「王道 オブ 王道」からファンタジーの礎を学ぶ! 『ダンジョンズ&ドラゴンズ ミスタラ英雄戦記』がスゴイ理由【オピオンのマルチプレイ主義!/第3回】
諸君、私だ。オピオンだ。じつは今、私は非常に困っている。なぜなら今回取り上げる『ダンジョンズ&ドラゴンズ ミスタラ英雄戦記』は、『ダンジョンズ&ドラゴンズ タワー オブ ドゥーム』とその続編である『ダンジョンズ&ドラゴンズ シャドー オーバー ミスタラ』の2作品が収録されているPlayStation3のタイトルだからだ。
察しがよい諸君ならお気づきかもしれないが、いつものように「今回は〇〇の世界にアクセスしている」と語り始めることができないわけだ。……よしよし、悩んでいるフリをしつつ自然な導入ができたぞ。できたはず。できたことにしよう。
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▲『シャドー オーバー ミスタラ』より。
第1回目のコラムはコチラ→オンラインマルチプレイは『ALIENATION』で優しさの時代へ
第2回目のコラムはコチラ→ポップでシビア、そして“クソゲー”!? 『Castle Crashers』の世界に飛び込もう!!

実際のところ、このコラムを読んでいる多くの方々は「ダンジョンズ&ドラゴンズ(以下、D&D)」についてすでにご存じのことだと思う。しかし、なかには「まったく知らない……」という人もいるかもしれない。だから、ここは私に少しだけ語らせてほしい。

「D&D」とは1974年にアメリカで生まれたテーブルトークRPG(以下、TRPG)。ファンタジーの原典である「指輪物語」に影響を受けており、「王道ファンタジー」、「中世ファンタジー」と言えば多くの人が思い浮かべるであろう、剣ありと魔法の世界を旅する作品だ。

なお、コンピュータRPGの祖と言われる『ウィザードリィ』は、その開発にあたって「D&D」を参考にしたといわれている。『ウィザードリィ』は言わずと知れたコンピュータRPGの金字塔。つまり「指輪物語」→「D&D」→『ウィザードリィ』という流れで、今世の中にあるコンピュータRPGの基礎が形作られたと言っても過言ではないのである。

そして、そんな「D&D」の世界を(TRPGではないものの)体験できるのが、今回のPS3版『ダンジョンズ&ドラゴンズ ミスタラ英雄戦記』なのだ。

なお、「D&D」には現在「クラシックD&D」と「アドバンスドD&D」という、2つの異なるルールの作品が存在。この『ミスタラ英雄戦記』は、前者のルールをベースに作られている(参考までに『ウィザードリィ』は後者をもとに作られている)。そのため、『ウィザードリィ』しか知らない人には違和感を覚える点があるかもしれないが、「原点は同じである」ということだけは覚えておいてもらいたい。

■ベルトスクロールアクションとして描かれるTRPGらしさ

さて、本作の世界で諸君たちの分身となるのは、王道ファンタジーでいうところの冒険者。以下にその職業の一覧を紹介する。
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▲『タワー オブ ドゥーム』より。
●『タワー オブ ドゥーム』、『シャドー オーバー ミスタラ』の両方に登場する職業

・ファイター:魔法こそ使えないものの、高いHPと装備できる武器の豊富さが魅力。見た目は20代を思わせる男性。

・エルフ:ファイターよりもHPや装備できる武器の種類に劣るが、魔法による攻撃や補助を行える剣士。見た目だけは10代の少女だが、長命の種族であるため実年齢は……。

・クレリック:戒律により刃物をいっさい使えないが、回復を主体とした魔法を使いこなす。「回復はかわいい女の子」という軟弱な思想を打ち砕くヒゲのおっさんとハゲのおっさん。

・ドワーフ:小柄だがパワフルな職業。その身長ゆえ、打点の高い攻撃に当たらないこともある。エルフほどではないが、こちらも長命。

●『シャドー オーバー ミスタラ』でのみ選べる職業

・シーフ:盾が装備できず防御力も低いが、身のこなしの軽い職業。敵に体当たりすると、アイテムなどを盗むことができる。肌の露出がやや多いうら若き女性だが、開発途中までは男性として描かれていたらしい。

・マジックユーザー:他作品ではソーサラーやメイジと言った言葉で呼ばれる、攻撃魔法を得意とする職業。開発途中まで女性だったが、西洋では女性の魔法使いに魔女などの悪いイメージがあることからシーフと性別が入れ替わった。
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▲『シャドー オーバー ミスタラ』より。
この6職業が諸君たちの分身だ。ここで「エルフやドワーフは種族ではないのか?」という疑問を抱いた諸君は、きっとファンタジー好きなのであろう、さすがの着眼点を持っている。しかし「クラシックD&D」では、エルフやドワーフはあくまで職業の1つ。この世界でも、もちろんそこは踏襲されている。どの職業も一長一短。いずれを選んでも、諸君の前には理想のファンタジー世界が広がっていることだろう。
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▲『タワー オブ ドゥーム』より。
ただ、ひとつ気を付けてほしいことがある。この世界では、通常のベルトスクロールアクション以上に、職業によって“できることとできないこと”がはっきりしているのだ。

