【ゆめりあ】夢の中で出会った少女が与えてくれる“人と触れ合うための勇気”【ギャルゲーBAR☆カワチ_第6回】
都会の喧騒から少し離れたところにひっそりと佇む"ギャルゲーBAR☆カワチ"。ここは、日々繰り広げられるコンクリートジャングルでの生存戦争に負けそうになっているメンズたちのピュアハートを、ゲーム好きのマスターが「ギャルゲートーク」で癒してくれるという、シシララTVオススメのゲームBARなのだ……。
そんな体裁でお送りするギャルゲーコラム。さて、気になる第6回目のお客様の悩みと、その痛みを癒してくれるゲームとは……?
第1回目のコラムはコチラ→『センチメンタルグラフィティ』
第2回目のコラムはコチラ→『ダブルキャスト』
第3回目のコラムはコチラ→『Quartett!』
第4回目のコラムはコチラ→『リフレインラブ2』
第5回目のコラムはコチラ→『風雨来記』
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■まさに『THE IDOLM@STER』の原点!? それが『ゆめりあ』!
――こ、こんばんは(ボソッ)。
カワチ:……ん? あぁ、なんだお客さんか。いらっしゃい、適当に座ってくれ。
――あ、はい。(ボソッ)
カワチ:飲み物は?
――ハ、ハイボール……(ボソボソッ)。
カワチ:す、すまない。もう少しハッキリしゃべってくれないか。ちょっと聞き取りづらいよ?
――ヒィ! す、すみません。
カワチ:いや、そんなに驚かなくても……なんだかこっちこそすまん。ハイボールね。どうぞ。
――あ、ありがとうございます。
カワチ:お客さん、ウチははじめてだよね?
――え、えぇ。今、就職活動中なんですけど、その、口下手だからか……面接までは行けるのに、そこで必ず落とされちゃって……。も、もうお酒でも飲んで嫌なことは忘れちゃおうかなって。
カワチ:そうか……そいつは大変だな。
――つ、伝えたいことがないわけじゃないんです。ただ言葉が咄嗟に出なくて……。内気な自分が憎いです……。
カワチ:おいおい、あまり自分を卑下するもんじゃないよ。ひとまず、これをプレイしてみな。
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――こ、これはゲーム……『ゆめりあ』ですか? ロ、ロリコン向けのゲームかな。
カワチ:バ、バ、バ、バカヤロウ! 確かに『ゆめりあ』はメインヒロインであるモネを中心に、小さくてかわいい女の子がたくさん出てくるゲームだが、決してそういうんじゃないんだ! そういうんじゃないんだ!! い、いや、そういうのかもしれないけどさ……。そこだけを見てほしくないっていうか、ほら……。いいからやってみ?
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――う、うろたえぶりがハンパじゃないですね。そのわりにこのスクリーンショットを見せてくるのが、なんとも……。
カワチ:そ、そんなことはどうでもいいから、これを見てみろ。キャラクターが3Dで表現されているんだぞ? すごくない!?
