【THE 恋愛アドベンチャー】マフィアの孫娘の行動には自立のヒントが隠されている!?【ギャルゲーBAR☆カワチ_第8回】
都会の喧騒から少し離れたところにひっそりと佇む"ギャルゲーBAR☆カワチ"。ここは、日々繰り広げられるコンクリートジャングルでの生存戦争に負けそうになっているメンズたちのピュアハートを、ゲーム好きのマスターが「ギャルゲートーク」で癒してくれるという、シシララTVオススメのゲームBARなのだ……。
そんな体裁でお送りするギャルゲーコラム。第8回目のお客様の悩みと、その痛みを癒してくれるゲームとは?
第5回目のコラムはコチラ→『風雨来記』
第6回目のコラムはコチラ→『ゆめりあ』
第7回目のコラムはコチラ→『どこまでも青く…』
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■あの映画監督・新海誠氏も参加していたギャルゲー!
(カランカラン)
カワチ:いらっしゃい。
――ウォッカ・マティーニを。ステアせずにシェイクで。
カワチ:はいよ……って、ん? お客さん、どこかで見たことあるな。あぁ、もしかして二世タレントの……。
──その呼び方は辞めてくれ。俺は俺だ、親父とは関係ない。
カワチ:……む。これはすまん。
――ふん、どいつもこいつもオヤジのことばかり。俺は自分の意志で芸能界に入っただけだってのに、スタッフや演者にも気を使われて、やり辛いったらないぜ……。こんなことなら別の家に生まれたかったよ。
カワチ:……。(コトッ)
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――ん? なんだいこれ。
カワチ:んん? 『SIMPLE2000シリーズ Vol.9 THE 恋愛アドベンチャー ~BITTERSWEET FOOLS~』だが?
――あぁ……今話題の『SIMPLE』シリーズにこんなのあるんだ……って、そうじゃねぇ! 俺はこんなもの頼んじゃいねーぞ?
カワチ:今、お前さんに必要なのはウォッカ・マティーニじゃない。ビターでスウィートなフールズだと思うんだよな。
――いや、だからなんなんだよこれは。
カワチ:知らないのか? 2002年にディースリー・パブリッシャーからSIMPLE2000シリーズとして発売された、PS2の恋愛ゲームだ。ギャルゲーバーオススメの逸品だぜ。
――逸品のわりにはタイトルが適当じゃないか。“THE 恋愛アドベンチャー”なんてそのまますぎるだろ。もうちょっとひねろうよ。
カワチ:『SIMPLE』シリーズってこういうもんよ? ちなみにこの作品はPCからの移植作で、“THE 恋愛アドベンチャー”というサブタイトルは移植されたときに追加されたものとなる。ドリームキャストにも移植されていて、そちらのタイトルは『SIMPLE2000シリーズ DC Vol.01 BITTERSWEET FOOLS THE 恋愛アドベンチャー』ってなってるんだぜ。
――知識量はんぱねえな……って、何そのドヤ顔。
カワチ:フフ、移植にあたってわかりやすく“THE 恋愛アドベンチャー”というタイトルが付いたわけだ。ただ、この作品のイメージと合っているかと問われれば確実に違うけどな(笑)。
――違うのかよ! 適当だな(笑)。
カワチ:ちょっとは興味を引かれたかい? 『BITTERSWEET FOOLS』はイタリアのフィレンツェを舞台にした作品で、スナイパーの青年とマフィアの孫娘の出会いを描いている。正直、あまり“THE 恋愛”って雰囲気じゃないな。それにこの作品は群像劇になっていて、第三者視点で物語が描かれるんだ。だから主人公に感情移入するというよりは、映画を楽しむようにプレイするのが正しいスタンスといえるだろう。
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――ふーん、イタリアが舞台なのか。何度か行ったことあるけど、いいところだよな。
カワチ:そうか……。俺は行ったことがないが、プレイしたユーザーの評価は「イタリアの雰囲気が良かった」というものが多いから、そこは期待してもよさそうだぞ。
――ほう。そう言われても、わざわざプレイする気にはなれないぜ。マスターが何を考えているのかはわからないけどね。
カワチ:もうひとつのセールスポイントの話を聞いてどう思うかな? それは本作に参加しているスタッフだ。まず、キャラクターデザインだが、これは『GUNSLINGER GIRL』で知られる相田裕さん。ちなみに『GUNSLINGER GIRL』もイタリアを舞台にした物語だったんだが、これは単なる偶然の一致だったらしい。
――ファンとしちゃあ色々つながりを想像したくもなるんだろうな。奇妙な偶然もあるもんだ。
カワチ:シナリオを書いたのが相田さんではなく、古我望さんというシナリオライターの方だからなぁ……。ちなみに『Wind -a breath of heart-』や『白詰草話』を手掛けていた方だよ。
――いや、俺は知らねぇけど……シナリオを書いた方もその筋では著名な人ってことか。
カワチ:あとは、なんといってもオープニングムービー。これは若かりし日の新海誠さんが手掛けているんだぜ。
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――新海誠さん……って、もしかして『君の名は。』の新海さんかい? そいつはすげえ!
