いつだって「好き」が最大のモチベーション──香川愛生×梨蘭ゲーム対談【シシララ女子会/第1回・後編】
将棋の女流棋士として活躍する香川愛生さんと、ゲーマータレントの梨蘭さんの対談、後編です。いい感じに酔いもまわり、話題はますますマニアックな方へ。香川さんが初めて買ったゲームはギャルゲー、梨蘭さんが初めて買ったゲームはエロゲーと、似ているようで違う二人の趣味嗜好が浮き彫りになっていきます。聞き手は将棋好きライターの崎谷です。
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▲写真左から香川愛生さん、梨蘭さん、崎谷実穂さん。
前編はコチラ→「好きなことを仕事にして生きていく」──香川愛生×梨蘭ゲーム対談

■女の子をドキドキさせすぎないように

梨蘭:愛生ちゃん、自分のお金で初めて買ったゲームって覚えてる?

香川愛生(以下、香川):もちろん覚えてる! 学生時代、近所に中古のゲームソフト屋さんがあって、そこで攻略本とセットで買える安いソフトを探してたんだよね。そしたら、『トゥルーラブストーリー』っていうゲーム480円で売ってて。それを買って帰ったの。

タダツグ:えー! ここで思いがけないタイトルが来た(笑)。それってギャルゲーですよね?

香川:そうそう。主人公は1カ月後に転校することが決まっていて、それまでに彼女をつくって思い出を育むという……いわゆるギャルゲーですよ。このゲームは「下校会話システム」というのが秀逸でして。

──香川さんがギャルゲーを語ってる……(笑)。

香川:下校中に最大3人の女の子に出会うんです。目当ての女の子がいたら一緒に帰ろうって誘って、家路をともにする。仲良くなると、向こうからも誘ってもらえるようになります。で、その道中で「仲良しゲージ」と「心拍数ゲージ」をコントロールしながら会話をするんです。おもしろいのは、女の子をドキドキさせすぎると、照れて帰っちゃうってところ! その様子が、めっちゃかわいいんですよ!!

──おお……(笑)。つまり、ドキドキさせすぎちゃいけないんですね。

香川:そうなんです。「目を見つめる」とか「手をつなぐ」とか選択肢があるけど、やりすぎるとドキドキして女の子が途中で帰っちゃうから、いい感じに学校の話とか趣味の話も盛り込まないといけない。
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タダツグ:当時のギャルゲーとしてはそういうの、珍しかったんですよね。

香川:これはあとから知ったのですが、当時のギャルゲーのなかで最も健全だと言われていたらしいですね。もうすごく楽しくて、選択できる春夏秋冬の季節と、全キャラクターをフルコンプリートして、それを達成した人しか見られない1枚絵もこの目でしかと見届けました! ちなみに、梨蘭ちゃんはなんだったの?

梨蘭:健全なお話の流れのなかで恐縮なんですけど、私が自分でお金出して初めて買ったのはエロゲーなんだよね……。

タダツグ:ええー!? ここでまた思いもよらない展開に(笑)。

梨蘭:『つよきす』ってゲーム。あと、この『つよきす』でシナリオと原画を担当した人たちが作った『君が主で執事が俺で』ってやつ。

タダツグ:エロゲーってことは、PCで遊んでたってこと?

梨蘭:そう! 父親のパソコンで遊んでました。そしたら、ウィルスみたいなのに引っかかっちゃったんですよね。で、お父さんが「あのさ……パソコンでゲームとかやったりした?」って聞いてきて(笑)。

タダツグ:それは気まずい(笑)。

梨蘭:うん。でもって、原因がわからないから、パソコンに詳しい従兄弟が様子を見に来てくれた。それで直ったんだけど、そのパソコンでAmazonを開いたら、私が検索してたエロゲーが最終履歴に残ってて……。でも、私のお父さんはそういうのあんまり気にしない人で。画家だから、ちょっと感性がぶっ飛んでるんだよね(笑)。