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――あ、そうですね。3Dですね。
カワチ:あれー? なんか淡泊な反応……って、イマドキ3Dで表現された映像なんて珍しくもないか。だが、本作が発売された2003年当時は、3Dでこれだけのキャラクターたちが動くっていうのは本当に珍しかったし、ましてやそれがちゃんとかわいく表現されているっていうのは極めて稀だったんだぞ。昔はカクカクした3Dも多くてだな……。
――そ、そんな時代が……。スマホでゲームをしていると3Dのキャラクターばかりなので、想像がつきません。
カワチ:まぁ『ゆめりあ』も、今のゲームと比較しちゃうとさすがに3D表現が優れているってわけじゃないけど。ただ、キャラクターをかわいく見せることに対してスタッフが徹底的にこだわっているのはわかるから、ものすごく好感触なんだよね。
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――えぇ、まぁ……はぁ。
カワチ:ちなみに『ゆめりあ』は、ナムコ(現・バンダイナムコエンターテインメント)からPS2で発売されたアドベンチャーゲームで、TVアニメ化もされたし、当時はかなり話題になったタイトルなんだぞ。PCのベンチマークソフト「ゆめりあベンチ」もその筋には有名だな。ゲームはやったことがないけど、ベンチマークソフトのほうは知っている……なんて人も少なくないんじゃないはずだ。あと、抑えておきたいのはコミック版! こちらは桂遊生丸さんが手掛けているんだが、女性作家さんならではの繊細な描写がこれまたいいんだよ。デフォルメされたキャラクターの顔がじつに素晴らしい。(>3<)←よくこんな顔をするんだけど、もう本当にかわいくてかわいくて……。
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――そ、そうなんですか!(……マスターが(>3<)な顔をしても気持ち悪いだけっていうのは、きっと言っちゃいけないんだろうなぁ……)
カワチ:うむ。本編の話に戻ると、『ゆめりあ』の物語を手掛けたのはアニメの『トライガン』や『無限のリヴァイアス』の脚本などを担当した黒田洋介さんだ。……だから単なるロリゲーじゃないんだぞ! ストーリーも濃密なんだぞ! まぁ、どちらかというと『ゆめりあ』は『天地無用!』や『マケン姫っ!』を手掛けたときの黒田さんが近いけどな……。
――そ、そこらへんのタイトル、ぶっちゃけ全部知りませんけど、物語がおもしろいのであれば遊んでみたいかも。って、パッケージや写真からはとてもそんなゲームには見えませんね。
カワチ:いやいや、序盤こそ学園ラブコメの要素が強いけど、後半は結構ガチのSFストーリーが展開するからめちゃくちゃ引き込まれるぞ。なんなら、ちょっとストーリーやキャラクターについて詳しく説明してやろう。
――はぁ、そこまで言うのならぜひ……。
カワチ:ストーリーは主人公の三栗智和(みくりともかず)が、夢の中でひとりの少女と出会うところからはじまる。最初、その少女は謎の敵と戦っているのだが、敗れて倒れてしまうんだ。慌てて駆け寄った智和は、彼女に触れたことで謎の光に包まれる。そしてその瞬間! なんと智和には、女の子に触れることで彼女たちの力を引き出すことができるという不思議な能力が備わっていることが判明するわけだ。
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――お、おお。なんかライトノベルみたいな設定ですね。
カワチ:まぁ、今となってはありがちかもしれん。だが、主人公が不思議な力を秘めているというのはロマンだろ? ちなみに、本作には敵と戦う戦闘パートもあるんだけど、女の子の好感度が上がると、触れてチャージできる場所も手から肩、腰とどんどんグレードアップしていくんだ(笑)。これがじつにたまらんのだが……まぁ、今はそれは置いておこう。ひとまず、力を引き出された不思議な少女が見事敵を倒したところで智和は目を醒ますんだが、なんと目の前には、さっき夢の中で出会った少女がいるんだよ! 夢で出逢った少女が現実世界に現れる……これもよくある展開といえばそれまでだが、やっぱりワクワクするよな? するだろう?
――し、しますね。憧れますね。
カワチ:わかるかい同志よ。この出来事がきっかけで、夢の世界に入り込むことができるようになった智和は、ヒロインたちとともに謎の敵“フェイドゥム”と戦っていく……大まかなストーリーはこんなところだな。ちなみに主人公の智和が、男の俺から見ても好感の持てるいいヤツなのもじつに素晴らしい。ハンバーグとカレーライスが好物っていう小学生みたいな設定でさ、なんというかイヤミがないんだ。主人公に感情移入しやすいかどうかは、この手のゲームでものすごく大切な部分だからな。
――お、王道ですけど、それだけに面白そうですね。
カワチ:ワクワクしてきただろう? 実際にプレイすると、シナリオのクオリティがじつに素晴らしくてな。ギャグのキレやテンポが秀逸で、楽しい雰囲気を存分に味わうことができる。3Dで表現されたキャラクターたちも、細かく動き回るから見ていて楽しいし。
――うわ……ホントによく動くなぁ……ここらへんの表現は3Dならではですね。
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カワチ:おう、敢えて何度でも言おう。なんだかんだで『ゆめりあ』の最大の魅力は、この3Dで表現されたキャラクターにある。公式サイトにあるディレクター・有田さんのコメントには「ディレクターとして、リアルタイム3Dで表示する事で「ここにキャラクターが居る」という感じを出すことを重視した。大げさでもいいので常にキャラクターを動かし、ボタンを押すことで即座に女の子が反応してくれる、そうすることで感じる「動きのリアル感」はゲームでしか味わえないでしょう」といったことが書かれている。やっぱりそこを見てほしかったんだろうな。ちなみに、ゲーム中は3Dモデルをじっくり見るパートも用意されている。俺は勝手にドスケベモードと呼んでいるが(笑)。どうだ、見たいかね? 見たいよね?
