【風雨来記】清楚な美女との出会いと別れに学ぶ“前に進むこと”の意味【ギャルゲーBAR☆カワチ_第5回】
都会の喧騒から少し離れたところにひっそりと佇む"ギャルゲーBAR☆カワチ"。ここは、日々繰り広げられるコンクリートジャングルでの生存戦争に負けそうになっているメンズたちのピュアハートを、ゲーム好きのマスターが「ギャルゲートーク」で癒してくれるという、シシララTVオススメのゲームBARなのだ……。
そんな体裁でお送りするギャルゲーコラム。さて、気になる第4回目のお客様の悩みと、その痛みを癒してくれるゲームとは……?
第1回目のコラムはコチラ→『センチメンタルグラフィティ』
第2回目のコラムはコチラ→『ダブルキャスト』
第3回目のコラムはコチラ→『Quartett!』
第4回目のコラムはコチラ→『リフレインラブ2』
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■プレイすると北海道に行きたくなる……そうまさにこれは稀代の“旅ゲー”
――マスターこんばんは! ふいー、まずはビールちょうだい!!
カワチ:はいよ。
――う~ん、腹も減ったなぁ。マスターなんか作ってよ。おにぎりって出来る?
カワチ:……おまえ、BARにきておにぎりを食べるのかよ。まぁ、いいけどな。作ってやるよ。
――やりィ!
カワチ:はいよ、おまち。
――いただきま~す! パク、むしゃむしゃ……もぐもぐ……うっうぅ……。
カワチ:ど、どうした!? 急に泣き出したりして。
――このにぎり飯の具が鮭だからだよちくしょう!!
カワチ:ええっ!? す、すまん。鮭はキライだったか。
――いや、むしろ鮭は大好きだよ。よく彼女が鮭のおにぎりを作ってくれてたんだ。でも最近ソイツと別れることになっちまって……うぅ……ちくしょう……。
カワチ:わかったわかった、今度からはイクラのおにぎりを出してやるから。それにしても彼女にフラれたぐらいでそこまで泣くなよ、情けないヤツだな(笑)。
――いや、俺にとって彼女はそれだけ大きな心の支えだったんだよ……。もう人生終わりだ! なんて日だ!!
カワチ:やれやれ、今のお前には鮭のおにぎりじゃなくて、こちらをふるまった方がよさそうだな。
――これはゲーム……『風雨来記』? なに、これ?
カワチ:現在は日本一ソフトウェアの子会社となっている開発会社のフォグが、プレイステーションで1998年12月3日に発売したゲームだよ。ちなみに、CGを高解像度化したりボイスを一新したりしたリメイク版が、プレイステーション2でも発売されている。ぶっちゃけ名作だぜ?
――いや、俺が聞きたいのはそういうことじゃない。
カワチ:今更PS2は……と思ったか? そういう意味じゃあ、オリジナル版はゲームアーカイブスで配信されているから、今となってはそちらのほうがプレイしやすいだろうな。じつはPS2版のほうが、より有名な声優さんを起用したりしているんだが、オリジナル版のキャストも味があっていいからオススメさ。
──ちょっと待ってマスター。俺が聞きたいのはそういうことでもない。
カワチ:ただ、当時『風雨来記』に関しては、正直、自分もノーチェックだったんだよな。きっかけは、同じメーカーが出した『久遠の絆』が傑作中の傑作だったから。これは……と興味を抱いて、この『風雨来記』も試しにプレイしてみたら、こちらもまた傑作中の傑作だったって寸法よ。
――わかった。そこらへんはもうわかった。たださぁ、今の俺の心の傷はどんな傑作ギャルゲーでも癒せないと思うよ?
カワチ:おいおい、ギャルゲーBARをナメてもらっちゃ困るぜ……。いいから起動してみな。
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――な、なんだ、これ!? ギャルゲーのタイトル画面だってのに、男が寝そべっているだけだ!
