【ダブルキャスト】心に闇を抱えたボクッ娘が教えてくれた家族の絆【ギャルゲーBAR☆カワチ_第2回】
都会の喧騒から少し離れたところにひっそりと佇む"ギャルゲーBAR☆カワチ"。ここは、日々繰り広げられるコンクリートジャングルでの生存戦争に負けそうになっているメンズたちのピュアハートを、ゲーム好きのマスターが「ギャルゲートーク」で癒してくれるという、シシララTVオススメのゲームBARなのだ……。
早くも話題沸騰のギャルゲーコラム。気になる第2回のお客様の悩みと、その痛みを癒してくれるゲームとは……?
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■明けてごらん夏のドア! 多くの人にトラウマを植え付けた『ダブルキャスト』
──(カランカラン)ちょっと聞いてよ! マスター!!

カワチ:なんだなんだ、いきなり。まぁ、ひとまず座りなよ。

──カルーア・ミルクちょうだい。それでね、お姉ちゃんったらヒドいんだよ!! わたしが一人暮らしを始めたいって言ってるのに、まだ早いって反対してくるの! もう子どもじゃないっつーの!!

カワチ:おおう……恋人とケンカでもしたのかと思ったら、なんだよ姉妹ゲンカか。

──あんな分からず屋のお姉ちゃんなんて、知らない!

カワチ:やれやれ……頭に血が上った状態でお酒を飲んでもロクなことにはならないぞ? これでもプレイして頭を冷やすといい。

──なにこのゲーム? 『ダブルキャスト』?

カワチ:そう。「みるドラマから、やるドラマへ。」のキャッチコピーが秀逸な、PlayStationで発売された『やるドラ』シリーズの1作目さ。

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──「やるドラマ」? ……どういうこと?

カワチ:『やるドラ』はフルボイス、フルアニメーションで展開したアドベンチャーゲームシリーズさ。もちろん、キャラクターのモーションが動くとか、そういうちゃちなレベルじゃない。要所にキレイなアニメーション演出が盛り込まれていて、まるでアニメ映画やOVAを見ているような気分になれる、そりゃあ壮大な作品群の総称だよ。まぁ、どの作品もCD2枚組だったから入れ替えが面倒くさいんだがな(笑)。
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──でも、見るだけでしょ? それって普通のゲームじゃない? なーんもやってないじゃん!

カワチ:まぁ落ち着け。『やるドラ』シリーズは要所に選択肢が用意されていて、その選択肢を選ぶことで内容や結末が変化していくんだ。自分の行動によってドラマが展開していく……それもアニメーションによって。これにより、プレイヤーはこれまでのアドベンチャーゲームにありがちな「ドラマを見る」って形から一歩進んで、「自分がドラマに参加する」感覚を味わえたわけさ。
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カワチ:ちなみに俺は、この『ダブルキャスト』というゲームを、ヒロインの“赤坂美月”という複雑なキャラクターを選択肢によって多角的に理解していくゲームだと思っている。重厚なストーリーや設定がシステムに結び付いている……だから奥が深いのさ。

──ふ~ん。「やるドラ」の演出がちょっと変わった感じってことはわかったけど。それと姉妹ゲンカとなんの関係があるのかは、イマイチわかんない。

カワチ:じゃあ、さっき話したヒロインの美月に、キミと同じように姉がいる……いや、いたっていったらどうだ?

──え? いた……って、なんで過去形?

カワチ:順を追って話そう。『ダブルキャスト』はもともと『フォーシーズンズメモリー』という1本のソフトとして開発されていたゲームが、容量が増えた関係で4分割されて販売されたという経緯がある。

──ほかにも3本の「やるドラ」があるってことだよね? なんとなく、さっきの会話で察してたよ。

カワチ:そういうことだな。「やるドラ」シリーズには夏をテーマにした『ダブルキャスト』以外に、春の『季節を抱きしめて』、秋の『サンパギータ』、冬の『雪割りの花』がある。もともとは『季節を抱きしめて』が最初に発売される予定だったようだが、延期などの関係で、『ダブルキャスト』がシリーズ処女作となった。まぁ、ある意味『ダブルキャスト』はものすごくキャッチーな作品だっただけに、この作品から「やるドラ」シリーズがスタートしたことは、結果的に正解だったと俺は思っている。

──へぇ~。

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カワチ:ちなみに「やるドラ」の核ともいえるアニメーションの制作は、かの有名なProduction I.Gが担当していることでも話題になったのだが……念のために聞くけど、Production I.Gのことは知っているよな?

──う、うん……。し、知らない……かな。有名なの?

