキ:いやー、女性キャラのコスチュームはもうちょっとなんとかしたいです。いま見ると古いのは当たり前なんですけど、96年当時からちょっとレトロだったんですよね。ソニアという電撃を操る女性のサイキッカーは、なんでこんな全身白タイツにしてしまったんだろう(笑)。まあ、人工生命体であるという設定も加味してこうなってるんだけど、今だったらもっとかっこいいメカニック的なプロテクターをつけたりするかなあ。
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アオキ:まあでも、ソニアにしろキースにしろ、古臭いのは記号化を狙ってる部分もあるんですよね。ひと目見れば超能力者であるとわかるようにしたかった。この「一目見ればわかる」というのはけっこう重要で、ストーリーをつくる時もあえて奇をてらったものにはしませんでした。こいつは熱血、こいつはクール、こいつは悲劇的な生い立ちがありそう、というのも見た目とシンクロさせるようにしています。

安藤:たしかに、格闘ゲームはストーリーでキャラクターのことを理解させようとすると、テンポが悪くなってしまいますよね。「重くて鈍いやつ」「細くてすばしっこいやつ」など、パッと見で特性がわかることも格闘ゲームのキャラ作りにおいては大事です。

アオキ:そう、シルエットの差別化をしたかったんですよね。家庭用ならじっくり見てもらえますけど、ゲームセンターのアーケード版だとふれる時間が少ないので、短い時間でキャラクターのことを好きになってもらうには、わかりやすいデザインが求められていました。でもやっぱりそれだけではキャラの魅力は伝わらないので、当時はゲームセンターに小冊子を置いてもらっていたんですよ。ちょっとした説明と一枚絵を見てもらって、「このキャラクター好き!」と思ってもらえたら、我々の勝ち。なので、あえて記号化してるところはあります。
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■キャラにシンクロして焦るように作られたコマンド操作
安藤:超能力で戦うというところで、遠距離でシューティングゲームのように攻撃することもできれば、接近戦もできたりして、習熟するには難しいゲーム、いうなれば敷居が高いゲームシステムだと僕は感じました。そこは計算通りなのでしょうか。

アオキ:うーん、遠くから撃ち合ってシューティングゲームみたいになってしまうという問題には、開発中から気づいていました。でも、それを根本的に打開するすべを思いつけなかったのも事実です。解決するには発明的なゲームデザインが求められるけれど、それを発想・開発することはこのプロジェクト内ではできないと思っていました。近づくことと飛び道具を撃つことって、相反する要素。それを両立して、気持ちよくハマる対戦の仕組みを考えるのはなかなか難しいと思います。
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安藤:そこを克服できているゲームは、いまだにないかもしれませんね。

アオキ:なので、その他の複雑さをできるだけ回避しようと考えました。例えば、コマンドの向きは関係ないとか、タイムオーバーになったらサドンデスという特別なルールで勝敗を決めるとか。さらに言えば、対戦ツールとして研磨していこうという意識は、そこまでなかったんです。対戦より、世界観や雰囲気を楽しめるゲームにしたいという思いが強かった。それを象徴しているのが、「バリアガード」という全方向からの攻撃を防御するバリアのシステムです。これを出すにはガードボタンを押しながらレバーを1回転させないといけません。
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安藤:その操作、難しいですよね。

アオキ:そう、じつは意図的に難しくしてるんです。なぜかというと、戦っているときにガードが間に合わないほど敵の攻撃が速い、というドラマチックさを感じてほしかったから。

安藤:それはおもしろい! テンパることを前提に設計されたゲームデザインなんですね。

アオキ:キャラにシンクロして、「うっ、やつは速い……!」と思ってほしかったんです(笑)。

安藤:それは、ゲームでしかできないキャラクターの立たせ方ですね。

アオキ:だから、採用しなかったけれど、風を使う超能力者であるウェンディーを使ったときに、風上に立つか、風下に立つかで有利・不利が変わる、といったシステムも考えました。風上に立てたらすごく強いけど、逆になると弱いみたいな弱点があるのって、マンガ的じゃないですか。

安藤:大きく欠けている何かがあると、そのキャラがより魅力的に見えますよね。

アオキ:でもこういうのって、対戦ツールとして入れるのはなかなか難しいんです。一つ実現できたのは、ウォンの時を止める技。時を止めるって、けっこう対戦としてはタブーじゃないですか(笑)。
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安藤:時を止めるやつはヤバイというのはマンガやアニメのお決まりです(笑)。でも、ゲームだとおそらくプランナーが発想した時点で、ゲームバランス崩れるからやめようと言われるでしょうね。こうしてうかがっていると、パッケージゲームは実現したいテーマや動かしたい絵があって、それをゲームに落とし込むとどうなるのかというふうにデザインされている。これは、スマートフォンのゲームにはない自由度、おもしろさですね。

(後編へ続く)

後編はコチラ→20年の時を超え『サイキックフォース』の続編は実現するか!? アオキヒロシ×石川勝久×安藤武博クリエイター鼎談【後編】
テキスト:崎谷 実穂(Sakiya Miho)
新卒で入社した人材系企業でコピーライティングを、転職先の広告制作会社で著名人・タレントなどの取材記事を担当し、2012年に独立。ビジネス系の記事、書籍のライティングを中心に活動。趣味は将棋で、アニメ・マンガ(BL含む)もわりとよく観る&読む中途半端なオタク。 

崎谷実穂 サイト→『sakiyamiho.com』
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