カワチ:フフフ……。ちなみに、パッケージは人すら映ってなくて背景だけなんだぞ。硬派だろう? この『風雨来記』は、夏の北海道を舞台にした“旅ゲー”なんだ。主人公の相馬轍(そうま てつ)は、カメラを片手に1人で北海道をバイクで回り、紀行文をインターネットに掲載しながら出版業界のコンクールで入賞を目指す、フリーライターなんだけどさ。
――なんだろう、設定からしてちっともギャルゲーっぽくないような(笑)。
カワチ:実際、『風雨来記』はギャルではなくて旅がメインだっていう人も多いよ。たとえば、この画面を見てみな。
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――うわ、なんぞこれ? レースゲーム!?
カワチ:本作独特の“ツーリングモード”さ。旅の臨場感を味わうために、まるで本当にバイクで北海道を旅しているかのように観光地と観光地の区間を移動できるモードなんだ。すごいだろう?
――おおお、なんか見てるだけで楽しそうだ! って、なんかちょっとビミョーな顔してない?
カワチ:うん……。臨場感を優先させたためか、すごく迷いづらいんだよねこのモード。次は左に曲がればいいのか右に曲がればいいのか……ちょっとしたダンジョンゲームだな(笑)。
――そりゃまた……。方向音痴な人には向いてないかもなぁ。
カワチ:ちなみに、本作には続編も存在するんだが、沖縄が舞台となった『2』は目的地選択型の移動方法に変わったんだよ。
――ありゃ、そうなの? スタッフさんも「迷いづらい」ってところは認識してたわけか。
カワチ:でも、またもや北海道が舞台になる『3』では、このツーリングモードは奇跡の復活を遂げるのさ。それで……これがまたやっぱり迷うんだよ(笑)。まぁ『風雨来記』はサブイベントも豊富だから、とくに目的もなくいろいろな観光地をブラブラするだけでも楽しいからな。そこらへんの雰囲気をコミで遊んでほしいという、開発者からのメッセージなのかもしれない。
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――なるほどなぁ……。でも、個人的には隣に女の子がいてナンボだよ。
カワチ:気持ちはわかるよ。でもな、ギャルゲーであることを忘れるぐらい旅の空気感が上手に表現されているのが、この『風雨来記』が名作たる由縁なのさ。なんせ、本作の監督・企画・シナリオライターを担当している浅野公一さんが、北海道ツーリング歴10年以上のベテランだからな。実写を取り込んだ風景はもちろん、テキストの描写にもメチャクチャ説得力があるんだよ。マイナーな観光スポットも多いし、主人公が旅で出会う人々も実際に、浅野さんが出会った人たちがモデルになっているらしく、やたらとリアリティがあるしな。
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――そういえば、自分は北海道にはまだ行ったことがないなぁ。『風雨来記』をプレイすれば行きたくなるのかな。
カワチ:俺は行ったぞ。
――え?
カワチ:『3』をプレイしたあと、ついに我慢ができなくなってな。PS Vitaを片手に北海道まで行っちゃったよ。これが『3』に出てくる“青い池”で撮った写真だ。
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――あ、ホントだ! 衝撃の自撮りっていうか、これゲーム画面がちっとも見えないんだけど(笑)。やっぱりバイクでツーリングだったの?
カワチ:フフフ……俺はバイクの免許なんか持っちゃいねえよ! 自転車をレンタルして必死に漕いだわ!!
――えええええええ! ごめん、それちょっとダサくない?(笑)
カワチ:ダサくない! ダサくなんかないっ!! ちなみに攻略本の「風雨来記 オフィシャルコンプリートワークス」には、北海道のマップ付きガイドが付いているから、観光の際はぜひ持っていくことをオススメする。
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――なるほどね……って、この本を手に入れるだけで大変だっての! まぁつまるところ、マスターは俺に北海道でも旅して、失恋の傷を癒してこいって言いたいわけ?
カワチ:……確かに本作には主人公が一人旅をするシナリオも用意されていて、じつはこちらの評価もメチャクチャ高かったりする。お前にもぜひプレイしてもらいたいのだが……まぁここはギャルゲーBARだからな。ちゃんと可愛いヒロインたちを紹介してやるよ。ただな、ちょいと注意してほしいことがある。
――なに? ここまできてなんなの?
