話題の『アズールレーン』アニメCM、手がけたのはサンライズだった! 明かされる制作秘話──「サンライズの作るTVアニメを見てみたい」と言ってもらえるクオリティに仕上げる意義
『アズールレーン』を運営するYostarの代表である李衡達氏と『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』のプロデューサーを務めるサンライズの谷口理氏による対談企画の後編。今回はサンライズが手がけた『アズールレーン』のアニメCMについて、制作エピソードを語っていただきました。
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▲写真左から、今回の対談の仕掛け人であるスワンプマン株式会社の横田雄士氏、Yostarの李衡達氏、サンライズの谷口理氏、アサツー ディ・ケイの村上絵美氏。
前編はこちら→『アズールレーン』李衡達×『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』谷口理対談──むせるほどに語りあうロボットアニメへの愛!

安藤武博(以下、安藤):前編では李さんに、ご自身のロボット愛について語っていただきました。後編ではアサツー ディ・ケイ(ADK)の村上絵美さんとスワンプマンの横田雄士さんにも参加していただき、サンライズさんの手がける『アズールレーン』のCMについてお聞かせいただきたいと思います。

一同:よろしくお願いします。

安藤:先ほどインタビュー前にお話をうかがっていたところ、村上さんが超合金の生みの親である村上克司さん(※)の娘さんだとお聞きしてビックリしました。

(※)村上克司……特撮・ロボットアニメなどで数多くのキャラクターデザインを手がけた工業デザイナー。「超合金」玩具の生みの親として知られる。

李衡達氏(以下、李):そうですね。わたしもとても驚きました。

安藤:今回、ロボットアニメを愛する李さんたちとのお仕事ということで、ADKさんのなかでは縁浅からぬ村上さんが担当することになったのでしょうか?

村上絵美氏(以下、村上):いえ、それがまったくの偶然なんですよ。ドラマ性がなくてすみません(苦笑)。

安藤:村上さんはお父様のお仕事に触れながら育ったのでしょうか?

村上:はい。新しいデザインをおこすたび、私たち家族に見せて意見を聞いていましたので。某キャラクターのデザインを見たときには皆で「尻尾の生える位置おかしくない?」など、ダメ出しをした覚えがあります(苦笑)。
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安藤:家族ならではのダメ出しですね。普通は巨匠にそんなこと言えませんよ(苦笑)。

谷口理氏(以下、谷口):ご実家には超合金がたくさんあるのでしょうか?

村上:そうですね。超合金も含めてものすごい数のおもちゃがあったので、とても幸せな子どもだったなぁと思います(笑)。

安藤:そんな村上さんも、今はお父さんと同じようにバンダイさんやサンライズさんとお仕事をされているというのがおもしろいですね。

村上:はい。バンダイさんとは、父が携わっていた『仮面ライダー』シリーズのお仕事もさせていただいているので、深いご縁を感じます。

谷口:「村上さん」ではなく、「絵美さん」と下の名前で呼ばれているのも、そこらへんに理由があるんでしょうね。

安藤:では、サンライズさんとのご縁はいつから?

村上:サンライズさんとは『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』からお仕事させていただいています。お台場の等身大ガンダムイベント『GREEN TOKYOガンダムプロジェクト』のグラフィックや、『TIGER & BUNNY』の各スポンサーさんの広告など、たくさんのお仕事を担当させていただきました。

谷口:お父さんに自分の仕事の成果を見せたりはされますか?

村上:思えば一度も見せたことがなかったですが(笑)、仕事の話はよくするので、そのときはいつもうれしそうに聞いてくれていますね。

安藤:では、そろそろ『アズールレーン』のCMについてお聞きします。『アズールレーン』は美少女が多く登場する作品で、ロボットものに強いサンライズとは水が合わないように思いきや……サンライズは『ラブライブ!』などの美少女モノも手がけているので、じつに素晴らしいクオリティに仕上げられていますよね。


李:そうなんです。サンライズさんにお願い出来て本当に感謝しています。

谷口:実際に手がけたのは『ラブライブ!』のチームではなく、我々『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』のチームだったので、流行の美少女が描けるのか不安もあったのですが……(汗)。完成した絵を見たら、その心配は杞憂でしたね。

安藤:実際に、どういった流れでサンライズさんにお願いすることになったのでしょうか?

横田雄士氏(以下、横田):昨年末にCMを展開していたのですが、今年の頭に次の展開についてどうしようかADKさんと相談していたとき、「まだまだゲームを知らない人も多いから、そういう人に届く戦略を」という結論になりました。昨年末は俳優の方を起用したクリエイティブだったのですが、今回はゲーム画面をしっかり見せつつ、『アズールレーン』の最大の魅力の一つでもある「キャラクター」をしっかりと見せるCMを作ることにしたんです。

その中の一つがサンライズさんにお願いさせていただいたクリエイティブですね。まさかサンライズさんに作っていただけるとはまったく想定していなかったので、非常にうれしかったことを覚えています。とても素敵な映像に仕上げていただいて、本当に感謝しております!

