「センチメンタルグラフティ20周年スペシャルイベント~再会~」 キャストとスタッフ、ファンが一体となった最高のイベントの模様をレポート!
2019年1月19日(土)、『センチメンタルグラフティ20周年スペシャルイベント ~再会~』が開催されました。あれから約1週間……。20年の時を経て開いた「切なさの扉」の余韻にいまだ浸っている方、残念ながらイベントには参加できず映像DVDの完成を心待ちにされている方など、ファンの過ごし方は人それぞれだと思います。
「あなたに、会いたい…」

この一言で始まった、奇跡のこのイベント。ここではあらためて、あの伝説として語られるであろう一日について、ライターのカワチが主観を交えつつ振り返っていきたいと思います。

■そもそも『センチメンタルグラフティ』とはなんなのか?

今さら語るまでもありませんが、『センチメンタルグラフティ』は1998年1月22日に発売された恋愛シミュレーションゲームです。今回のイベントは、その20周年を記念したものとなっており、「出演声優陣がクラウドファンディングでファンに呼びかけ、多くの支持を集めたことで実現にこぎつけた」という、かつて類を見ない形で実現したものとなっています。
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そもそも『センチメンタルグラフティ』の発売当時は、現在のように「声優がユニットを組んでコンサートなどを行う」といった活動がまだまだ浸透していなかった時代。そんななかで、出演声優陣によるユニット「SGガールズ」が結成され、ゲーム発売前からラジオ放送やコンサートなどを行い、メディアミックスを大成功させた作品でした。

ストーリーは、高校3年になる春休み、これまで何度も転校を繰り返した主人公の元に差出人不明の「あなたに、会いたい……」と書かれた一通の手紙が届き、主人公はその手紙の送り主を探すため、思い出に残る12人の少女と再会していくというもの。反響を呼んで制作された続編の『2』では、そんな前作主人公の葬式の場面からオープニングがスタートすることで、大きな話題を呼びました。

(シシララTVでは過去にSGガールズのメンバーや、本作のプロデューサーである多部田俊雄さんをお招きしてのゲーム実況生放送も実施しているので、気になる方はぜひアーカイブをご覧ください)




■クラウドファンディング実現までの道のり

今回のクラウドファンディング企画、その発起人はほかならぬSGガールズのメンバーたちでした。具体的には、別タイトルの収録で多部田さんとお会いする機会のあった西口有香さんがイベントの開催を持ちかけ、当時からリーダー的な立ち位置であった豊嶋真千子さんが各メンバーにイベントにかける意思を確認し、メンバー間の意思疎通を図ったうえで企画がスタートしました。

その後、イベントに向けて資金を募ることなどが発表され、昨年10月11日に「CAMPFIRE」でクラウドファンディングが開始。スタートから約10分弱で目標金額の1000万円を到達し、最終的には目標の3倍を超える347%もの支持を集める結果に。作品に対する熱意と愛は、声優陣はもちろん当時のファンも変わらず持ち続けていることが証明されたといえるでしょう。

……ということで、お待たせしました。前置きが長くなりましたが、ここからはそんな『センチメンタルグラフティ』を愛する人たちにとって最高の1日になった当日の内容を振り返ります。イベントに参加できなかった方々も、少しでも当日の雰囲気を感じてもらえれば幸いです。
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■イベントはトークショーとコンサートの2部構成!
今回の20周年イベントは、お昼と夜の2部構成。第1部のトークショーと第2部のコンサートに分かれた内容となっていました。

“センチメンタルグラフティ20周年スペシャルイベント ~再会~”概要
開催日:1月19日
会場:東京・一ツ橋ホール
出演者(50音順/敬称略):
有島モユ(青二プロダクション)
岡田純子(フリー)
今野宏美(青二プロダクション)
鈴木麗子(ポンテ)
鈴木麻里子(青二プロダクション)
豊嶋真千子(青二プロダクション)
西口有香(TABプロダクション)
前田愛(青二プロダクション)
満仲由紀子(青二プロダクション)
米本千珠(青二プロダクション)


第1部はゲームのオープニングである「雲の向こう」の曲とともに、キャストたちの生アテレコからスタート。その後、色とりどりに振られるせつなさブレードに迎え入れられるようにSGガールズの面々が舞台に登場し、客席のボルテージは一気にマックスを振り切ることになりました。