カワチ:単刀直入に言うと、本作には手放しで喜べるようなハッピーエンドはひとつもない。すべて、最後はヒロインとの別れで終わる。
――おいぃぃぃぃぃぃぃっ!? 当てつけだよな? マスターがこのゲームを選んだのはフラれた俺への当てつけだよな!?
カワチ:いやいやまさか。なにもハッピーエンドだけが、ギャルゲーのシナリオってわけじゃないだろう? 浅野さんも『風雨来記 オフィシャルコンプリートワークス』で、「ヒロインと結ばれて終わる結末じゃない“終わらない旅”を根幹に、本作のシナリオを考えた」とおっしゃっている。実際、俺も遊んでみてそう思ったよ。人生はいつだって途中経過。じつは区切りやエンディングなんてないのさ。
――うーん、なるほど……。
カワチ:人は歩みを止めたときに、そして挑戦をあきらめたときに年老いていくのだと思います。この道を行けばどうなるものか。危ぶむなかれ。危ぶめば道はなし。踏み出せばその一足が道となり、その一足が道となる。迷わずゆけよ、行けばわかるさ。いくぞ~!!!! 1、2、3、ダァ~~~~~~~~~ッ!!!!!!
――猪木じゃねーか! もういいからヒロインのことを教えてくれよ!!
カワチ:わかった、わかった。『風雨来記』のヒロインは4人。隠しヒロインであり『みちのく秘湯恋物語』の登場人物でもある森岡由美を加えると、総勢5人だな。ちなみに由美のシナリオをクリアすると、花札のミニゲームが遊べるようになるぞ。
――へぇ~楽しそう。
カワチ:花札は『久遠の絆』のキャラクターたちも登場する、フォグファンにとってはかなり豪華な内容になってるよ。さて、そんな本作のメインヒロインだが、まずは時坂 樹(ときさか いつき)から紹介しよう。彼女は20歳。お嬢様っぽい風貌でおっとりしているが、じつは一生懸命でひたむきな一面を持っている女の子だ。時折見せる寂しげな表情が、じつに印象的なんだよなぁ……。
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――このイラストの髪の毛の表現、すごいキレイだね。で、そのお嬢様は北海道出身ってわけ?
カワチ:いいや。彼女は大学でカヌーサークルに入っていて、摩周湖に合宿に来るための下見に訪れていたところで主人公と出会うんだ。続いてはこの子、滝沢 玉恵(たきざわ たまえ)21才。こちらはフェリーで出会う女の子だ。バイクの免許取立てでありながら、単身で北海道ツーリングに挑戦しちゃう、めちゃくちゃ元気な子なのさ。
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――なんかサバサバしてそうな女の子ですね。恋人っていうより友達ライクというか。
カワチ:まぁな。でも、ルートに入ると途端に可愛らしい一面ばかりを見せてくれるようになるぜ? ちなみに、まるで現実の女性と恋愛をしているかのような、ある種の面倒くささも味わえたりする(笑)。
――えぇ? もう面倒くさいのはコリゴリなんだが……。
カワチ:そんな玉恵のシナリオは、浅野さんの実体験をベースに作られたシナリオらしいんだがね。さて、ラストは斉藤 夏(さいとう なつ)と(左)と斉藤 冬(さいとう ふゆ)の2人。双子の姉妹でどちらも18歳だ。気が強くて元気な妹の夏と、病弱でおしとやかな姉の”冬”と2人は、双子ながらずいぶんと対照的な性格をしているな。
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――見た目はどちらも可愛いな。こりゃどっちを選ぶか迷っちゃうねマスター!
カワチ:そうだなぁ(ニヤニヤ)。
――な、なんだよ気持ち悪い笑いかたなんかして! 気持ち悪いよ!
