安藤:でも、会社のメンバー全員が先天的にカオス許容度が高いわけではないですよね? ポケラボにいるうちに、だんだんカオス許容度が高まっていくのでしょうか。
前田:先天的に高いメンバーもいたでしょうけど、そんなに高くないメンバーもいますね。結果が出ないと不安になるのは当然です。でも、そういうときに信じられるポイントを複数つくっておくことが大事なのかなと。それは例えば、仲間だったり、プロダクトの品質だったり。
あとは、毎週月曜に全社的な朝会を開いていて、そこで私が手を変え品を変え、同じようなことを言っているんです。先程の「諦めなければ勝てる」とか、自分たちの今の戦略、なぜこういうことをするのかという理由など。そうしたことを言い続けると、「自分たちの道はこれしかない」と自然と思える。そういうものの積み重ねなんじゃないかと思っています。
安藤:さらに、2016年にはマイネットに運用タイトルを売却しますよね。これもすごい決断だったなと思います。当時の稼ぎ頭だった『サムキン』も売ってしまったわけですから。言葉を選ばず言うと、「うまくいかなくて、前田さんはやけっぱちになっているのかな?」とすら思いました(笑)。
前田:社内でも賛否両論でしたよ。売上をゼロにして開発に集中するなんて、おかしいんじゃないかと。『サムキン』ファンの方々とのつながりも強かったですし、本当に苦渋の決断でした。でも、勝負をするならここしかないと思ったんです。
安藤:なるほど。
前田:今回の『シノアリス』は「GvG」の系譜を受け継いだ作品なのですが、GvGのノウハウは『サムキン』チームにあって、このノウハウをうまく活用しないと勝てる勝負も勝てないと考えました。本当に苦渋の決断でしたが、マイネットさんの運用チームの熱量も後押しして、あのタイミングで『サムキン』を移管する判断をしたんです。そうした意図もすべて全社メンバーに赤裸々に話したら、びっくりするくらいみんな納得してくれました。引き継ぎもスムーズにできて、この決断に反対して離脱したメンバーもいませんでした。結果としては、これでよかったのだと思います。
(後編へ続く)
後編はコチラ→『シノアリス』などのヒットを連発するポケラボの制作哲学──”ファンを喜ばせるコンテンツを徹底的に作り込む”
テキスト:崎谷 実穂(Sakiya Miho)
新卒で入社した人材系企業でコピーライティングを、転職先の広告制作会社で著名人・タレントなどの取材記事を担当し、2012年に独立。ビジネス系の記事、書籍のライティングを中心に活動。趣味は将棋で、アニメ・マンガ(BL含む)もわりとよく観る&読む中途半端なオタク。
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