SGガールズのみなさんからのご挨拶は、いずれもクラウドファンディングを通じて支えてくれたファンに対する愛と感謝に満ちており、なかには涙を隠しきれない方も……。これには思わずもらい泣きしたファンも少なくないのではないでしょうか? サプライズとして、今回イベントに参加できなかった保坂美由紀役の牧島有希さんからの音声メッセージもお披露目され、いよいよ忘れられないステージが始まることに……。

最初のコーナーは生アテレコ。シシララTVの実況をご覧になっていたみなさんは西口さんたちの芝居を放送でご覧になっていたと思いますが、改めて当時の声優陣が当時と変わらぬ声と当時と変わらぬ空気でヒロインを演じてくれました。まさにプロの仕事!

きっと、キャストのみなさんは今回のイベントで10年以上ぶりにヒロインを演じるはずなのに、完全に当時のままにキャラクターを憑依させていたように感じました。これこそが“芝居”なんでしょうね。
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じつは、えみるのアテレコ中に突然の映像トラブルがあったのですが、前田愛さんが素晴らしいアドリブで対応し、ファンの笑いを誘うといった、いかにも“生アテレコ”らしい局面も。また、有島モユさんと米本千珠さんはアテレコに『2』のイベントをチョイスしていたりと、愛に満ちたサプライズ感が満載でした。自分も『2』で千恵が前に進むことを決意するシーンは大好きなので、個人的にとてもうれしかったです。

なお、なぜか物販を仕切っていた本作のプロデューサーである多部田俊雄さんに、終演後にご挨拶した際に聞いたお話によると、この生アテレコの映像はビデオなどではなかったようですね。「じつは、20年前のCGデータをバックアップの山からサルベージして、某最新ゲーム機用にプログラミングしたものです。ちなみに映像が一瞬暗くなったのは、バグなどではなくて接触不良だったのですが……目撃していたら心臓が止まっていたかもしれません」とのことでした。

なんと多部田さん自身は、お忙しくて例のシーンはご覧になれなかったようですね……。これはむしろもったいない(笑)。

続いては事前に集められたファンからのお題を、SGガールズがイラストで伝言ゲームで伝えていくゲームコーナー。2チームに分かれての対決となったわけですが、それぞれのチームのリーダーである西口有香さんと鈴木麻里子さんの、お互いを煽り合う形でのイチャつきや(西口さんの煽りを受けた麻里子さんの「西口! 潰す!!」には爆笑)、罰ゲームで負けたほうのチームメンバーがいろいろなモノマネを披露したりと、舞台上も観客もとにかく笑いっぱなしでした。
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その後はSGガールズが準備をするあいだ、多部田さんと音楽プロデューサーの濱田智之さんによる裏話トークに。ファンに対して「当時は力が及ばず、ご迷惑をおかけしました」と謝罪する多部田さんに、観客席から暖かい言葉がかけられていたのはじつに印象的でした。当時、多部田さんがどんな気持ちで作品に向かい合っていたのかはシシララTVの生放送でも語られていたこともあって、ファンのみなさんも優しい気持ちでそれに応えたのではないでしょうか。

●シシララTV生放送レポート→『1』の主人公は大物政治家の孫? そして『2』で死んではいなかった!?

後半は衣装をチェンジして生バンドによる歌のコーナーへ。「約束」を全員で合唱し、次にクラウドファンディングのストレッチゴールで生まれた曲「未来」、『センチメンタルグラフティ2』の主題歌「たった一つの想い出」が披露されました。第1部はトークショウとアナウンスされていたため、楽曲の披露はうれしいサプライズ! とくに新曲の「未来」は明るくみんなで盛り上がれる曲だったので、ファンのテンションが大爆発したのは必然といえるでしょう。
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■第2部のコンサートも涙と笑顔で切なさ炸裂!

つづいて、夜に行われた第2部はコンサートということで、思い出の名曲たちが次々に披露されることに!

