都会の喧騒から少し離れたところにひっそりと佇む"ギャルゲーBAR☆カワチ"。ここは、日々繰り広げられるコンクリートジャングルでの生存戦争に負けそうになっているメンズたちのピュアハートを、ゲーム好きのマスターが「ギャルゲートーク」で癒してくれるという、シシララTVオススメのゲームBARなのだ……。
そんな体裁でお送りするギャルゲーコラム。さて、気になる第4回目のお客様の悩みと、その痛みを癒してくれるゲームとは……?
■“そこに住んでいる空気”とはこのこと……没入感はVRの比ではない!
カワチ:どうした、死にそうな顔して。……やれやれ。最近うちに来る男性客はそんなヤツばっかりだな(笑)。
――そうなんですか? でもそんな顔にもなりますよ(チラッチラッ)。
カワチ:わかったわかった。そんなすがるような顔とかしなくても、悩みがあるなら聞いてやるよ。
――うぅ。ありがとうございます。じつは自分、地方に飛ばされることになっちゃって……。まぁ半年間のヘルプなんで、終わったらすぐ戻ってくる予定なんですけど。
カワチ:おう……ってそれだけか? 半年間の転勤ぐらいで大げさすぎだろ。
――そんなことないですよ! ずっと都会で暮らしてきた自分には、田舎暮らしなんて出来るとは思えません。せっかくできた彼女にも会えなくなるし……はぁ、会社辞めちゃおうかな。
カワチ:おいおい、落ち着け。これをプレイしてみれば、ネガティブな考えも変わるかもしれないぞ?
カワチ:あぁ。1999年にリバーヒルソフトから発売された、プレイステーション用のゲームだな。
――へぇ~。でも『2』ってことは続編じゃないですか。いきなり遊んでもわからないんじゃ……。
カワチ:その心配はもっともだ。確かに『2』は前作と同じ時期、同じ場所を舞台にしているから、内容的にリンクしている箇所も多い。とはいえ、前作をプレイしてなくても問題なく楽しめるようになっているから安心しろ。
――そうなんですか……。これ、どんな内容なんです?
カワチ:導入部分だけ言ってしまうと、大学に合格した主人公が、桜咲町という街にある「緋色館」という共同アパートに引っ越してきたところから物語がはじまる、いわゆる青春ストーリーさ。主人公はそのアパートの住人や、街に住む人々と交流を深めていくことになる。
――なるほど。新しい街に引っ越すってところは、ある意味自分に似てますけど……。
カワチ:ちなみに、桜咲町はおそらく関東圏にあるような描かれた方をしているが、そのモデルになっている街は、なんと福岡だったりするんだ。ゲーム中に出てくる飲み屋「日吉丸」なんかは、実際に店舗もあるらしくてな。いつか、そこのマスターと飲み明かすのが俺の夢でもある……。
カワチ:開発元のリバーヒルソフトが九州の会社だから、モデルにしやすかったんだろうな。ちなみに前作はシミュレーションゲームだったんだが、本作はテキストアドベンチャーになっている。
――アドベンチャー……テキストをずっと読むだけのやつですよね。ゲームとしては簡単になったってことですか?
カワチ:まぁな。ただ、物語に没頭できるという意味では、アドベンチャー形式になったことは正解だと思っている。とにかく『リフラブ2』は「今、自分はこの街に住んでいる」という気持ちにさせてくれるというか、世界に没入させるのがうまいんだよ。その特性を生かすためには、むしろアドベンチャーになるべきだったとさえ言えるね。たとえば、これをみてくれ。
カワチ:緋色館の中だよ。こうやって主観視点で、自由に移動できるんだ。
カワチ:だろ? ほかにも、住人が主人公の部屋におすそ分けを持ってきてくれるなど、細かい部分もしっかり作り込まれていて、感情移入しやすいんだ。ディレクターでありシナリオを手掛けた堀幸司さんは、CEDEC 2007の「
アドベンチャーゲームの復権(記事引用:4Gamer)」というセッションで「そこに世界がある/空気があるという感覚を目指した」と発表されていたんだが……。実際にプレイしてみれば、「確かに!」と納得してしまうクオリティなのさ。
――なるほど。しっかりとこだわりがあったからこそ、ジャンルがアドベンチャーゲームに変更になったんですね。
カワチ:当然! 俺もたくさんのギャルゲーを遊んできているつもりだが、『リフレインラブ2』はそのなかでもトップレベルの傑作だよ。舞台となる桜咲町はもちろん、そこに住むキャラクターたちがとにかく魅力的だからね。
――主人公が暮らす緋色館って共同アパートなんですよね? いったいどんな人たちが住んでいるんですか? やっぱり美男美女ばっかりで『テラスハウス』みたいな展開になるんですか?