カワチ:おいおい、俺の店に来るほどのオタクにしては無知がすぎるぞ! 『攻殻機動隊』や『イノセンス』といった押井守監督作品、初期『テイルズ オブ』シリーズや『サクラ大戦』シリーズのゲーム内アニメ、『黒子のバスケ』や『ハイキュー!!』といったスポーツものまで、なんでもござれのアニメーション制作スタジオのことだよっ!

──ウッソ! 私が好きなゲームやアニメばっかりじゃん!! それだけでちょっと興味出てきたよっ。

カワチ:まぁ、CD媒体のPlayStationだから、アニメーションにも限界はあるんだけどな。今見ると画面はギザギザとジャギっているし、単純な動きをループさせて動いているように見せている部分も多い。とはいえ、カット割りなどの演出はさすがの一流クオリティだし、何よりそのコンセプトが斬新で、当時は多くのアニメファンやゲームファンの注目を集めたものさ。
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──そっかー。DVDですらなかったんだね。そりゃCDの入れ替えはめんどくさいよねー(笑)。

カワチ:アドベンチャーゲームでCD2枚組っていうのも相当だよな。ゲームがアニメ―ションすること自体が珍しかった時代だからね。あと、『ダブルキャスト』といえばなんといっても後藤圭二さんのキャラクターデザインが光る。『機動戦艦ナデシコ』のキャラデザで脚光を浴びた後藤さんのキャラクターが、とにかく可愛かったんだよ。フンッ、フンッ(笑)!

──マスター、鼻息荒すぎっしょ。これぞ萌え萌え~ってヤツだ(笑)。きっとめっちゃ甘々なラブストーリーが展開するんでしょ?

カワチ:フフ、こんな可愛いキャラクターたちが織り成す物語。そりゃあラブストーリーだと思うだろうさ。ぶっちゃけ恋愛要素はものすごく濃いものの、この『ダブルキャスト』は実際のところ、サスペンスホラーなんだ。

──はああああああ? こ、怖いゲームなの!?

カワチ:ああ。さっきも言ったとおり、前半は明るいラブコメなんだけどな。途中から仲間が惨殺されたり、主人公が撲殺されたりと、色々とショッキングな内容が多くなる。とくに「ジェノサイド編」と呼ばれるルートは、多くのプレイヤーにトラウマを残した……。
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──え、え、なにそれ!? ストーリーがすごく気になるんだけど!! さわりだけでも教えてよ、マスターッ!

カワチ:よしよし、ハマってきたな(ニヤリ)。『ダブルキャスト』のストーリーは所属する大学の飲み会で酔いつぶれて道端で寝てしまった主人公が、自分を介抱してくれた記憶喪失の少女・赤坂美月と、なしくずし的に同居することになるところからはじまる。
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──えー、普通、見ず知らずの酔っ払いを助けたり、そんな男と同居したりするかなぁ?

カワチ:したんだよ! そのとき美月が何を考えていたのかは『ダブルキャスト ザ・ドラマCD』を聴けば分かる。まぁ、主人公=自分として楽しんでいた俺としては、美月の心の声がわかってしまうこの作品はなんだか好きにはなれなかったんだがな……。結構、美月が打算的だったことがわかるし。

──マ、マスター……。ちょっと女の子に幻想を抱きすぎじゃない!?

カワチ:う、うるさいぞっ! それでストーリーの続きだが、主人公が所属している大学の映画研究部で、いわく付きのシナリオである「かこひめの寝屋」を撮影することになる。そのヒロインに美月が抜擢されるんだ。だけど、映画を撮り始めたころから主人公と美月のまわりで奇妙な出来事が起こり始める……。
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──「かこひめの寝屋」……なんか怖そう。ホラーの匂いがぷんぷんする!

カワチ:だろ? でもじつは、「かこひめの寝屋」がホラー要素にガッツリ結びつくわけじゃないんだよ(苦笑)。

──えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ、じゃあなんなの、今のフリはっ!! ムキーッ!!

カワチ:「かこひめの寝屋」は、プレイヤーがそう簡単に真実に気づいてしまわないよう、あえて遠ざけるために用意したいわばフェイクであったと、オフィシャルガイドブックのインタビューには書いてあったな。インパクトの強いシナリオなぶん、プレイヤーの注意はいやおうなくそちらに引き付けられた。開発スタッフとしては、してやったりだったろうぜ。ちなみにこのオフィシャルブックだが、デザインもテキストもとても素晴らしいから、ぜひゲームと一緒に入手してもらいたい。
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──うーん、じゃあ事件を起こしている犯人が別にいて、その人物から主人公が美月ちゃんを守っていく話になるってこと?