カワチ:ああ。もともと新海さんは日本ファルコムに務めていたんだが、そこを退社したあとに『BITTERSWEET FOOLS』のオープニング制作に参加したんだよ。オープニングの演出とかを見てみると、この時点ですでに新海さんのスタイルは確立されていることがわかるぜ。
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――なるほど。少しプレイしてみたくなってきたぞ。
カワチ:そうだろうそうだろう。じゃあ、もう少し具体的にゲームの紹介をしていこう。
――仕方ねえ。聞いてやるよ。
■非日常なキャラクターたちが過ごす日常
カワチ:『BITTERSWEET FOOLS』がフィレンツェを舞台にしていることは説明したな。基本的にはアランとパレルモという2人の青年を軸にした物語が、一話完結の形で交互に進んでいく。
――主人公が2人いるってことか。
カワチ:ああ。どちらも裏社会に生きる青年と純真な少女の交流を描く物語になっている。
――裏社会ねえ。結構ハードなストーリーなのか。ちょっとくすぐられるものがあるな……。
カワチ:いや、派手な銃撃戦みたいなシーンはないよ。あくまで非日常のなかの日常、2人の心の交流がメインになっている。
――ふーむ。
カワチ:そこはいわゆる「雰囲気ゲー」っていうのかな。繊細なテキストや美麗なCGのおかげで、たっぷり世界観に浸れるようになっている。ただな……。
――ただ……なんだい?
カワチ:このゲームは全22話で構成されているんだが、選択肢によっていくつかのルートに分かれるため、1度のプレイで物語の全容を知ることは不可能なんだ。これを面倒と感じるか、奥が深くて面白いと感じるかはぶっちゃけプレイヤー次第なんだよな。
――へぇ。まぁ、ゲーム性があっていいじゃないか。
カワチ:そう言ってもらえるなら素養アリだな。ちなみに、もともとは全20話で残りの2話は追加シナリオだ。この追加シナリオはPS2版とDC版でそれぞれ内容が違うというこだわりようさ。
――ゲッ。じゃあ両方やらないといけないのか。
カワチ:まぁ、あくまで追加シナリオだからそこまで気にする必要はないけどな。それでは改めてストーリーを説明しよう。
――おう、マジで気になってきたからよろしくマスター。
カワチ:アラン編は掃除屋であるアランが、仕事斡旋人のモーリスの依頼でティという名の少女のボディーガードを請け負うところから物語が始まる。まぁ、アランはPC版ではフリーランスの殺し屋と表現されていたんだが、そこはそれってことで。でもって、ティはマフィアの孫娘なわけだが、祖父が亡くなったことにより、組織内の跡目争いに巻き込まれちまったわけだ。そこで、ティの身を案じた両親が、知人のモーリスのところに彼女を逃がし、そのつてでアランが匿うことになった……と。
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――なるほど、わかりやすい。で、もうひとつは?
カワチ:こちらは諜報機関に身を置いているパレルモが主人公。彼が路地裏で倒れていた少女・レーニエを助けるところからスタートする。彼は、ひとまずレーニエを組織の隠れ家に連れて帰るんだが、目を覚ました彼女は自分の名前以外の記憶を失っていてね……。かすかな記憶を頼りに、自分が何者かに追われているというレーニエの身を案じて、パレルモはしばらく彼女を匿うことを提案。仲間のエリチェとシエナもそれを了承し、奇妙な共同生活が始まることになるのさ。
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――へぇ。どっちのストーリーも面白そうだな。
カワチ:フフフ、そうかい。ちなみに、俺がアンタにオススメしたいのはアラン編のほうだ。
――そりゃまたなんで?
カワチ:そりゃお前、ヒロインのティが可愛いからに決まってるでしょ!
――そ、そんな理由かよ。
カワチ:このバカチンが! ここはギャルゲーBARだぞ!! 女の子のカワイさがいちばん大事でしょうが!
――なんか急に人が変わったようで怖いんだが……。で、ティのどこがカワいいんだ?
カワチ:やっぱりあの幼く愛くるしい外見だな!
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――おいおっさん、ただのロリコンじゃねーのか!?
カワチ:ロ、ロ、ロ、ロリコンちゃうわ! でも、やっぱり相田裕さんの描く少女はかわいいんだよ……。
――……やっぱり、そういう趣味嗜好が……。
カワチ:いやいや! 外見も好きだけど、もちろん内面こそが好きなんだよ? マフィアの孫娘というと怖いイメージがあるけど、箱入り娘ってだけで、普通のかわいい女の子なんだよ!
――ふーん。まぁイメージなんてそんなものだよな。俺も有名人の息子ってだけで色眼鏡で見られてきたから、少し気持ちはわかるぜ……。
カワチ:うむ。そこはティも同じだな。彼女も家が家だけに、普通の友だちができなかったらしい。それだけに主人公・アランとの共同生活が新鮮でそりゃもう楽しそうでな……見ていて微笑ましくなるんだよ。
――でも、アランっていう男は殺し屋なんだろ? そんな悠長なこと言ってられるのか?
