【東京ダーク】鎌倉に住むイギリス人が描いた東京の“闇”【するめインディーゲーム/第2回】
なんとビックリ! 連載が1回で打ち切られていないことに驚きを隠せない、するめ(以下)マンです。
前回、新連載が始まったというのに“今週のシシララTV”でいっさい触れられていないわけで、そこらへんもすごく私っぽいと思いませんか? 思いません。ちょっと、こっちきてタダツグ。
まあ、でも、仕方ないかな。9月末と言えば、東京ゲームショウ2017(TGS2017)でバタバタしてた週ですからね。そういえばみなさん、今年のTGS2017は行きましたか? 私はほとんど仕事の取材で飛び回っていて、趣味のゲームは『しあわせ荘の管理人さん』しかプレイできませんでした。でも、大変しあわせでしたよ。イヒヒヒ、しあわせしあわせやきゅうができてたのしいな!

SANITY -100
NEUROSIS -100

ハッ! あまりに忙しすぎて意識がアッチの世界に飛んでいました。いけない、いけない。東京ゲームショウの話はもういいですね。えーと、そうそう。今回は、前に予告した通り“万人に受けるインディーゲーム”を紹介するんでした。とはいえ、じつはコレ書いてる時点で、何を紹介しようか決めてないんですよワハハ。

だって、東京ゲームショウに行ってて考えるヒマもなかったんだもん。東京ゲ……ん? 東京? 東京だって!? とうきょう、トウキョウ、東京……東京ダーク! というわけで、今回は9月7日に発売されたばかりの最新タイトルとなる“こちら”を紹介したいと思います。
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▲その名は『東京ダーク』!
この『東京ダーク』は、鎌倉に拠点を構えるインディーゲームスタジオ“cherrymochi”が開発したポイントクリック型の横スクロールアドベンチャー。イギリス人のジョン・ウィリアムズさんと、ウィリアムズ真保さん夫妻を中心とした少数精鋭で開発された、正真正銘のインディーゲームです。

この作品は、イギリスにあるSquare Enix Ltd.がインディーゲームの開発支援を目的として展開しているプロジェクト“Square Enix Collective(スクウェア・エニックス・コレクティブ)”の投票で選ばれており、2015年5月12日より始まったキックスターターの資金で制作されました。

今年のBitsummitや東京ゲームショウでも出展されていたので、見たことがある人もいるのではないでしょうか。自分もイベントで触るたびに、いつ出るのかとヤキモキしていました。
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実際に発売されてから遊んでみると、キックスターターから2年待っただけある作品に仕上がっていて、本当に安心したものです。ですが、まだイマイチ面白さが世間に伝わっていないような気がするんですよ。もしかして、グラフィックがアニメ調なので軽く見られていたりとかするのでしょうか? 中身は満足度の高い伝奇ホラー&オカルト色の強いサスペンスなのですが、どうも出来に反してあまり話題になってない気が……。

せっかく面白いインディーゲームなのに、遊ばれないのはもったいないと言わざるを得ません。ダークなメインストーリーは面白いし、キャラクターだってみんな印象に残るんですよ。やらないと損です。というわけで、今回は万人が遊んで楽しめるアドベンチャー『東京ダーク』の魅力を語っていきたいと思います。