カワチ:いや……発売から何年も経っているし、プレイしていればすぐに気付くことなので言ってしまうが。じつは、主人公が巻き込まれることになる事件の犯人は、美月なんだ。
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──えー!? 美月って超やばいヤツじゃん!

カワチ:いやいやいや! オレも彼女に何回も撲殺されたもんだが、やばいヤツだなんて思ったことは一度もないぞっ!!

──いきなりブチ切れ!? マスター完全に惚れてるじゃん……って、美月はいったいどんな女の子なの?

カワチ:色々複雑なんだよ。まず彼女の生い立ちから説明するか。ゲームだと終盤のほうに明かされる内容だが、ここから説明するのがわかりやすいだろう。

──うん。

カワチ:まず、ゲームに「美月」として出てくる少女は、じつは美月じゃない。彼女の妹の志穂だ。

──ふんふ……えっ!?

カワチ:美月と志穂の姉妹は、両親を事故で亡くして以降、2人で暮らしてきた姉妹だった。しかし、美月は悪い男につかまったことで男性不信に陥ってしまい、以降、志穂に依存ともいえるほど執着するようになってしまう。そりゃあもう、志穂がちょっとでも男性と懇意になりかけただけで、彼女に暴力を振るうほどにな……。
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──ひええぇっ。自分が男性不信になるのは仕方ないとして、それを妹に押し付けちゃうのってどうなのよ。うちのお姉ちゃんのほうが全然マシだよ!

カワチ:精神科でカウンセリングを受けていた美月だが、結局は自殺してしまう。そんな彼女の死を目の当たりにした志穂は、トラウマから解離性同一性障害を発症し、心の中に「美月」という凶暴な人格を宿してしまうのさ。美月が死んだことで、志穂の心の中に生まれ変わったとでもいうか……。そうしてその美月の人格は、愛する志穂を守るために、凄惨な事件を引き起こすことになる……そんな物語展開になっているのさ。
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──ま、まじスか……。志穂ちゃんが心の中に生んだ美月ちゃんの人格が、主人公が巻き込まれる殺人事件の犯人だったってことね?

カワチ:でも……美月はただ男たちが憎くて罪を犯していたわけではないと思うんだよ。その根底にあるのは、志穂への想いというか。妹の志穂には、自分のように傷ついてほしくないという姉妹愛が、はからずも凶暴な形で具現化してしまったが、美月はそれだけ純粋で、妹のことを深く愛していたってことでもあると、俺は思うのさ。

──そ、そっか。

カワチ:……な? 姉の目線になって物事を考えてみると、妹のことが心配でムキになってしまう気持ちもわかるだろう?

──マスター……お姉ちゃんが私に厳しいのは、それだけ私のことを心配してくれてるからって言いたいの?

カワチ:ま、そーゆーこと。妹が、あのProduction I.Gのことさえ知らないような世間知らずだとしたら、なおさら心配だと思うぞ。少なくとも、俺は心配だッ!!

──いや、ソレハドウカナ……。うん、でもわかったよ。なんだかマスターに乗せられちゃった気もするけど、私、お姉ちゃんともっと話をしてみようって思った。ありがとう、マスター。

カワチ:ヘヘ……わかってくれたならいいのさ。じゃじゃじゃじゃあ、ここからはさらなる美月の魅力……もとい、志穂の魅力の本質を語らせてもらっても構わんかね!?

──もう! なにそれ、マスター! 別にいいけどね(笑)。
■これだけはしっかりと知っておいてほしい“美月、そして志穂のここがカワイイ!”
カワチ:さっきも話した通り、志穂の人格は複雑だ。まず、主人公と出会ったときの記憶喪失の人格である美月(美月A)、彼女のもともとの人格である志穂、そして姉を模した美月(美月B)、この3つが内包されているのだからな。

──お、おう……。いきなりマニアックに。美月は美月でも、姉を模したものではない「もう1人の美月」って人格があるわけね……。ほんとにサイコサスペンス。

カワチ:ちなみに、番外編には多重人格ではない普通の女の子の赤坂美月も登場するのだが……完全なifストーリーなので、ここでは省いておこう。
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──マスターがマニアック過ぎて、私、頭がこんがらがりそうッス。

カワチ:実際、志穂という人格は物語中にさほど登場しないから、おもに主人公と絡むのは最初に話した2人の美月だ。すなわち、主人公とファーストコンタクトを果たしたときの、「天真爛漫でボーイッシュな記憶喪失少女・美月」と、「姉の人格を模したヤンデレ美月」だな。そう考えればあまり複雑ではないかもしれんが、たとえば「このシーンの彼女の人格は、きっとこのキャラクターだったに違いない」といった考察を楽しめるのも、『ダブルキャスト』の魅力なんだけどね。

──なるほど。ちなみに、記憶喪失少女状態の美月の人格って、どんな感じでボーイッシュなの?