──すごいですね……。

梨蘭:それでもさすがに「エロゲー買って」とは言えないから、自分で買ったんだよね(笑)。あー、懐かしいなあ。ここで話は変わるけど、愛生ちゃんってアクションゲームもあんまりやらないでしょ? 一番好きなのはミステリーアドベンチャーだっけ?
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香川:そうそう。このゲームの好みの違いって、どういう刺激を好むかによる気がする。アドベンチャーって刺激が渋いんですよね。最後の最後にどんでん返しがあるというか……溜めて溜めたその先に、ものすごい刺激がある。私は、映画でも漫画でも、序盤は淡々としてて動きがなくてもいいんです。たとえば『ユージュアル・サスペクツ』みたいに、最後に伏線がぶわーって回収されていくタイプの作品が「おもしろかった!」と思えるタイプ。逆に、序盤に刺激があって、おもしろいところを先に見ちゃうと、なんだか飽きちゃうんだよね。

梨蘭:あはは、そうなんだ。私はオープニングで頭が吹っ飛ぶやつとか好きだなー。

香川:それは最初から刺激ありすぎでしょ(笑)。

■リアルタイムで『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』を遊べなかった若者の苦悩

──好きなものを先に食べるか、あとに食べるか、みたいですね(笑)。お2人はショートケーキのイチゴはいつ食べます?

香川:100%最後に食べる!

梨蘭:へぇ~。私は何も考えてないなぁ。ショートケーキ自体がそんなに好きじゃないし(笑)。よくあるのは、お寿司のネタを食べる順番とかじゃない?

香川:あー、私はお寿司も、好きなネタは最後に残しておくなぁ。

梨蘭:私は目についたものから食べる(笑)。好きなものを食べたくなったときに食べるタイプなんだよね。だから最初に食べるときもあれば、最後に食べることもあるっていう。

──「今、何を食べたいか」が重要なんですね(笑)。

タダツグ:ちなみに俺は、好きなネタだけ食べまくるタイプ!! 崎谷さんはいかがです?

──えーと、白身とか味の薄いネタから食べていきます。
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香川・梨蘭:王道だ……。

タダツグ:三者三様すぎておもしろいなぁ(笑)。伏線が回収されていくゲームが好きなら、香川さんは『MOTHER』シリーズもお好きなんじゃないですか?

香川:大っっ好きです!! もうあれは、糸井重里さんのテキストによって別格のゲームになってますよね。私、『MOTHER2』に出てくる言葉が心に染みすぎて、色紙を書く時などにお借りすることがあるんですよ。どせいさんの里みたいなところで主人公を応援する言葉が流れてきて、そこに「勇気は、最後の勝利を信じることから生まれる」というフレーズがあるんです。そこからとって、「最後の勝利を信じる」と揮毫することがあります。

──おお、将棋の棋士にピッタリのフレーズですね。

梨蘭:私はそういうゲームを全然遊んできてないんだよなあ。ここで言うのは恥ずかしいけど、『ドラゴンクエスト』も『ファイナルファンタジー』もやったことがないんです。

香川:そうなんだ? まぁ、私も『ドラゴンクエストX』と『ファイナルファンタジーX』しかやったことないけど……。

梨蘭:『メタルギアソリッド』とかもそうなんだけど、やってみたいと思っても、シリーズがあまりにも続いてるものは手が出しづらいんだよね……。やるなら初代からやらないと気がすまないタイプだから。『ドラゴンクエスト』とか、『I』からやってたら今頃大好きだったんだろうなぁ~。

香川:わかる! しかも、私達がいま『ドラゴンクエスト』の『I』、『II』、『III』をやったとしても、リアルタイムでファミコンでプレイしてた人の感動は味わえないだろうなと思っちゃうんだよね。今の20代のゲーム好きは、そういう「後追いの辛さ」を共有してるんじゃないかな。
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梨蘭:中途半端に知識だけあるしね。「ビアンカorフローラ論争」とか、『ドラゴンクエストV』をやったことがないのに知ってるもん(笑)。