……あと、サンライズさんのお話とはズレてしまうのですが、村上さんと悪ふざけとも言えるクリエイティブを一本仕込んでいたお話をしてもいいでしょうか?(笑)サンライズさんに作っていただいたクリエイティブとは別パターンのもので、とある悪ふざけをしてまして……。
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村上:今回のクリエイティブ案を検討している当時、「クソアニメ」と呼ばれ話題となっていた某作品が放送されていまして、毎回ギリギリのパロディやオマージュネタなどを盛り込んで、さまざまな趣向でファンの方を楽しませていましたよね。そんななか、私もあのアニメにどハマりして、完全に影響を受けまして、この『アズールレーン』のCMでも、なにかそういったおもしろい趣向を取り入れられないかと考えて、李さんや横田さんと相談し、とあるクリエイティブを制作しました……(笑)。

横田:どんな内容かと言いますと、CMのクリエイティブの中の一つに、田中敦子さんを起用させていただいたものがあったのですが、そのクリエイティブの声を大塚明夫さんにまるっと差し替える、ということをやってしまいました(笑)。

田中敦子さんといえば草薙素子ですし、素子といえばバトーじゃないですか。そういった思いつきがつながって、大塚明夫さんにオファーすることになりました。ただ、地上波で流す勇気が出ず、YouTubeで公開させていただいたのですが、結果的に多くの人に見ていただけました。


李:自分も『攻殻機動隊』が大好きなので、この人選はイチファンとしてうれしかったです。

安藤:パロディはひよらずにやりきらないと、おもしろさが発揮されませんからね。

村上:そうですね。ファンの方にもそうでない方にも、どんなセリフなら楽しんでいただけるかをとにかく考えて、ギリギリのものを作りました。
安藤:パロディやオマージュを笑いに昇華させるのはたいへんですよね。本家から怒られかねないというリスクもありますし……。

谷口:サンライズも『銀魂』をやっているぐらいですから、パロディなどにかんしてはあまり人のことは言えないです(苦笑)。ちなみに、『アズールレーン』のCMについて、ご覧になった方の反応はいかがでしたか?

横田:おかげさまですごく好評でした。次回のハードルが少し上がってしまったかもしれません(笑)。
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李:中国でも好評のようです。ただ、あのCMをサンライズさんが作っているとはさすがに気付いてる方はいないかもしれませんので、今回のインタビューをご覧になった方はぜひあらためて映像を見ていただけるとうれしいですね。

横田:CMなのでクレジットがありませんしね。でも、サンライズさんっぽさを感じた方はもしかしたらいらっしゃるかもしれませんね(笑)。

村上:谷口さんとの最初の打ち合わせで、作画について「どの方向性で行きたいですか?」と相談されたときに、『ラブライブ!』のテイストでお願いすることもできたのですが、そこは李さんとも相談して、即決で『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』でお願いすることにしました。

李:やっぱりセイラさんですよ! 『THE ORIGIN』には戦闘のかっこよさもキャラクターの瑞々しさもありますから、ぜひそこを目指してもらいたかったんです。

谷口:ちなみに、CMのアニメはプロダクションI.G に仕上げてもらっているんですよ。サンライズとプロダクションI.Gの合作ともいえますね。
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安藤:それは考えられる限り最高のメンバーといえるのでは? スタッフリストが出ないのが残念です。

谷口:自分の手がける映像や作品には、必ずひとつこだわりを入れるのですが、今回は『甲鉄城のカバネリ』のように、キャラクターにチーク(化粧)を入れてもらいました。

安藤:大人っぽさや色気を出したかった?

谷口:そうですね。自分が口を出したのはそれぐらいで、あとはアニメーター にがんばってもらいました。着物など大変な衣装が多くて苦労もあったようですが、クオリティの高いものを仕上げてくれています。

村上:最初にラフを見たときの感動は忘れません。キャラクターそれぞれの魅力が存分に引き出されていてとにかく可愛いかったので、スタッフ全員一瞬で心を掴まれました。デフォルメの「おなかすいたー!」のカットも可愛すぎましたよね! 装備のディテールへのこだわりも素晴らしくて、完成に向けてのワクワク感は半端なかったです。アニメが仕上がったときは、「あのとき勇気を出してサンライズさんにお願いしてよかった!」と心から思いました。

谷口:スタッフには「ファンのみなさんに“このCMを制作した会社が手がけるTVアニメ版を観たくなった”と言われるものを作ろう」と伝えました。

李:自分の一存で決められることでは決してないですが、自分もサンライズさんが手がける『アズールレーン』のTVアニメを観てみたいです。
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安藤:では、もし実際にアニメ化するなら、李さんはどんな内容にしたいですか? やはりサンライズのロボットアニメらしく、最後は悲しい結末にしてほしいとか……(苦笑)。

李:いや、それは絶対に誰も望んでいないと思います。いっしょに戦っていくうちに仲間たちが理解しあい、最後はハッピーエンドで終わるものがいいですね。

谷口:なるほど。覚えておきます。

安藤:横田さんには、CMの次はこんな展開をやってみたい……といった企画があったりします?

横田:まだ具体的なものはありませんが、ファンがあってこそのコンテンツですから、自分たちも楽しめつつ独りよがりにならない企画がやりたいですね。

李:そうですね。ユーザーさんとのコミュニケーションは大事にしたいと思っています。自分個人としては、サンライズさんとのコラボやコミケへの出展など、ほぼすべての夢を叶えさせてもらいました。もうこのまま生涯を閉じても悔いはないぐらいです(笑)。

すでに幸せでいっぱいではありますが、今後とも『アズールレーン』がファンのみなさんに愛し続けてもらえるコンテンツにするため、より一層努力していきたいと思います。応援していただけるとうれしいです!

安藤:とてもおもしろいお話しがたくさん聞けました。みなさん、本日はどうもありがとうございました!
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テキスト:カワチ(Makoto Kawachi) 1981年生まれ。ライター。ビジュアルノベルに目がないと公言するが、本当は肌色が多ければなんでもいい系のビンビン♂ライター。女性声優とセクシー女優が大好き。
ツイッターアカウント→カワチ@kawapi