カワチ:『テラスハウス』って感じではないねぇ(笑)。アパートの住人同士は恋愛よりも仲間って感じだし、雰囲気としてはどちらかというと『めぞん一刻』に近いかな。
カワチ:そういうリアクションになるよな、イマドキの20代なら。まぁそれは置いておいて話を続けると、「緋色館」には主人公のほかに5人の住人がいる。女性3人と男性2人だな。
――主人公も入れて男3の女3ってことですか。いいバランスですね。
カワチ:1人ずつ紹介すると、まずは矢加部陽子。主人公と同じタイミングで緋色館に入居してくる大学生の女の子だ。朗らかで人当たりのいい、いわゆる正ヒロインポジションの女の子だな。声は皆口裕子さん。
カワチ:バカ野郎! それをいっちゃあおしまいだろ。そんなん下手すりゃ昔のギャルゲー全般に当てはまっちまうぞ! まぁ、着替えがないからといって高校の体操着&ブルマを着る陽子さんはちょっとどうかと思うけどな……。
――女子大生がブルマ……じつは嫌いじゃないかもですけど……。
カワチ:お前とはうまい酒が飲めそうだ(笑)。続いてはマリー・ケンジット。彼女は金髪碧眼のアメリカ人だけど、日本育ちのために英語は話せない。明るく気立てのいいムードメーカーで、居酒屋で自然に豚足を頼んだりとか、飾らないところがかわいいんだよ。
カワチ:コラーゲンたっぷりだから、見た目に反してじつは好きって女性も少なくないのかもな。そんな彼女だが、両親を早くに亡くしてしまっていて、老人ホームの住人に育てられたという過去を持っている。声は大塚瑞恵(現:大塚みずえ)さんが担当しているんだが、これ以上ないというぐらいのハマリ役なんだよ。セリフのニュアンスがじつに素晴らしいから、ちょっと聞いてみ?
カワチ:続いて三沢はるか。女子高の数学教師で、「ドリキンおみつ」と呼ばれるほどスゴい運転をすることで知られている。彼女が運転する車に乗った陽子さんが、思わず「おかーーーさーーーーーーん!」と悲鳴をあげてしまうほどにな……。「教師」という肩書きだけを聞くとしっかり者に思えるかもしれないが、その実、流されやすかったり抜けているところも多い。まぁ、そこがかわいかったりする女性さ。声優は中村尚子さんだ。
――マジすか、女教師と同じアパートに住めるなんて主人公がうらやましい!
カワチ:ふふ……はるかが気に入ったか? そうはいっても、彼女のシナリオは相当な修羅場が待っているから覚悟しておいたほうがいいぞ。
カワチ:続いて男性陣も紹介しておくか。宮本充さんが声を担当する大企業に勤めるサラリーマンの秋吉倫太郎と、上田祐司(現・うえだゆうじ)さんが演じる大学浪人の宮之陣。彼らがとてもいい味を出しているおかげで、『リフラブ2』は従来のギャルゲーから一線を画したクオリティに仕上がっている思う。この2人がいることで、すごく物語がリアルになるんだよね。
カワチ:ああ。ただ、陣役のうえださんは彼にあまり感情移入できなかったみたいだけどな。「リフレインラブ2設定資料集」のアンケートで、演じたキャラクターの印象や感想について「特別リアルでも、特別作りこまれてもいないので、今ひとつ芯のはっきり受け取れない人物でした」と答えているくらいだし。その他の質問を見ても、まぁ、あまり印象はよくなさそうなんだよね……。
カワチ:まぁ、陣はキャラクターが固まりきれていないように見える部分もあるから、ある意味当然かもしれん。ただ、その後『リフラブ2』スタッフは、カウンターとばかりに陣を主役に据えたドラマCDを作るんだよ。しかも、その出来がめちゃくちゃいいというね……。このドラマCDの存在により、うえださんの陣に対する印象が大きく変わった可能性もある。それほどの出来栄え……これがプロ対プロの応酬なんだなって思ったよ。
カワチ:……ちなみにゲームの2周目からは、7人目の住人と出会うこともできるぞ。緋色館の住人の誰もが気付かなかったんだけど、じつは「開かずの間」にもう1人女の子が住んでいたんだよね。その名も翁薫。演じているのは岩男潤子さんだ。
