縄文時代は終わり弥生時代が始まる──今、プロゲーマーに起きている変革とは!?/ふ~どVS安藤武博 濃密対談
第一線で活躍するプロゲーマーのふ~ど氏に、ゲームDJの安藤武博が知られざるプロゲーマーとe-Sportsの現状についてインタビューする対談企画。後編ではふ~ど氏の生い立ちから、これから先のプロゲーマーの将来についてまで、過去・現在・未来のすべてを語ってもらった。
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前編はコチラ→大切なのは“シーン”に身を置くこと──行動に移すことがプロゲーマーへの道

■プロゲーマー・ふ~どの原点──その少年時代を振り返る

安藤武博(以下、安藤):ふ~どさんは、どんな少年時代を過ごし、どんな人たちと出会い、ラスベガスの大会で優勝するまでに至ったのでしょうか?

ふ~どさん(以下、敬称略):最初にゲームにハマッたのは、駄菓子屋に置いてあったネオジオ筐体でしたが、小6ぐらいのときにはすでにゲーセンに通っていましたね。船橋にあるららぽーとの中にあるゲームセンターで、当時から音ゲー、メダルゲー、格ゲーなど、すべてのジャンルを遊んでいました。ゲーセンの店員さんとも仲が良くなって、車で家まで送ってもらったりもしていました。

安藤:店員とそれほど仲良くなれるくらい、ゲーセンにずっといたってことですよね。

ふ~ど:親子と見間違えてもおかしくないぐらい年齢差はありましたが、その人からゲームの楽しさを学びました。そのあとは船橋の市内まで遠出するようになり、『機動戦士ガンダム 連邦vs.ジオン』シリーズにハマったりしました。中学生から高校生ぐらいの頃ですかね。その後、『バーチャファイター』をプレイし、おもしろくてそちらにもズブズブとハマッていきました。

安藤:プレイしていたのは『バーチャファイター4』ですか?

ふ~ど:はい。『バーチャ』は店内で優勝したあと、千葉の大会に出場して全国大会へ行きました。全国大会まで行くと、ほかのプレイヤーからも名前を覚えられるようになるので、新宿などで活動していた有名な人たちとも仲良くなり、その後は都内で『バーチャ』にどっぷりと……。
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安藤:では、『バーチャ』をきっかけに千葉から東京へ出るようになったわけですね。

ふ~ど:そうですね。やはり大会で優勝したことが大きかったです。そのあと23歳ぐらいから『ストIV』をプレイするようになるのですが、こちらもおもしろくてずっとプレイしていましたね。もともとが3D格ゲー出身者なので、最初は昇龍拳を出すことすら難しかったわけですが、自分が上達していくのが感じられたのが楽しかった部分です。最初は船橋でプレイしていて、勝率が90%を超えていたのですが、それで気をよくして新宿に行ってみたら、ウメハラさんをはじめとした強豪がいて、一気に10%ぐらい勝率が下がったんです。それをきっかけに、また東京に通うようになりました。

安藤:つまり、そこでも「シーン」に身を置くことを選んだわけですね。それぐらい東京はレベルが違うってことなのでしょうか。

ふ~ど:はい。それは『バーチャ』も同じですね。そこそこ強い人であれば、場所を選ばなければどんな人でも勝率は保てるんです。でも、自分は腕を磨くために東京でプレイすることにしました。自分はもともと『バーチャ』の大会で優勝してゲーセンでも顔を知られていたので、新宿や池袋の強いプレイヤーと情報を交換したりすることもできましたしね。

安藤:『バーチャ』と同様に、『ストIV』にもシーンがあった、と。

ふ~ど:はい。『バーチャ』のおかげで『ストIV』のシーンにも飛び込みやすかったです。

安藤:そして『ストIV』のシーンのなかにいたふ~どくんが2011年の「EVO」で優勝するわけですね。ほかの格闘ゲーム……たとえば『鉄拳』などのゲームはプレイされなかったんですか?

ふ~ど:もちろんプレイしました。だいたいの格ゲーはプレイしていますね。ただ『ストIV』のように命を懸けるほどやり込んではいませんが。
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安藤:ゲームに命を懸ける? これはまたスケールが大きい言葉ですね。

ふ~ど:自分は、熱中すると本当に命を懸けるぐらいやってしまうんです。そのため、本当にハマッてしまいそうなヤバいゲームはプレイするのを避けているんくらいですよ。たとえば『三国志大戦』シリーズや『機動戦士ガンダム 戦場の絆』などは、ハマりすぎて死ぬ可能性があるのでプレイしていません。

安藤:ハマりすぎて、命まで持っていかれてしまうと?(笑)

ふ~ど:ええ(笑)。

■縄文時代から弥生時代へ──「メーカー依存」からの脱却という構造改革

安藤:1つのことにそこまで夢中になれるというのは、それだけで才能だと思います。では、今後ふ~どさんはプロゲーマーとしてどのようにゲームと向き合っていきたいですか? 次々と新作のゲームが発表されて旬のタイトルが移りゆくなか、プロであり続けるのは大変だと思いますが……。

ふ~ど:まず、プロゲーマーはほかのアスリートと比べて、どうしても立場が弱い存在だと思っています。なぜならそれは「メーカー依存」だから。メーカーが人気のあるタイトルやおもしろいタイトルを作ってくれるからこそ、プロゲーマーもそこに乗っかってお金を稼ぐことが出来るんです。

安藤:それはおっしゃるとおりだと思います。

ふ~ど:なので、「今はソーシャルゲームが人気だから、これからは格闘ゲームは作らない」と言われれば、その時点で自分たちのような格闘ゲームのプロはいらなくなってしまいます。そこがメーカー依存の弱み、プロゲーマーの立場がアスリートに比べて立場が弱くなる要因なんですね。
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安藤:なるほど。

ふ~ど:ただ、ゲームというジャンルそのものがなくなることはないので、配信などを中心に収入を得ることはできると思っています。

安藤:収入の話はよく聞かれると思うのですが、やはりゲームのプロとして食べていくのは大変でしょうか?