「20周年スペシャルコンサート」セットリスト
Long Distance call/鈴木麻里子
Two Dreams/米本千珠
日曜日の丘/岡田純子・有島モユ
故郷の風/有島モユ
振り向けば I Love You/鈴木麗子

青空/鈴木麻里子・前田愛・満仲由紀子
Crescent Moon/前田愛・鈴木麗子・西口有香
いつかきっと言えるはず/岡田純子・有島モユ・今野宏美
Girl Friends/鈴木麻里子・豊嶋真千子・米本千珠
Ribbon/前田愛
君がいれば…/満仲由紀子
水色の宝石/今野宏美
Only Lonely Star/西口有香
想い出を止めたままで…/豊嶋真千子
再会/SGガールズ
たった一つの思い出/SGガールズ

~アンコール~
未来/SGガールズ


ソロ曲だけではなく「センチメンタル グラフィティ Vocal Album 3×4 ~the other seasons~」に収録されたトリオ曲のコーナーがあったことには驚き! 今回参加できなかったメンバーのパートはほかのメンバーが歌っていたので、まさにこの日だけの限定感でした。
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ソロ曲に関しても語りたい感想はたくさんあるのですが(満仲由紀子さんが歌の途中でバランスを崩して尻もちを着き、「20年が出ちゃった」と可愛く告げるところなど)、とても言葉で伝えられそうもないので、ここでは泣く泣く省略しようと思います。DVDで映像をご覧になる方の楽しみを損ねないようにしたいですしね。

ただ、岡田純子さんが「日曜日の丘」を歌っているときに有島モユさんが合流してサビを合唱したり、西口有香さんが「幻の転校生クン」とファンを指さしたりと当時のファンを悶えさせる&泣かせる場面がたくさんあったことだけはお伝えしておきたい! DVD視聴時は、涙を拭くためのハンカチは必須かも……。
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純粋に驚いたのは、声優陣の声量。ロックテイストの曲を迫力満点に歌いこなす米本千珠さんをはじめ、当時と変わらぬパフォーマンスを発揮するみなさんのすごいこと、すごいこと……。イベントの準備などもあり忙しかったはずなのに、ここまで完璧なライブに仕上げてくるとは! みなさんがものすごい情熱と覚悟でこのイベントに臨んだことが垣間見えて、それこそがファンにとって何よりの喜びだったのではないでしょうか。
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今野宏美さんは曲の途中のMCで「デビュー作が『センチ』で本当に良かった」と感極まってファンに伝えていましたが、本当にみなさん『センチ』に対する愛が深いのだなと思いました。
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もちろん、それはファンだって同じ。イベント中のファンは、それぞれが幸せを噛み締めている雰囲気で、そこかしこで笑顔(そして感動の涙)がこぼれていました。CAMPFIREのキュレーターであるbambooさんがツイッターで語ったとおり、「演者だけじゃなく20年前の自分にも会いに来たんだよなぁ。」という感慨が、参加者の胸のなかにあったのではないでしょうか。


なにしろ今回のイベントは、クラウドファンディングの成果によって実現したものなので、ファンも一緒にこの“体験”の場を作り上げたといえるでしょう。クラウドファンディングは資金調達の手段でもありますが、何よりみんなで夢を叶えるものでもあります。このイベントをファンの力を結集して実現させることができたという事実は、どんなものにも変えられないはずですし、最高の思い出になったことでしょう。
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大成功となった今回のイベント、西口有香さんは「また20年後に!」という大きな夢を語りましたが、できればもう少し短いスパンにしてほしい……それだけが自分の望みです(苦笑)。

そして、イベントが終わって『センチ』ロスになっている方に朗報! ガンホー・オンライン・エンターテイメントから、「プレイステーションゲームアーカイブス」で『センチメンタルグラフティ~約束~』が配信されました。対応プラットフォームはPS3、PSvita、PSPで、価格は617円(税込)となっています。
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『センチメンタルグラフティ』の前日譚が語られるこのビジュアルノベル。「懐かしい!」という方も「じつは遊んだことがなかった……」という人も、ぜひプレイしてみてはいかがでしょうか? この約束が、新たな「未来」へとつながることを信じて……。

テキスト:カワチ(Makoto Kawachi) ビジュアルノベル好きのフリーライター。さまざまなメディアに記事を寄稿しており、マニアックな知識や小ネタなどで読者を唸らせている。深みのあるゲームが好きかと思えば、「エロければなんでもいい」と豪語する猛者。
ツイッターアカウント→カワチ@kawapi
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