──み、見たいです。

カワチ:聞こえないよ! もっと大きな声で! 気持ちを込めて!!

──み、見たいですっ!!
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カワチ:おう、だいぶ素直に自分の気持ちを言えるようになってきたじゃないか。いい傾向だ。……ちなみにプロデューサーの柳沢さんは「プレイヤーに向けられた女の子の気持ちが、セリフの情報だけでなくて体のポーズや身振り、動きや表情で伝わらなければいけないと思ったのです。そして、その動きは女の子それぞれのキャラクター性に根ざしたものであるべきです。つまりモネにはモネの、みづきにはみづきの喜び方や恥じらう姿があって欲しいと思った」と語っている。つまり、ヒロインそれぞれで作り込みがまったく違うってわけだ。いかに気合いが入っているかがわかるだろう? あのナムコが『アイドルマスター』という3Dのアイドルゲームをヒットさせたのも、この『ゆめりあ』という前身があったからこそだと思うね、俺は。
――な、納得。納得です。
カワチ:逆に、戦闘パートに登場する敵は丸とか四角のやる気が感じられないデザインばっかりで、もうちょっとこっちもがんばってほしいと思ったがな(笑)。まぁ本作の戦闘はおまけみたいなものだからいいんだけどさ。
――いやいや、女の子に全力を込めてもらった方がいいに決まってます。
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カワチ:うむ。ほかに『ゆめりあ』がおもしろいところは、TVアニメを意識した構成になっているところだな。それぞれの話のあいだにはプロローグとオープニング曲が挿入されるんだが、これらがまたよくできているんだよ。途中から文字が自動送りになって、セリフにオーバーラップしながらボーカルが流れてくる演出は絶妙としか言いようがない。
――お、おもしろそう。本気でこのゲームのことが気になってたまらなくなってきました……。
カワチ:そうだろそうだろ。じゃあ次はヒロインたちを紹介してあげよう。まずはモネ。智和が夢世界で出会う最初の女の子だな。彼女の特徴は「もね」としかしゃべれないことだ。
――えぇ!?
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カワチ:もともと夢世界の住人だから現実世界の言葉をしゃべれないんだ。イロモノに思われるかもしれないけど、『ゆめりあ』は3Dのキャラクターがウリのゲームだから、しゃべれないけどがんばって身振り手振りでこちらに感情を伝えようとしてくモネは、まさに本作を象徴するヒロインなのさ。
――な、なるほど。かわいいは正義ですしね。
カワチ:次は吾妻みづき。智和とは小学校のときからクラスメイトの女の子で、ポジションとしては完全に世話焼き幼なじみだな。
――幼なじみ……これまたいいですね。
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カワチ:そうだろう、そうだろう。ちなみに彼女が勉強を教えてくれるイベントでは、メガネをかけてくれるんだよ。これがまた、普段とのギャップにドキッとするんだよな。
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――女教師っぽくてステキです。僕は大好きです。
カワチ:うむ。ストレートなリアクションでよろしい。続いて千条七瀬。智和と同居している従姉で、おっとりとした天然ボケのお姉さんだな。また、声を担当している井上喜久子さんがピッタリなんだよなぁ! どう? 甘えたくならない!?
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――甘えたいです。ずっとずっと甘えていたいです! 