香川:後追いの辛さは『キングダムハーツ』シリーズにもあるんだよね。プレイしながら「昔からのファンだったら、この展開ですごく感動するんだろうな……」と思うんだけど、そこはつまり、自分はそこまで感動できていない側面があるわけで。

梨蘭:だからね、私『バイオハザード』がすごく好きで、最初にやったのは『4』なんだけど、『1』に遡って全シリーズをやったもんね。初代をやらずして『4』がいいとか『5』がどうだとか語れないだろうと思って。

香川:偉い! まじめだねえ。じゃあさ、一番好きなゲームって何?

■『コール オブ デューティ』にハマりすぎて、人を撃つ練習をしていた?

梨蘭:一番ハマったのは『Saints Row:The Third』かな。

香川:知らないや……それって洋ゲー?

梨蘭:そう。『Grand Theft Auto』みたいな、オープンワールドのバカゲーなんだよね。いろんな作品のパロディが入ってて、オープニングなんてモロに「スターウォーズ」っぽいんだよ。で、銀行強盗して捕まったところから始まる。このゲームで初めて「トロコン(トロフィーコンプリート)」したうえに、ゲーム内のミッションも全部クリアしたなぁ。いかに車に轢かれて保険金をふんだくるか、みたいなミニゲームもやりまくった。

香川:それ、楽しいの?(笑)

梨蘭:めっちゃ楽しいよ(笑)。だって絶対現実にはできないことでしょ? そういうことをゲームの中でやるのが好きなんだよね。

香川:私はゲームで、現実にできそうなことをやりたいタイプ。ミステリーアドベンチャーが好きなのは、登場する刑事とか探偵になって、現場でこういう推理をしてみたい……そんな気持ちでやってるんだよね。

梨蘭:なるほどね。あとは『コール オブ デューティ ブラックオプスII』だなあ。これは初めて、オンラインで人と一緒にやったゲームなんだよね。

香川:ほんとに梨蘭ちゃんの好きなゲームってガチだよね……。

梨蘭:これは「FPS(First Person Shooting)」のゲームで、戦場でバンバン人を撃つんだよ。撃たないと勝てない。このゲームをやりすぎて、当時、道の角から現れる人の頭を狙う練習してたわ。
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──—なんですか、それは(笑)。

梨蘭:エイムの練習ですよね、ヘッドショットの。もうね、角からパッと人が出てきたら、即座に狙わないと撃ち負けちゃうから。焼肉屋さんでのバイト中に、角を曲がってくる店員の頭をパッと狙う……そんな練習をしてたんです。

香川:どれだけガチなの!? ほんと、梨蘭ちゃんおもしろすぎる(笑)。ミステリーとかアドベンチャーゲーム脳の人が同じことやるとすると、服の裾とか見てその人がどういう人なのか推理しようとする……とかになるのかな? でも、何もわからなくて、やっぱりシャーロック・ホームズはすごいって思うんだ、きっと(笑)。

──香川さんが一番好きなゲームはなんですか?

香川:『逆転裁判』シリーズですね。生まれて初めて徹夜で遊んだゲームです。あれは感動したなぁ。『1』~『3』の三部作が死ぬほど好きで、それぞれ8周くらいしてるんですよ。そのなかでも1位を挙げろと言われたら『3』かな。でも、『3』の感動は『1』と『2』があってこそなんです。だから、私は『3』がやりたくなったときは、必ず『1』と『2』をクリアしてからやるんですよ。

梨蘭:わざわざ!?
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香川:というのも、この三部作では主人公の成歩堂龍一が成長していく様子が描かれているんですね。大事な親友が訴えられて、法廷に立った『1』の荒削りな成歩堂龍一が、『3』での最終話に向けてどんどん成長していく。その最終話の感動を味わうには、やっぱり最初からやらないと(笑)。『逆転裁判』は、ジャンルこそアドベンチャーゲームですけど、本質的にはアクションゲームであり、リズムゲームだと思うんですよ。

──そうなんですか?