カワチ:ふはははは、そりゃあもう、最高のボーイッシュさだよ。なんと言っても「ボクッ娘」だからな! ボクッ娘最高!! 俺のボクッ娘好きのルーツの1人といっても過言ではない。それくらい、この美月という人格は愛嬌にあふれている。
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──えぇ~!? でも、ボクッ娘ってちょっとイタくない?

カワチ:いやいや、お前は何もわかっちゃいないなっ! 『SLAM DUNK』の晴子さんや『逮捕しちゃうぞ』の美幸を演じていることで知られる、あの平松晶子さんが演じた貴重なボクッ娘なんだぞ? 感謝することはあっても、イタいだなんて思うことはなかった!

──ふ、ふ~ん……。

カワチ:それにオタクは女性に耐性がないからな。ボクッ娘ぐらいの距離感の女の子がちょうどいいんだよ! 少なくとも、俺はそうなんだよっ!!

──す、すんません……よくわかんないや(苦笑)。

カワチ:オ、オホン。まぁつまるところ、美月は……加えていえば志穂もだが、ボーイッシュな性格ではあるものの、女子力がとても高いというのも大きな特徴でな。いろいろ気が利くというか……ぶっちゃけカワイイんだよ。彼女が主人公の家で炊事洗濯もしているシーンを見て、マジでこの子と結婚したいと思った男は数多いと思う。まぁ主人公=俺なわけだし、うまくグッドエンディングにまでたどりつければ……ぐふふ。この主人公が自分自身と、ものすごく感情移入できてしまうのが、「やるドラ」の魅力なんだよな。
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──まぁ、マスターはちょっとキモいけど、遊んでみたくなってきたよ。どんなエンディングになるのか気になるし。

カワチ:エプロン姿で料理する姿とか、とてつもなくかわいいんだぜ。同居っていうか、あれはもう同棲!? 響きだけでグッとくるわ! そりゃまぁ、キャベツ切ってるときはちょっと怖いけどな……。デートのときなんて、彼女は貸したお金を使わずに4時間も歩いて待ち合わせ場所に来るんだよ? いい娘に決まってるじゃん!
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──いや、それちょっと重くない?(苦笑) ってかマスター、完全に自分の世界に入ってない!?

カワチ:志穂は愛嬌があるから一緒にいて重く感じることなんてないぞ。うれしそうにファミレスのメニューを選ぶところとか、タオルを頭に乗せてお風呂に入りに来るところとか、細かいしぐさがぜんぶ可愛いんだ! たまらんのだ!!
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──う~ん、私から見たらあざといって感じもするケド……。まぁ、ヒロインが可愛いってことはものすご~~~~くよくわかったよ(笑)。

カワチ:プレイすればするほど、印象も変わってくると思うぞ。俺はあえて断言したいのだが、『ダブルキャスト』をプレイして美月や志穂と同棲したくならない男なんていない。たとえ殺されたとしても、だ! 俺、今日も1人でカレーを作っていたんだけど、包丁で指を切っちゃったときに、なんで隣に志穂がいないんだろうと思ってむせび泣いたくらいだからな(※注:実話)。

──よしよし……って、なんで私がなぐさめなきゃならんのだっ!!

カワチ:……まぁ、俺も志穂のパンチラシーンなどについてはあざといと思ったがな。それだけ彼女が男性を意識していないってことだと解釈しているけども。そういえば、彼女の胸が当たるシーンもドキドキしたな。デュアルショックはブルブル、俺の心もプルプルだった……。
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──もうダメかもな、この人は。

カワチ:しかも美月って結構体つきが良くてな。とくにおしりがモッチリしてて……。
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──マスター、いい加減にしないと殴るよ!

カワチ:コ、コホン! まぁそんなラブコメから一転してサスペンスになるからこそ、『ダブルキャスト』は大きな話題になったってことさ。『ダブルキャスト』で画像検索すると、返り血を浴びた美月ばっかり表示されるから、ぜひググッてみてくれ。

──コラコラ、乙女に向かってしれっと怖いこと言うなっての!
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カワチ:ジェノサイド編はメイクの翔子ちゃんも酷い殺され方をするし。映研にはマッチョな先輩が2人もいるんだけど、これまたあっさり殺されるんだよね。その筋肉は飾りなのかと問いたい。
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──でもそんなに執念深いお姉ちゃんなのに、よく志穂ちゃんのなかから消えたよね。