カワチ:今なんで2回言った!? ……ちなみにこの斉藤姉妹は、旅行中にメールでデートの申し込みをしてきてくれるから、攻略が一番ラクだよ。最初は彼女たちのルートをプレイしてみるといい。それでこのゲームがどんなものかわかるハズだ。エンディングを迎えたときは、放心すると思うぜ。なんだろう……「わかってる! わかってるんだけど、切なすぎる!」というか……。頭では理解はできても感情的には納得できないというか……。まぁあまり語ってもネタバレになるから、実際にプレイしてみてくれ。
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――ふうむ、じゃあさっそく斉藤姉妹のシナリオを……。
カワチ:おっと、すまん。お前にプレイしてもらいたいルートは、斉藤姉妹じゃない。最初に紹介した樹のルートなんだよ。
――えぇ、そうなん!? はやく言ってよそういうことは!
■神秘的なお嬢様・樹に隠されたヒミツとは!?
カワチ:樹とは、摩周第三展望台で湖を撮影しているときに出会うんだ。主人公は、神秘的な雰囲気をかもし出しつつ、静かに遠くを見つめている彼女に惹かれてついカメラのシャッターを切ってしまうのさ。
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──常識的に考えて、そんなことしたら怒られません!?
カワチ:もちろん、主人公はいきなりの無礼を謝るよ。そのうえで自己紹介をして、記事に掲載したいからぜひ撮影のモデルになってほしいと彼女にお願いするわけだ。
――そ、それで!?
カワチ:樹からすれば、そりゃあ最初はものすごく驚くわけだけど。「私、摩周湖に毎日来てます」「また会うことができたなら、その時は私を撮ってください」と、快く了承してくれるんだなぁ。
――へぇ~。じつは撮られたがりの目立ちたがり屋だったりするんですかね(笑)。スケベ心が働いたというか。
カワチ:そんなわけねぇだろ! ……じつは彼女がモデルの件を承諾したことにはとても深い意味があるんだが……今はまぁいい。とにかく主人公は、彼女をモデルに写真を撮るようになり、少しずつ交流を深めていくんだ。基本は礼儀正しい女の子なんだけど、お茶目な顔も見せてくれるようになって、それがメチャクチャ可愛いんだよなぁ。とくに俺は、困った顔をしながらの笑顔、この立ち絵がお気に入りでね……。
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――(ズキューン!!) そ、それで? いいから続きを聞かせてくれ。
カワチ:はいはい。そうして彼女と仲良くなった主人公は、樹が時々悲しい表情をする理由を聞くのさ。すると彼女は、親友とケンカをしてしまったことを明かしてくれるんだ。満月の摩周湖に出てみたいと、危険を冒して湖に降りた親友を思わず叩いてしまったらしくてな。それに怒った親友は、樹を置いて東京に帰ってしまったと。
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――いや、それは樹ちゃんが正しいだろ。それだけ親友が心配だったってことじゃんか。
カワチ:そうだな。主人公もそう言って彼女を励ますし、樹も旅を続けていくうちに少しずつにリラックスしてくれて、さまざまな表情を見せてくれるようになるんだ。そのおかげで、編集長から記事が好評であるとのメールももらえるしな。
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――いいじゃん、順調じゃん!
カワチ:……ただ、そうしているうちに、樹と同窓生だという増田なつきという人物から、主人公宛てに奇妙なメールが届くんだよ。記事を読んだなつきさんからのメールには「彼女が樹であることはありえない。なぜなら、樹は自分と同じ27歳だから」と書かれている。
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――ええ? マスターさっき、20歳って言ってたじゃん! 騙したの!?
カワチ:いや、それは嘘というかなんというか……な。とにかく、なつきさんも“記事の中の彼女の姿はあまりにも当時の記憶のまま”と言っているし、じつのところ、本質はそんなところじゃないんだ。
――うーん、なんだか怪しいってのはわかる。じつはそっくりな別人とか?