例えば、諸君が目の前の宝箱を開けた結果、ダガーが地面に落ちたとしよう。諸君の職業がファイターやエルフなどであれば、なんの問題もなくこのダガーを拾い、投てき武器として使用できる。だが、刃物を使うことを禁じられているクレリックであった場合はどうなるか。答えは当然、金属製のダガーは拾うことさえできないわけだ。

さらに上記のとおり、魔法を扱えるのはエルフ、クレリック、マジックユーザーの3職業のみ。使える魔法も一部同じものがあるものの、それぞれ異なっている。ファンタジーの世界では当たり前の法則だが、ベルトスクロールアクションの世界、さらにいえば今どきのゲームとしては、この制限はなかなかに珍しい。
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▲『タワー オブ ドゥーム』より。
だがこれは、この世界があくまでTRPGを元にしているため。TRPG、なかでも複数のプレイヤーが協力するタイプのものは、お互いがお互いを補い合うことで物語が一層盛り上がるそろもの。そのため、「クラシックD&D」では各職業に欠点があり、それをもとにした本作の世界でも、どの職業も一定の不自由さがある。

この不自由、1人でこの世界を楽しむときにはやや不満を感じるかもしれない。だが、不自由があるからこそ「クラシックD&D」同様、この世界でのマルチプレイは大きな輝きを放つのだ。
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▲『タワー オブ ドゥーム』より。
ファイターやドワーフが群れなすモンスターを倒し、強大なボス相手にはマジックユーザーの魔法が唸りを上げる。エルフは両者のサポートにとどまらない活躍をし、傷ついた体はクレリックが癒す。そして、シーフは戦いのなか冒険に重要となるアイテムやお金を敵から奪い取る……。これこそ、ファンタジー世界の冒険の理想と言えるのではなかろうか。

ん、直前の写真にロゴが出ていた? それはデモシーンというか……今回もボッチで撮影したというか……画像はイメージですというやつだ!

さて、気を取り直して、もう1つのTRPGらしさにも触れておこう。冒険者たちの旅路にはさまざまな選択が待っており、冒険はいくつかに枝分かれしていく。ルート分岐といえばわかりやすく、よくあるものに聞こえるはずだ。だが、この分岐が物語の一部としてより深く丁寧に描かれているのも、この世界がTRPGをもとにしているからだろう。
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▲『シャドー オーバー ミスタラ』より。
モンスターに襲われた村を自ら助けに向かうのか、それとも別の誰かに助けを求めに向かうか。ある場所を目的理とする場合、そこまで陸路で向かうのか、はたまた川を下るのか。立ち去れと繰り返す強大な力を持つ者に従うのか、逆らうのか。こういった物語としての選択があるからこそ、この世界での旅はただのベルトスクロールアクションではなく、1つの冒険譚として他に類を見ない輝きを放つのである。 

■ゲーム世界の絶滅危惧種・ビホルダーが登場!

冒険者となって巡ることになるこの世界。当然、諸君の前にさまざまなモンスターが立ちはだかる。ゴブリンやコボルト、マンティコアなどファンタジー世界に触れたことがある諸君には、もはやおなじみの面々だろう。
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▲『タワー オブ ドゥーム』より。
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▲『シャドー オーバー ミスタラ』より。
しかし、そんなファンタジー世界を冒険してきた諸君でも、聞いたことはあれど、実際に出会ったことがある人は稀なのではなかろうか……このビホルダーというモンスターは。

ビホルダーとは、球体型の体に巨大な目と口を備えたモンスター。さまざまな魔法を操る一方で、その視線で見つめられると冒険者の魔法はかき消される。はっきり言えば非常に手ごわいモンスターだ。
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▲『シャドー オーバー ミスタラ』より。
だが、その手ごわさ以上に、ビホルダーはデリケートなモンスターだ。もしも君がマンガ家やライトノベル作家として王道ファンタジーを描こうとしていても、このモンスターをうかつに登場させてはいけない。ビホルダーは「D&D」の世界で生まれたこのモンスターであると同時に、ほかの世界に登場することは(基本的に)許されていないのだから。

過去にはビホルダーを登場させた際、その生みの親の怒りを買ってか、ビホルダーに腕と足を生やしたうえに鈴木土下座ェ門と改名されたキャラもいる。いささか虚実入り混じる部分もあるものの、これは紛れもなく本当の出来事。鈴木土下座ェ門というワードで、目の前の箱なりなんなりで調べれば、私がウソをついていないことがわかるはずだ。

そんなビホルダーと出会えるのがこの世界の大きな魅力。ぜひ挑んで一度はボコボコにされてほしい。

■凶悪なモンスターに挑む最強の武器、それは火!!