カワチ:うーん。ほら、シティーハンターだっていつも戦っているわけじゃないじゃん。オフィスにいるときは、香と漫才してるだろ?
――あぁ、たしかに! ……ってどういう例えだよ(苦笑)。
カワチ:まぁ、いいじゃないか。それよりティの話をさせてくれよ! 手料理を作ろうとして失敗しちゃったり、アランがそばにいるから緊張してなかなか眠れなかったりとか、ピュアすぎてカワいいんだよ!! くぅ~、俺もティちゃんと同棲してぇ~!!
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――お、おう……。そういう本音は声に出さない方向で頼むわ。
カワチ:こりゃ失敬(テヘペロ)。で、この2人はとある事情からネコを飼うようになるんだけど、ネコとたわむれるティもまたカワいいんだよなぁ……。やっぱ、ネコと少女っていいよね。
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――わかった、わかった。つまりマスターは、俺に「ティの姿を見て癒されろ」って言いたいわけね。
カワチ:いいや。君に注目してもらいたいのはあくまでストーリーの方だ。よし、そこのところも説明するか。
――おう、マジで頼むぜ。
カワチ:これは後半のネタバレになってしまうが、ファミリー内のゴタゴタで生死不明だったティの兄・ルカが、彼女のもとにやってくるんだよ。そこから物語は急展開を迎える。
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――ティを引き取りにきたってことか?
カワチ:ああ。ただ、彼は裏社会では親殺しのルカと呼ばれている人物なんだ……。
――お、親殺し!?
カワチ:もともとファミリー内のゴタゴタというのも、彼が率いている革新派のクーデターが原因だった。自分で両親を殺害して、彼は新たなドンという地位を手に入れたんだ。
――急にシリアスになったな。続きが気になるぜ。
カワチ:彼は仲間から唯一の肉親であるティとの決着を迫られていて、単刀直入にいうと、彼女のことを殺しに来たってわけだ。
――マジか! そ、それで!?
カワチ:ルカに呼び出されたティは、彼のもとに行くんだよ。そんな彼女にルカは言う。「お別れだ、ティ」、そして一発の銃弾が響き……。
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――し、死んじゃったのか?
カワチ:撃たれたのはルカだった。アランが彼を狙撃したんだ。
――よ、よかった……ここでヒーローの登場ってわけね。
カワチ:いや、そもそもティがアランにルカを撃つように事前に頼んでいたんだ。「撃ったのは彼……でも殺したのは私」とルカに告白するよ。それを聞いたルカは「これからは泣いちゃいけない……」と助言し、満足そうに息を引き取ると……。
――肉親同士で血を血を洗う……マフィアの世界とはいえ、なんだか悲しいな。
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カワチ:最後はどこか分かり合えていた感じもあるぶん、余計にな……。そんな彼女の心に生じた隙間を埋めるのは、アランの役目になるのだが……君に見て欲しいのは、そんなティの覚悟なんだよ。
――覚悟だと?
カワチ:彼女は兄のことなど振り返らず、アランとの未来を選ぶことになるんだ。肉親に縛られることなく、己の愛に殉じるというか、自分を貫いて未来を選択するってわけだな。
──肉親に縛られることなく、ねぇ。ちょっと引っかかる言い方だな。
カワチ:君の抱える問題とはもちろん全然違うけど、わかるだろ? なんらかの形で肉親を超えていくということは、すなわち自分の力で立つって意味でもあるってことはさ。君も親と比較されるからっていちいち突っかからずに自分の未来を見て歩いてみたらどうだ?
――……そういうことか。俺自身が親父のことを気にしすぎてがんじがらめになっていたのかもしれないな。そう、本当はわかっていたんだよ。芸能界で何も結果を出せないのは、俺の実力不足だって。俺が自立できていなかったんだ、親父は関係ないもんな……。
カワチ:自分でそれがわかっているなら、大丈夫なんじゃないか? こんなところで酒を煽っている時間があるなら、まだまだやれることはあるだろう。
――チッ、まだまだ修行が足りないようだな。マスター、ありがとよ。出直してくるぜ。
カワチ:ああ、テレビでアンタのことを応援してるよ。
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第1回目のコラムはコチラ→『センチメンタルグラフィティ』
第2回目のコラムはコチラ→『ダブルキャスト』
第3回目のコラムはコチラ→『Quartett!』
第4回目のコラムはコチラ→『リフレインラブ2』
第5回目のコラムはコチラ→『風雨来記』
第6回目のコラムはコチラ→『ゆめりあ』

第7回目のコラムはコチラ→『どこまでも青く…』


テキスト:カワチ(Makoto Kawachi) 1981年生まれ。ライター。ビジュアルノベルに目がないと公言するが、本当は肌色が多けれななんでもいい系のビンビン♂ライター。女性声優とセクシー女優が大好き。
ツイッターアカウント→カワチ@kawapi