カワチ:ここでちょっと話は飛ぶんだけど、主人公には初恋の女性いたんだよ……ゲーム内では“アイツ”と表現されるんだけどな。ただ、主人公がその想いに気が付いたのは“アイツ”が死んだあとのことだった……。彼はその人のことをずっと引きずっているのさ。物語が進むと、主人公が樹にその話をするタイミングがやってくる。主人公の話を聞いた樹は、月の夜の摩周湖で初恋の人が自分の大切な親友と抱き合っていたこと、そしてサークル合宿などはウソで、もうありはしないことを告白してくれるんだ。
――ほうほう。な、なんだろう。シリアスっつーか、ちょっと緊張してきちゃったよ俺。
カワチ:話をしてくれたあと、樹はずいぶん自虐的になっちゃんだけど、それを見た主人公はつい「俺は……樹が好きだ」と、自分の今の気持ちを口にしちゃうんだよな。
──くはぁー、青春だなぁ!
カワチ:まさにな。ちなみに、このシーンは和琴半島の近くにある“コタンの湯”という温泉で発生するんだ。温泉ってことで樹はバスタオル姿だし、正直めっちゃドキドキしたよね。
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――ひょーっ! って、樹ちゃんは彼氏でもない男と温泉に入ってたの? ずいぶん大胆だなぁ。まぁ嫌いじゃないけど(笑)。
カワチ:うーん、そこはギャルゲーだから……。で、そのあと主人公は、謎のメールをくれた増田なつきについて心当たりがないか、樹に聞くんだよ。で、樹はそのあと忽然と姿を消すことになる。そこにバスタオルだけを残してさ……。
――はぁ!? そんなタイミングで逃げたってこと? もしかして樹ちゃん、主人公を騙そうとしている詐欺師なんじゃ……。
カワチ:……その後、主人公はなつきさんと連絡を取り、樹の壮絶な過去を聞くことになる。それは、ゲーム中の時間軸から7年前の話になるんだけど。
──ふむふむ、7年前ねぇ。
カワチ:なつきは当時、同じサークルの先輩である葉山という男性に恋をしていた。それで、サークルメンバーでの旅行の夜に、彼を摩周湖まで呼び出すんだけど……そこで気づいてしまうんだよな。葉山が樹のことを好きだってことに。どうやら葉山は、「なつき」と「いつき」を聞き間違えて、その場に樹が来ることを期待していたらしくてね……。
──え、なにその過去エピソード。それって過去のことなんだよね?
カワチ:ああ。そのとき、なつきさんはどうしたと思う? 親友である樹にだけは負けたくないと、葉山を抱きしめてキスをしてしまうのさ。ところが、それを偶然樹が見ていて、傷ついた彼女は2人をなじり、闇の中に駆け出して行ってしまったんだ……。
――ひえー、つまり樹も葉山のことが好きだったってことか……ドロドロの展開!
カワチ:それ以来、樹は消息を絶ってしまったらしく、なつきさんはあの夜の出来事をずっと後悔したまま過ごすことになってしまった。そうして主人公に言うわけだよ。「その子を探してください……あの日見つからなかったあの子の手を……消えてしまった樹を……今度こそ見失わないで……」ってな。その後、葉山さんからもメールが届いて、彼もまた7年間、ずっと苦しんでいたことが伝えられるんだよね。
――なるほど、悲しいすれ違いだな。
カワチ:その話を聞いた主人公は、しゃにむに樹のことを探し回ることになる。
――なんか嫌な予感が……み、見つかるのか!?
カワチ:ああ。いろいろと2人の思い出の場所を捜すんだけど、最終的に樹のほうから帰ってくるよ。
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――おぉ、良かったぁ。
カワチ:それで主人公は、昔“アイツ”と一緒に見ようと夢見ていたオーロラを、樹と観にいくことを決めるんだ。
――おぉ! ドラマティックじゃん。
カワチ:ちなみに、このとき樹は主人公に自分が27歳であることも打ち明けるよ。「年上はお嫌いですか?」というセリフには、当時ずいぶんドキッとしたものさ。
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――なるほど、ここでやっと本当のことを話してくれたってことね? やべぇ、超キュンキュンするっ!!
カワチ:……。
──それでそれで? オーロラを観てハッピーエンドならいいけど、『風雨来記』はそうじゃないんでしょ!?
