小倉:極端な話、ここを聴いてほしいっていうのは一本にできるじゃないですか。だから2パートあれば十分なんです。でも、そこをわかっているのは当時僕以外にはいなかったはずなので、そういう意味でもやってみたかったですね。
安藤:そして、次にアーケード版『奇々怪界』の話ですが、これはとくにお蔵入りの可能性などはなかったのでしょうか。
小倉:『奇々怪界』は普通に進行していたゲームです。企画の薮崎久也君から「遊園地みたいな曲にはしないでくれ」って依頼があって(笑)。彼は強気で来るタイプだったので、そういわれて「ああ、ならどうしようかな」って思っていたときに、「鬼太郎みたいな曲はどうだろう?」ってアイデアが生まれて。
僕としては、小夜ちゃんのキャラクター見たときに「ヒュ~ドロドロ……」というベタなものにはしたくないなっていう部分があって。鬼太郎の方向性なら、うまく仕上げられると思ったんです。そうしたら「鬼太郎をもっと怖くできますか?」って言われたもので、「だったらもっとムードを出せばいいのかな」と考え、楽曲を構築していきました。
安藤:昭和にアニメ放映された、1期や2期の鬼太郎のイメージでしょうか。第3期は1985年に始まっているようなので、『奇々怪界』の開発中と同じくらいの頃だと思うのですが。
小倉:正直、アニメはあまり興味がなかったので、3期の鬼太郎は見ていないですね。なので、最初のころの鬼太郎のイメージです。
安藤:『奇々怪界』はファミコン版に移植された時に伊藤美紀さんに「小夜(リトルナイト)カーニバル」というイメージソングを提供されていますよね。
小倉:イメージソングっていうか、勝手にイメージソングみたいになっちゃったんですよ。自分としてはアイドルの曲が作れるうれしさと、スケジュールが厳しくて辛いっていうのがちょうど半分半分でした。
安藤:あの曲は、普通のゲーム音楽と違うアプローチで作曲されたんですか? それともゲームの世界をそのまま歌にしたらどうなるのかな、っていうアプローチだったのでしょうか。
小倉:あまり変わらなかったと思いますけどね。伊藤美紀さんが『奇々怪界』のイメージキャラクターをやられていたので、その絡みで曲を作れることになり、その曲をシングルのB面に入れられるよってお話をいただいて。一応『奇々怪界』絡みっていうテーマだけがあったのですが、今思えば、もう少し時間をかけて作りたかったかもしれません。
(後編に続く)
後編はコチラ→『ダライアス』のサウンドは社内のサウンドチームでやりたかった
■ニューアルバム『O-parts』が好評発売中!
小倉久佳音画制作所の活動10周年を記念して今年2月にリリースされた企画アルバム。タイトー在籍時代の2000~2007年に制作された楽曲の中から未CD化となっていた楽曲を音源化し、全28曲が収録されている。