カワチ:キミ、意外とリビドーに忠実だなぁ。『ゆめりあ』の物語中盤には水着回があるんだけど、七瀬さんの水着がまた刺激的なんだよ。モネのスクール水着もある意味ヤバいが、七瀬さんの水着はこう……な。心の底からヤバいんだこれが。
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――こ、これは、ヤバい……です……(前かがみになりながら)。
カワチ:フフ……店内での暴発には注意してくれよボーイ。続いて千条九葉。七瀬さんの妹で、ちょっとませたところのある女の子だな。今は海外で過ごしているが、昔は智和と暮らしていたこともある。
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――マセていますね……今でいうツンデレキャラクターって感じですか?
カワチ:そうだな。そこまでツンでもないけど(笑)。ちなみに彼女はバストサイズ73cmと比較的小ぶりなハズなんだけど、なぜかゲーム中は結構ゆれるんだよな。
――そ、そうなんですか(ごくり)。
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カワチ:次は、ねねこ。彼女については謎なのだ。
――へ? な、謎ですか。
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カワチ:ああ、智和が街でたびたび出くわす女の子なんだが、いつも謎を探しているんだよ。
――そ、それは謎ですね。不思議ちゃんってやつですか。
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カワチ:ただ、2012年に3DSで発売されたカプコン、セガ、バンダイナムコゲームスのゲームキャラクターが共演するクロスオーバー作品『PROJECT X ZONE』では、本作から彼女がゲスト参戦したくらいだし、人気キャラクターであることは間違いないな。
――メインヒロインのモネを差し置いてねねこが……。
カワチ:ねねこは見た目のインパクトも強いからなぁ。彼女の感情に合わせてピコピコ動く猫耳風の頭巾はいちど見たら忘れないと思う。マジでかわいい。
――な、なるほど。
カワチ:あとは夢世界で出逢うシルク。現実世界の記憶は持っていないが、物事を冷静に判断するクールビューティ―で頼りになる女性だ。俺がいちばん好きなキャラクターでもある。
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――あ、あれ……この見た目……そうか、この女性って七瀬さ……。
カワチ:バッ、ちょ、おま! それは言うなよ。言っちゃあダメだよ。空気を読まないと、空気を。
――ビクッ! 空気を読む……べ、勉強になります。
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カワチ:社会に出るとな、わかってても言っちゃいけないこともあるんだぜ。……さぁ、これが『ゆめりあ』に出てくるメインキャラクター全員だな。どうだった? どのキャラクターも生き生きとしていてかわいいからぜひゲームのなかで見てみてみてくれ!
――は、はい、でも、なぜこのゲームをボクにオススメしたんですか?
カワチ:フフ、それはな……。
■言葉なんてしょせんは飾りだ! 全力で想いを伝えろ!!
カワチ:先ほどキミは、口下手だから面接がうまくいかないって言っていたよな。しかし! モネは「もね」としかしゃべれないのに、しっかりコミュニケーションがとれている。これがどういうことかわかるか?
――ウッ。そ、それを言われてしまうと……。
カワチ:しかも、夢世界の住人で現実世界のことなど何も知らないのに、文句ひとつ言わずに……なんて健気な……。まぁ、そんな彼女だから失敗もしちゃうんだけどな。智和が「教科書もテストも、みんななくなればいいのに……」と言っているのを聞いて、本当に答案用紙を燃やそうとしちゃったりとか。
――えぇ!? も、もはや天然ってレベルを超えてるっ!
カワチ:でも、しっかり反省もするし、成長もするんだぞ。物語が進むと「もね」だけでなく「ともかず」としゃべれるようになったりとかな。最初に覚える単語が主人公の名前……なんて素晴らしい演出かっ! あのときは、まるで自分の子どもがはじめてしゃべったときのような感動だった……。
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――こ、このくちびるのドアップ……なんだろう、ものすごくドキドキするんですけど……。そ、それにしても、マスターってお子さんがいるんですね……。
カワチ:いや、いないけど。勘だけど。
――わ、わかりづらいネタを放り込んでくるのは勘弁してください……。で、結局モネって何者なんですか?
カワチ:うーん、それを説明するには『ゆめりあ』の世界に隠された謎から説明しないといけないな。けっこうなネタバレになるけどいいかい?