カワチ:あぁ、じつは主人公は、樹への気持ちに決着がつくまでは、記事を書くことをやめてしまうんだけど。それを知った樹に「私が足を引っ張っているってことなんですね?」「私と一緒に居るためなら、お仕事を捨てられますか?」と問われるんだ。
――男なら「捨てられる」と言いたいところだけど……現実はそううまくいかないんですよね……。
カワチ:ああ、主人公も「ごめん……」としか言わないし、樹も「……わかりました」とだけ答えるのさ。そして2人は、日曜日の尾岱沼で、オーロラを撮影する最後のチャンスにかけるんだ。しかし、残念ながら月が昇ってしまい、オーロラを見ることはできなかった……。
――そ、そんな。
カワチ:さらに樹が「月が……じゃあ、いよいよなのかしら……」と不吉なことを言うんだ。察した主人公が「俺が欲しいのは樹ちゃんだけだ」と訴えると、樹も「いいですよ。あげます……私を。私もあなたの中に残りたいの。だから……」と言って肌を重ねるんだ。
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――ごくり。っていうか、プレイステーションのゲームなのに、そんなことしていいの!?
カワチ:もちろん、直接的な描写は無いぞ(笑)。そのあと、樹は本当の過去を語りだしてな。嫉妬にかられてなつきさんと葉山を罵倒した彼女は、そのあと自分が怖く、ゆるせないくらい嫌いになって、闇のなかを走ったんだ。そして足元に地面が無いことに気付いたときには、身体は冷たい水の中に……。
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――ってことは……やっぱり彼女は?
カワチ:ああ。「あなたという太陽に照らされている間だけ光っていられる、月みたいなもの」と主人公に伝えるんだ。そう、最初に主人公が樹のことを認識できたのも、言ってみれば奇跡のようなものだったんだな。そのときは、まだほかの人には樹のことが見えていなかった。それがだんだん普通の人間と同じような存在になってきて……。そんな彼女に、主人公は「俺でいいならいくらでも光をやるよ!」と言うんだが、ついに樹は「ありがとう……でも私とあなたの時間は同じじゃないの……私が死んだあの日から……」と決定的な言葉を口にしてしまう……。
――うわあああああ、やっぱり彼女は幽霊だったんだ……。
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カワチ:そのリアクション、薄々察していたか……。どうだ、悲しいだろ? 悲しいよな。でも主人公は「自分だけが年を取らないまま一緒にいるなんて嫌だ」という樹の想いに応えて、しっかり彼女を見送ることを決意するのさ。涙でくしゃくしゃになりながらも、精いっぱいの笑顔でな。
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――そうか……。
カワチ:好きだからこそ、相手を尊重するからこそ、主人公は別れを選択したんだ。そこからまた、新しい何かが始まることを信じてな。これが成長ってやつだよ。その点、お前はどうだ? 今みたいにウジウジしたまま、人生の道を歩き続ける……そんなことをしていて、別れた女に恥ずかしくないのか?
――俺……正直まだ元カノへの想いを引きずっていて、よくわからないよ。
カワチ:おう……。ただ、今の場所で立ち止まって泣いていたって、どこにも進めやしない。彼女との出会い、そして別れを糧にして、また前を向いて進んでいかないと。それこそ、『風雨来記』の主人公のようにな。
――うん。樹やなつきの話を聞いて、このまま立ち止まっているというのも、それはそれでツラいってことがよくわかったよ。7年間も悩み続けるわけにはいかないし、俺、今度北海道を旅してみようと思った。そこで何かが見つかるかもしれないしさ! ありがとうマスター。今日はもう帰ることにするよ。
カワチ:フフ、ちょっとは男らしい顔になったじゃないか。北海道の旅、いいかもしれないな。帰ってきたら土産話を聞かせてくれよ。
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第2回目のコラムはコチラ→『ダブルキャスト』
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テキスト:カワチ(Makoto Kawachi) 1981年生まれ。ライター。ビジュアルノベルに目がないと公言するが、本当は肌色が多けれななんでもいい系のビンビン♂ライター。女性声優とセクシー女優が大好き。
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