カワチ:アリなんだなぁ。じつは、結構伏線も張られているんだ。たとえば緋色館が停電になるイベントがあるんだけど、ピカッと雷が光ったときに彼女の影が映っていたりとかね。
カワチ:というわけで、主要人物を簡単に説明したわけだけど、物語を進めていけば、それぞれが確固たる価値観や行動理念を持っているのがものすごくよくわかるんだ。人生観というのかな……。主人公を引き立たせるためだったり、物語を盛り上げるためだけに存在しているような、打算で動くキャラなんて1人もいない。“設定”という言葉では収まりきれないキャラクターたちだから、ぜひゲームのなかで出会ってみてほしい。きっとエンディングで表示される「Time passes and things begin. but in your heart the Hiiro-kan lives on.」の文字に泣くと思うぜ……。
──なるほど。大切な仲間たちと離れ離れになって、どれだけ時が経過しても、緋色館での思い出は常に主人公の心の中に在り続ける……と。
カワチ:俺は人生で辛いことに直面したとき、いつもこの言葉と緋色館の仲間たちとの思い出を胸に頑張っているよ。
■山奥の工場に異動させられたOL・七瀬ちづるとの交流で教えてもらえる“心の距離”の大切さ
カワチ:そして、ここで謝っておきたいことがある。じつは、お前さんにプレイしてもらいたいストーリーは、緋色館のメンバーのものではなかったりするんだよね(苦笑)。
――えぇ!? ここまでアツく緋色館メンバーの魅力を語っておいて、何を言ってるんですか?
カワチ:いやいやいや、お前のほうこそ何を言ってるんだよ。このゲームは緋色館のメンバーだけじゃなくて、桜咲町に住んでいるほかの女の子たちと仲良くなることもできるんだぞ。出会いは多いほうがいいに決まってるだろうが!
カワチ:ちなみに、お前にぜひ知ってほしい女の子は七瀬ちづるっていうんだけど。声を担当しているのは、おもに洋画の吹き替えなんかで活躍されている亀井芳子さん。アニメとかだと『飛べ!イサミ』の月影トシ役や『幽☆遊☆白書』の天沼月人役なんかが有名かな。
――へぇ~、七瀬ちづるですか。でも、なんでまたこの子にスポットを当てたんです?
カワチ:彼女は倫太郎と同じ高宮グループに務めるOLなんだけど、途中で田舎に転勤することになってしまってな。
――転勤……僕と同じじゃないですか。でも、ギャルゲーなのに途中で離れ離れになっちゃうとか、いったいどうなるんです? 新幹線で会いに行くとか……。
カワチ:いや、基本的に彼女とは、文通するだけで会うことはできない(笑)。斬新だろ? というのも『リフラブ2』の緋色館以外のヒロインたちは、少し変わったシナリオも多くてね。こう……年上のマダムなんかもいるしさ(笑)。
カワチ:まぁ、マダムが気になるなら自分で遊んでみてもらうとして、話をちづるさんに戻そう。彼女との物語は、痴漢に襲われそうになっているちづるさんを主人公が救うところから始まるんだ。
――なかなかドラマチック……というか、またすごい出会い方もあるもんですね。
カワチ:まぁ、変態に後を付けられていたっぽいところを見かけて、一緒に安全なところまで歩いてあげるだけだから、そこまで大げさなものでもないんだが(笑)。とはいえ、そんな彼女は交流を重ねていくうちに、仕事をサボりがちなテキトー人間だということがわかってくる。
――え、そうなんですか? なんかヒロインっぽくない(笑)。
カワチ:デートにいくたびに「隠れてください! 今日はサボりなんですけど、会社の人間がそばにいるんです!!」と言われるぞ(笑)。でも、そんな姿がかわいくて憎めないんだよな。ずっと敬語でしゃべるのも、かえってOL感が出ていてかわいいし。
――どうでもいいですけど、かわいいって2回も言っちゃってますよ!
カワチ:大事なことだからな……コホン。まぁ、俺が学生のときに『リフラブ2』をプレイしたときは、OLと付き合うなんていう概念そのものが頭の中になかったから、ものっすごく興奮したものさ。どこのトレンディドラマだよってな!