■4つの数値で展開や選択肢が変わっていくSPINシステムの魅力

本作の主人公は、警視庁に所属する伊藤絢美(いとうあやみ)刑事。彼女は行方不明になってしまった恋人の田中一樹(たなかかずき)刑事を探すうちに、東京の地下に眠る大きな“闇”の謎に迫ることになる……というのが、ネタバレなしで言える本作の大まかな物語になります。
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▲主人公と同棲している田中刑事。恋人の伊藤刑事に呼ばれるシーンでも、なぜか名前ではなく「田中!」と呼ばれます(どうでもいい)。
基本はアイコンが表示された場所を調べることで物語が進んでいくので、謎解きで詰まるということもありません。自分が通り過ぎて見逃さない限りは、NPCの会話を聞いて調べていくことでスムーズに話が進んでいきます。割とオーソドックスなスタイルですね。
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▲調べられる場所に近づくと四角いアイコンが出現し、その時点で取れる行動が表示されます。主人公のSPIN(後述)や選んだ選択肢によって、取れる行動が変化することも。
そんな本作が、ほかのアドベンチャーとは大きく違う点。それが“SPIN”と呼ばれる数値が変動するシステムなのです。SPINは“SANITY(正気度、いわゆるクトゥルフ神話物のSAN値)”“PROFESSIONALISM(職業倫理)”“INVESTIGATION(調査能力)”“NEUROSIS(ノイローゼ)”の4種類に分かれており、主人公の取った行動によって変動します。
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▲ESCキーを押すと現在のSPINを確認できます。SAN値が下がりすぎると、表情からでもヤバさがわかりますね。絶対、何人かヤった目つきですわ。
とくに重要なのが“SANITY”。この数値はオカルト的なイベントを見ていくうちに減少し、下がりすぎた状態でエンディングを迎えると発狂して、悲惨な結末になってしまいます。SANITYは、部屋に戻れるタイミングで向精神薬を飲むと下げられるので、こまめに飲むことが大切です。
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▲憔悴しきった顔で薬を飲む伊藤刑事。完全に病みきってます。薬をまったく飲まないで進めると、彼女の素敵な“笑顔”が見られるエンディングに行けるので、1回は見ていいかもしれませんね、イヒヒヒ。
ただ、正直なところ、最初はSPINによる違いをあまり明確に感じることはできませんでした。なぜなら、1周目はオートセーブで後戻りができないようになっているからです。とはいえ、どんな選択をしても11種類(1周目のみ10種類)のエンディングのどれかにはたどり着けるので、1周目は自分の思うままに選択していいとよいかと。

SPINによる違いを感じられるのは、シーンごとのセーブができるようになる2周目以降の“New Game+”から。New Game+で始めると、1周目とは異なる会話やイベントが発生し、シーンスキップもできるようになります。1周目と同じイベントを見ても、「銃で脅す」といった選択肢が新たに出現していたり、1周目とは微妙に会話が変化していたりと、SPINの値や選択肢によるイベントの変化がわかるはずです。

と言っても、じつは一部のエンディングに影響するくらいで、あまりSPINの値を気にする必要はありません。SPINによって行動が大きく制限されるようなこともないのです。自分は、SPINが機能しすぎると難しくなるので良い塩梅だと感じましたが、人によっては少し物足りなさを感じるかもしれませんね。

■1つのイベントに複数の解決策が用意された作り込みのスゴさ

ストアの解説ではSPINばかり触れられていますが、むしろ“1つのイベントに複数の選択肢や解決策が用意されている”ことこそが、本作の大きな魅力だと思います。たとえば、序盤で下水道へ入るための方法を探すのですが、その手段も1つではないのです。

まず、バーのママに懇願する方法があり、逆に風営法を盾に脅しをかけることもできます。ママを無視して嫌な客を脅して聞き出すのもアリですし、色仕掛けで迫ることも可能です。どれを選んでも話が進みますが、選んだ行動によっては取り返しがつかない事態が起きるかもしれません。とくに、1周目ではやり直しがきかないので緊張感がスゴイ!

自分で選び取っている感覚が楽しいので、まずはWEBなどで攻略情報を見ることなく遊ぶことを推奨します。
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▲懇願するか、脅すかで挿入されるカットインも異なるものに。伊藤刑事の豊かな表情も見どころです。
あとは、実際に遊んでみてもらったほうが早いでしょう。ぶっちゃけ、アドベンチャーなので言いすぎるとネタバレになっちゃうんですよ。JKビジネスや日本人じゃ逆に触れにくいあのカルトとか、そういった日本の闇を描いた部分も魅力なのですが、下手に言うと面白さを損なってしまうのでもう言えません!