カワチ:そこらへんはやはり、詳細を俺の口から話してしまうのは無粋だろう。ぜひ自分で遊んで、その結末を見てみるといい。マルチエンディングだから、かなりじっ<くり楽しめるぞ。

──なるほど。
カワチ:まぁ主人公がどれだけ彼女に尽くしたかでエンディングが変わるわけだからな。その想いの大きさで最後ぐらい奇跡が起きてもいいだろう。ただなぁ……。

──なになに?
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カワチ:う~ん、じゃあこれだけは語らせてもらおうか。グッドエンドにもいくつか種類があるんだけど、その中に「とらわれた心」というのがあってだな。この展開だと、志穂の人格は戻ってこなくて、姉の人格のままになるんだよ。彼女の回復を願って主人公が病院へ見舞いを続けるっていうエンディングなんだけどな……。

──ふーん、グッドエンディングのわりに、ちょっと救いがなさそうだね?

カワチ:って、みんな言うんだけどさ。その一方で、姉の美月と主人公が向き合えるのは、このエンディングしかないんだよな。彼女の主治医である精神科の先生と、美月が穏やかに会話しているシーンもあるし、映研の部長が「自分で言ったでしょ? 自分ががんばんなきゃ彼女を助けられないって」と指針となる言葉もくれるし、ここから2人が幸せになる可能性だってゼロじゃないと俺は思っている。
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──……。

カワチ:「経過はよくない」とテキストに書かれているし、志穂の心がじょじょに美月に乗って変わられようとしているのは否定できない。でもここから主人公ががんばれば、きっと美月が彼のことを認めて、志穂という人格に肉体を戻すこともあると信じてるんだよね……。少なくとも俺は、そういうギャルゲーをたくさん見てきた。だから俺はこの「とらわれた心」がすべてのギャルゲーマーへの挑戦のような気がしていて、いちばん好きなんだ……。俺は美月と志穂の2人と分かり合えると信じる! いや、今でも信じている!!

──うん、何を言ってるのかちっともわかんない。やっぱり自分で進めてみないとね……。あ、マスターが気持ち悪いってことだけはわかったかも(苦笑)。

カワチ:ぐはっ! キモいはまだしも、気持ち悪いはやめてくれ! 生々しすぎる……。

──ハハハハ! あ、こんな時間だ。そろそろ帰るね。マスター今日はありがとう。お姉ちゃんとももういちど話してみるね。

カワチ:おう、またおいで。今度はお姉ちゃんと一緒にな!
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かくして、今日も1人の客の疲れた心は癒された。もしも今、あなたが悩みを抱えているのなら、この隠れたBARを訪れてみたらいかがだろう。"ギャルゲーBAR☆カワチ"は、いつでもお客さんをお待ちしています。


テキスト:カワチ(Makoto Kawachi) 1981年生まれ。ライター。ビジュアルノベルに目がないと公言するが、本当は肌色が多ければなんでもいい系のビンビン♂ライター。女性声優とセクシー女優が大好き。

ツイッターアカウント→カワチ@kawapi

第1回目のコラムはコチラ→『センチメンタルグラフィティ』
第2回目のコラムはコチラ→『ダブルキャスト』
第3回目のコラムはコチラ→『Quartett!』
第4回目のコラムはコチラ→『リフレインラブ2』
第5回目のコラムはコチラ→『風雨来記』
第6回目のコラムはコチラ→『ゆめりあ』
第7回目のコラムはコチラ→『どこまでも青く…』
第8回目のコラムはコチラ→『THE 恋愛アドベンチャー ~BITTERSWEET FOOLS~』
第9回目のコラムはコチラ→『ルームメイト・麻美 -おくさまは女子高生-』
第10回目のコラムはコチラ→『Ever17 -the out of infinity -』
第11回目のコラムはコチラ→『かたわ少女』
第12回目のコラムはコチラ→『あやかしびと』
第13回目のコラムはコチラ→『インタールード』
第14回目のコラムはコチラ→『True Love Story Summer Days, and yet...』
第15回目のコラムはコチラ→『つよきす ~Mighty Heart~』
第16回目のコラムはコチラ→『リップルアイランド』
第17回目のコラムはコチラ→『ねこぱら』
第18回目のコラムはコチラ→『探偵オペラ ミルキィホームズ』
第19回目のコラムはコチラ→『シスタープリンセス』
第20回目のコラムはコチラ→『雪割りの花』
第21回目のコラムはコチラ→『水月』
第22回目のコラムはコチラ→『車輪の国、向日葵の少女』
第23回目のコラムはコチラ→『同級生2』
第24回目のコラムはコチラ→『サーカディア』