――普通はなかなか考えられないシチュエーションですよね。
カワチ:彼女の同僚たちにも、その関係をからかわれたりしてな。なんか大人の世界に入り込んだような不思議な感覚だった。
カワチ:基本的には少女のような天真爛漫な女性なんだけど、ところどころで年上であることや社会人であることを意識させられるんだよな。……そこが良い! そこが良いんだよ!!
――また2回言ってるよ……完全に惚れてますねぇ(笑)。
カワチ:じつは俺、『リフラブ2』で最初に結ばれたのはこのちづるさんなんだよね。だから、やっぱり想い入れが強いのかもしれない。正直、これから初めてプレイするなら緋色館のメンバーのシナリオをプレイしたほうが入り込みやすいかもしれないけどな。やっぱりメインだけあってストーリーも凝っているし。
カワチ:とはいえ、俺がもっとも想い入れが強いのはちづるさんなんだなぁ……。青髪ショートカットというのにピンときたのかもしれない。あのころは綾波レイが大好きでさ……。
カワチ:ちゃんと話すから聞いてくれよ! ……ただな、そんな彼女もさっき言ったとおり、物語の途中で山奥の工場に転勤させられちゃうのさ。『リフラブ2』は前半と後半に物語が分かれているんだけど、後半がはじまるやいなや、彼女がいなくなってしまってポカーンとしたもんだよ。これが世に言う「ちづロス」だな。
――そんなシンドロームがあるんですか? やっぱり仕事をサボっていたのが原因なんでしょうね。
カワチ:いや、本人は左遷だと思っているけど、本当は優秀だから栄転させられただけなんだよ。人を上辺だけで判断するなということだな。まぁ当然、本人にしてみればいきなり「田舎で働け」と言われるわけで、うまくやっていけるか不安になるわけだが。うん、どこかの誰かさんのようにな。
カワチ:最初はものすごく嫌がっていたけど、しっかり順応していくよ。着くなり「オオカミが出た」とか言って帰りたがったりもするんだけど、その後の手紙では「周りの人がいい人ばかりで過ごしやすい」とか「景色が綺麗で驚いた」とか、前向きな報告をしてくるしな。もちろん、主人公との手紙のやり取りが心の支えになっているのもポイントだ。
――えぇー。そんなにうまくいきますかね!? 旅行だったら楽しいけど、転勤ですよ!? 今まで頑張ってきたのに、またイチからやり直しだなんて……。それに恋人と離れ離れにもなるわけだし。僕だったら耐えられない。
カワチ:転勤するって言っても、それまでの全部がなくなるわけじゃないだろう? 恋人だってわかってくれるさ。『リフラブ2』の時代は文通だったけど、今ならメールだって、それこそLINEとかSNSだってあるじゃないか。
――それでも実際に彼女と会えなくなるのは嫌なんですよ。もしも浮気とかされたら……。
カワチ:遠距離恋愛だからって、すぐに浮気とかを考えるのは浅はかすぎるだろう。ちづるさんはクリスマスイヴに桜崎町に1日だけ帰ってきて、主人公にこう言うぞ。「愛してます… 次に会うときは…きっと、もっと愛してます」ってな。
カワチ:これは主人公が、ちづるさんに愛し続けてもらえるよう努力し続けた結果といえるだろう。物理的距離が離れてしまっても……心の距離さえ近ければなんの問題もないってことを、ちづるさんは教えてくれるんだよ。お前の転勤はすでに決定事項なんだろう? だったらちゃんとそれを受け止めて、それでも彼女に愛し続けてもらえるよう、今まで以上に頑張らないでどうするんだ?
――……たしかに、自分が努力することをあきらめたら、そこですべて終わっちゃいますよね……。
カワチ:お前も彼女のことをしっかり信じてやれ。辛いことだってあるだろうけど、それでも彼女を好きでいられる、そんな自分自身も信じてやれ。遠距離恋愛にはなったけど、より一層彼女を惚れさせてやる! くらいの気概はあるだろう?
――自分、なんだか大切なことを思い出した気がします。転勤先でがんばってみようと思います!
カワチ:おう。向こうで落ち着いたら俺にも手紙くれよな。
テキスト:カワチ(Makoto Kawachi) 1981年生まれ。ライター。ビジュアルノベルに目がないと公言するが、本当は肌色が多けれななんでもいい系のビンビン♂ライター。女性声優とセクシー女優が大好き。
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