さて、最後にこの世界に触れてみようと思った諸君に少しアドバイスをしよう。手ごわいモンスターが多々現れるこの世界で生き延びるカギ。それは火だ。魔法に頼らず、オイル袋を投げて点火するものであればなおよい。

例えば『タワー オブ ドゥーム』に現れるトロール。このモンスターは強靭な生命力を持っており、一度力尽きてもたやすく復活してしまう。だが、火でトドメをさせばその体は二度と再生することはない。もっともこの場合は火でトドメをさせなかったとしても、知識あるものが助けてくれるだろう。
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▲『タワー オブ ドゥーム』より。
ほかにも、モンスターの出現位置を覚えてあらかじめオイルを投げておく、強敵がダウンしたら起き上がりに合わせてオイルを投げておくなど使い方は多彩だ。

そして、ある意味でよりオイルが強力なのが『シャドー オーバー ミスタラ』。この世界を旅した多くの冒険者は強敵がダウンしたらその体に重なるようにオイルを撒いてから追い打ちを仕掛けている。なぜなら……
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▲『シャドー オーバー ミスタラ』より。
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▲『シャドー オーバー ミスタラ』より。
そう! 追い打ちと同時に相手を燃え上がるからだ。燃え上がってダウンした相手に、さらにオイルを撒いて追い打ちを仕掛ければ、その対象は再度燃え上がることに。……なんだと? ハメだと? これは冒険者の知恵というやつだよ。実際、持てるオイルの数には限りがあるのでダウン→オイル→追い打ち→ダウン……という流れを無限に続けることはできない。あくまで戦術の範疇と、わたしは考える。ヒャッハー!!

なお、『シャドー オーバー ミスタラ』でのみ手に入る「大オイル」は一味違う。キメラというモンスターを相手にしたケースを見てみよう。まずキメラが現れたら、なんとかダウンさせる。 そして大オイルをテンポよく撒く。すると……
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▲『シャドー オーバー ミスタラ』より。
体力ゲージの減少が追い付かない速度で、キメラは燃え尽きる! 本来大オイルによる攻撃が当たった敵は、ほぼすべての攻撃での追撃が行えない燃焼エフェクトが発生するのだが、ダウン中の敵は燃焼エフェクトが発生しないため複数回ヒットしないはずの大オイルが……といった話はできるが覚える必要はない。ダウンさせる→大オイルを撒く→とんでもないことになる。これだけ覚えておけば、諸君の冒険の達成率は飛躍的に上昇するだろう。これはマジレスってやつだ。

困ったらオイルの入った袋を使え!

私からこの世界の新人諸君に送るアドバイスだと思ってほしい。きっと世の多くの先達も、この意見に同意してくれるものと信じている。

さて、ここまで本作について語ってきたが、諸君の一部は疑問に思うことだろう。「まずは『タワー オブ ドゥーム』をクリアしてから『シャドー オーバー ミスタラ』に手を出すべきなのか?」と。冒頭で語ったとおり、『シャドー オーバー ミスタラ』は『タワー オブ ドゥーム』の続編。物語も一応は続いている。

だが、私は『シャドー オーバー ミスタラ』に触れた当時『タワー オブ ドゥーム』を知らず、あとから触れた結果「あの会話はそういう意味だったのか」だとか「『タワー オブ ドゥーム』のマンティコアやべぇ」といった形で2つの世界の違いを楽しめた。
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そして、最も大事なのは『タワー オブ ドゥーム』の旅路は『シャドー オーバー ミスタラ』の旅路よりも厳しいということ。『シャドー オーバー ミスタラ』では、小物中の小物であるコボルトが、『タワー オブ ドゥーム』でこちらのカウンターを取るように素早くダガーを突き出してきたときには、正直なところ戦慄した。

勝手な想像だが、『タワー オブ ドゥーム』の冒険者は『シャドー オーバー ミスタラ』よりも前の姿。当然レベルも低いため、同じモンスターの攻撃であってもより手ごわく感じられるのだろう。

末筆ながら、物語を重視するなら『タワー オブ ドゥーム』から、モンスターと戦う気持ちよさを重視するなら『シャドー オーバー ミスタラ』から触れることをオススメしておきたい。

テキスト:オピオン(@ophion)ゲームが好きと言いつつ、プレイしているのはアーケードとPS4のタイトルばかり。Nintendo Switchが手に入ったら『わくわく7』専用機になる予定。

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