うーん、困ったな。何も言えない。こうなったら、本作に登場する女の子のレベルが高くてカワイイということを力説しておきますか。まあ、とりあえず見てくださいよ。このラインナップを!
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まずは、JKビジネスで稼ぐ女子高生2人組! 現実の秋葉原だと、よく自分が『スクール オブ ラグナロク』をプレイしていたゲームセンターの付近でウロウロしてますね。本当に女子高生じゃない人も混ざってそう。
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次は、何を言ってるのかよくわからないメイドカフェのメイド! 秋葉原を歩けばメイドに当たると思えるくらい、いまやお馴染みの人たち。歩いていると、冥土が利民とかなんとか歌が聞こえてくるものです。
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バックにヤの字がついてるタイプの姉御! あの、すみません。あなた『刺青の国』から来られました……?

ね、いい感じでしょう? ほかにも、いろいろなNPCが登場するので、アドベンチャーにありがちなキャラが少なくてリアリティが不足する感じは受けません。ロケーションも豊富で、すごくキッチリ作られているのです。
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▲ロケーションの1つ、新宿歌舞伎町。「のぞき まいっちんぐ」の看板が気になって仕方ないのですが、現実よりも治安が悪そう。80年代感があります。
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▲2つめは秋葉原。どう見ても、光あふれる大通りという感じではないですね。BEEPや駿河屋。夢屋などがひしめいている秋葉原では割とディープ寄りの地域にイメージが近いかも。
というわけで、ここまでみても文句なしで万人にオススメ! 手放しの大傑作で神ゲー……と言いたいところなのですが、残念ながら欠点がないわけではありません。たとえば、現バージョンではテキストウインドウの前にキャラクターが出てきてしまう表示バグがあります。
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とはいえ、ここは最終的にパッチで直らなかったとしても、発生頻度は多くないので問題ないレベル。

個人的に人を選ぶかもしれないと思っている点は、エンディングに至る流れでしょう。本作には11通りのエンディングがありますが、いわゆる2周目以降のトゥルーエンドが存在しているのですよ。トゥルー以外のエンディングは(劇中の展開としても)真のエンディングに至るための中継点という印象があり、せっかくのマルチエンディングがあまり意味のない物になっている気がしました。

もちろん、それぞれのエンディング自体はきちっと作ってありますし、違うパターンも見てみたくなります。ただ、2周目以降に行ける真のエンディングのインパクトが強すぎるんですよね。まさに『東京ダーク』の名にふさわしい、非常に見ごたえのあるエンディングとなっていて、これを2周目で見てしまうと周回する意欲が薄れてしまう可能性も……。

そこを踏まえて遊んでもらえれば、全体的なクオリティは間違いなく高いですし、値段分以上に楽しめると思います。というか、自分も2周目まで一気に遊んでしまったくらい、シナリオで引き込む力があるゲームだと思いました。
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▲選択によって変わるカットインを探すのも楽しいです。伊藤刑事には、つい暴力的な選択をさせたくなるのですが、ちゃんと顔がほころぶようなシーンもありますよ。
そもそも、Steamで¥1,780(税込)という値段は、この出来にしては安すぎるくらい。PCを持っているなら間違いなくオススメできます。スペックもそこまで要求されないので、ぜひ遊んでみてください。それでは、今回はこの辺で。ラストは、ゲーム中盤のとあるシーン。田中刑事の顔が電光掲示板に浮かぶシリアスな場面で締めましょう。
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▲秋葉原の電光掲示板に映る田中刑事。もとの看板の上に透過して映る演出のせいで、とてもファンシーな絵面になっています。
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▲とてもファンシーになっています!
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▲田中ファンシー!
というわけで、今回のインディーコラムはここまで! 次回は、紹介するとユニティちゃんにチョップを食らいそうなインディーデベロッパーのゲーム特集か、紹介しても怒られないインディーデベロッパーの特集をしたいと思います。お楽しみに!

テキスト:するめ(以下)マン(Surume Ika Man)正体不明の海産物。某ゲーム雑誌やネットでインディーゲームコーナーを担当しているとかいないとか。とあるメーカーの特集で呼ばれたとき、回収騒ぎになった作品や炎上した作品の話ばっかりするのでチームからはずされた過去を持つ。

ツイッターアカウント→するめ(以下)マン@IkamanS2