ふ~ど:おかげさまで、この6年間ほどはプロゲーマーのお仕事だけで食べていけています。ただ、年収は賞金によってかなり変わってきますので、安定しているとはいえないですね。言ってしまえば、私たちのやっていることは“またぎ”であり“狩人”なので、かなり不安定です。

安藤:狩人……カッコいいですね。そういう意味ではプロのスポーツ選手とはかなり違います。

ふ~ど:プロゲーマーのやっていることは、基本的に“縄文人”と同じなんですよ。マンモスを狩って食糧にして、狩れなければ飢え死にをするだけ。今は我々の力で稲穂を植えて、弥生時代にしようと頑張っている途中ですね。

安藤:縄文時代から弥生時代へ(笑)。

ふ~ど:ええ。おかげさまで、もうだいぶ弥生時代に近づいてきていますよ。プロゲーマーのなかでも「もう縄文はムリじゃね?」「縄文ってダサくない?」という空気が流れていますから。少し前までは賞金で食べていくのが格好いいみたいなところがありましたが、今ではだいぶ意識が変わってきています。
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安藤:ちなみに縄文時代が賞金での生活だとすると、弥生時代は具体的にどのような生活なのでしょうか?

ふ~ど:スポンサーとの契約や配信番組への出演、イベントの企画などを稼ぎの軸足にしていくことですね。ももち(※)の「忍ism(シノビズム)」設立などは、まさに弥生時代です。僕はまだまだ縄文時代を抜け出せていないので、弥生を目指して頑張りたいと思っています。

(※)ももち……Echo Fox所属のプロゲーマー。2015年11月、イベントや大会などの企画運営、若手プレイヤーの人材発掘、育成などのe-Sports全体の発展を目標とする株式会社「忍ism」を起業した。

安藤:e-Sportsという言葉自体が最近流行した言葉であり、まだ世間には根付いていない部分も多いと思うのですが、ふ~どさんにとってe-Sportsとはいったいどんなもので、今後どうなっていくものだと思いますか?

ふ~ど:今、みんながe-Sportsで危惧しているのは“少しずつ風を起こせば火が起こせるのに、一気に強風を起こしすぎると火種そのものがなくなってしまうのではないか?”ということだと思うんです。でも、自分はアクションを起こせるなら、それはそれでいいんじゃないかと思っているんですよ。今のまま何もしなかったら、火が消えてしまうことは確定しているので、それよりは全然いいハズです。

安藤:でも、日本のe-Sportsは賞金額の問題が大きいですよね。これは今後改善されていくものなのでしょうか。

ふ~ど:改善されていくと思いますよ。とくに東京オリンピックのあと、国内にカジノが出来たら大きく変わるのはないかと思っています。

安藤:確かに。ふ~どさんと話していると感じるのですが、アーケードゲーマーは物事の本質だけを見ていますよね。物事を最適化して見ているように思えて、とても興味深いです。

ふ~ど:アーケードゲーマーは飲み会によるコミュニケーションが盛んなので、そこでプロゲーマーのことが議題に上がることも多いんです。だから、今回の対談で受け答えてしていることのなかには、自分だけの意見ではなく、みんなで話し合って出た結論も多いです。そのため、最適化しているように思われるのかもしれません。
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安藤:ああ、そういうことだったんですね。ようやく謎が解けました。ではせっかくなので最後はふ~どさん個人の意見をお聞きしたいと思います。今後、3年、5年、10年と活動を続けていくうえで、将来はどのようなプロゲーマーになりたいですか?

ふ~ど:先ほども話したとおり、現在のプロゲーマーは「メーカー依存」から脱却できていませんので、未来は誰にもわかりません。だから今、未来の姿を描くことは、なにも未来を観ていないのと同じだと思うんです。だったら、自分は今を楽しく生きたいと思っています。常に自分が面白いと思うことをやり続けていれば、いつかそれが何かの変革につながるかもしれませんしね……って、すみません。本当はしっかりと未来のビジョンを語れたら格好良かったのかもしれませんが、そういうことがどうも苦手なんです(笑)。

安藤:いや、本音が聞けて面白かったです。きっと未来のプロゲーマーたちにもふ~どさんの言葉は届いたはずですよ。本日は貴重なお話をありがとうございました!

テキスト:カワチ(Makoto Kawachi) 1981年生まれ。ライター。ビジュアルノベルに目がないと公言するが、本当は肌色が多けれななんでもいい系のビンビン♂ライター。女性声優とセクシー女優が大好き。

ツイッターアカウント→カワチ@kawapi
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