香川:法廷をゲームにするために、的確なテンポで異議を唱えるという要素を入れている。だからこそ気持ちのいい逆転劇を体験できるんです。それがほかのミステリーアドベンチャーにはない要素なんですね。ミステリーアドベンチャーゲームは全般的に好きなので、『神宮寺三郎』などのシリーズはシンプルに、ストーリーやキャラクターの魅力を楽しんでます。

■「好き」を軸に仕事をしていく

香川:梨蘭ちゃんは「ミステリー」っていうジャンルについてどう思う?

梨蘭:うーん、頭が良さそうだなって感じかな。あんまり遊んだことないや。

香川:そうだよね。同世代の女の子にはウケないジャンルなんだよね……。『名探偵コナン』の話くらいは通じるけど、それにしたって新一と蘭とか、服部と和葉の恋愛話とかに流れがちで。

──服部平次といえば、「せやかて工藤」のイメージもありますけど。

香川:そう、「なんやて工藤!」で終わっちゃうんですよ(笑)。

梨蘭:小説とか映画でも、ミステリーはあんまり選ばないなあ。私の一番好きな映画『ダイ・ハード』だからね。

香川:あー。好みがわかりやすすぎるよ(笑)。

──さて、そろそろまとめに入りましょうか。お2人はこれからどういうことをやっていきたいですか?
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梨蘭:そうですねぇ、私は結婚したいです。そして30歳までに子どもがほしい!

──直球だ……!

梨蘭:私が一人っ子で寂しかったから、子どもは2人はほしいですね。そして、一緒にゲームするの。今だったらNintendo Switchかな。

香川:わぁ、いいね。

梨蘭:で、結婚して子どもができても、バリバリ働きたいと思う。なかでも、一応の目標はあって。それは、ファミ通とか電撃とかのゲーム雑誌でコラムを持つこと。自分が昔から読んでいた媒体に連載を持つというのが夢ですね。あとは、私いまおもちゃにもハマってて。ベイブレードとか友達を誘ってやってるんです。そういうゲームとかおもちゃとか、自分の好きなものでいろんな人と関わっていきたいですね。

香川:私は、将棋の世界での話をすると、ここ数年でコンピュータソフトが急激に強くなって、人間は追い越されてしまったんですよね。そういうなかで人間が何をするかというと、「できること」じゃなくて「したいこと」の時代になったんだと思うんです。能力だったら、比較でコンピュータに負けてしまう。でも、「これが好き」や「これがやりたい」という気持ちは、負けるとかないじゃないですか。

──なるほど。勝ち負けで測れるものではないですね。

香川:「できる」は点数がつけられるんですよね。でも、「好き」は嘘か本当しかない。で、自分に嘘をつかないで正直に生きれば、これからも好きなことをやって幸せに生きていける。そう思っています。

梨蘭:わー、真面目な回答だ……!

香川:いやいや、こう考えたのはね。やっぱり棋士だと「将棋だけやってればいい」と言われることが多いからなの。でも、私はゲームも好きだからやりたい。もちろん将棋も好きだから、盤の前に座れば100%の力を出す。それでいいと思ってるんだよね。こういう梨蘭ちゃんと話す仕事だってすごく楽しいし、これからもやっていきたいことなんだ。

梨蘭:私も、今日はお話しできてすごく楽しかった! 楽しくてしゃべりすぎちゃったけど、まだしゃべり足りないね。今度飲みに行こう!

香川:いいね。今日も飲んでたけどね!(笑)
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テキスト:崎谷 実穂(Sakiya Miho)
新卒で入社した人材系企業でコピーライティングを、転職先の広告制作会社で著名人・タレントなどの取材記事を担当し、2012年に独立。ビジネス系の記事、書籍のライティングを中心に活動。趣味は将棋で、アニメ・マンガ(BL含む)もわりとよく観る&読む中途半端なオタク。

崎谷実穂 サイト→『sakiyamiho.com』
ツイッターアカウント→sakiya@yaiask