――は、はい。
カワチ:そもそも“夢世界・モエラ”というのは人間の無意識化のヴィジョン、すなわち“夢”をみんなで共有している世界なんだ。そして、敵であるフェイドゥムの正体は、それぞれの人間が持つネガティブな感情が具現化したものなのさ。
――み、みんなで同じ夢を見ているということですか。
カワチ:ああ。そして、そのフェイドゥムは本来あるべき人間の感情に戻ろうとしてしているんだ。もしもそれを阻止できなかった場合は、“人が人を信じられなくなり、完全な個人として生きるしかない世界”という、暗い未来が待っている。人と人が会えば、必ず争いが起こる世界がな……。
――こ、こんなにかわいい女の子たちが出てくるっていうのに、なんてハードな設定……。僕なんか、とても生きていけないです。
カワチ:驚かないで聞いてほしいんだが、じつはねねこには、ネイトという別人格が隠れている。彼女は絶望の未来から転生してきた存在で、何度も転生を繰り返しつつ、すべてのターニングポイントとなったこの時代にやってきていたんだよ。それで智和にすべてを説明してくれる。絶望の未来を変えるためにな。
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――お、重い! 想像していたよりずっとヘビーです!!
カワチ:途中から物語がシリアスになるといっただろう。後半の『ゆめりあ』はガチなSFだよ。ちなみに、各キャラごとに用意されているルートをクリアしていかないと、全体のストーリーは見えてこないんだが、今回はモネルートに焦点を絞って話そう。ほかの裏話や設定が気にあるなら、ぜひゲームを購入して遊んでみてくれ。
――ず、ずいぶん推してきますね……。聞くからに『ゆめりあ』はガチっぽいけど、マスターも相当ガチですよね。
カワチ:そしてネイトの話を聞いていくうちに、智和は人類全体の連続する時間軸を変化させる力を持っていることが判明する。まぁわかりやすくいうと、人類の命運を変えてしまう能力だな。いかにも主人公って能力だろ? 人はそれぞれ少しだけ運命を変えることができるけど、智和はそれが人類レベルってことさ。
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――スケールが壮大になってきましたね。それで智和はどうするんです?
カワチ:あぁ……彼は悩みながらも戦いを決意する。そして、すべてが終わったあとの変革された世界でも、どこかに存在するモネと巡り合うため、夢世界で彼女との思い出や絆を深めようとするんだ。
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――え、つまりは現実世界にモネが存在するってことです? 彼女は夢世界の住人じゃないんですか?
カワチ:彼はその前提をくつがえすかのように、こんな仮説を立てるんだ。モネは現実世界のどこかで眠っていて、それでずっと夢世界にいたんじゃないか、と。戦いが終わって夢世界がなくなると、モネは帰るところはなくなる……だから智和は、そんな彼女に現実世界での居場所を作ってあげたかったのかもしれない。少なくとも、俺はそう思っているんだ。
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――か、彼自身、モネと別れたくなかっただけなのでは!?
カワチ:それもあるだろう。智和は「短縮学校」と名付けて、学校行事や四季折々のイベントを仲間やモネと次々にこなしていく。この思い出づくりがじつに切なくて泣けてなぁ……。イベント自体は騒々しくて楽しいものなんだけど、運命の日が近づいていることがわかったり、七瀬さんとの別れがあったりと、すべてがゆっくりと終焉に向かっていることが如実にわかるんだよね……。
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――そ、それで? それでどうなるんですか!? 智和は……モネはいったいどうなっちゃうんですか!?
カワチ:まぁそう感情的になるなよ。決戦の前日、自分に正直になった智和はモネに「明日からは、もう戦わなくていいんだ」「戦いのない世界で、ゆっくりお互いのことを知って好きになっていくんだ」と、自らの想いを伝える。そしてモネも「もねっ……モネを、つれていって…… ともかずといっしょの世界に…… もねっ……つれていって!」と答えてくれるんだ。
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――お、おぉ……。
カワチ:ただ、最後の決戦のさなか、ついにモネの正体が明かされることになってな。それはとても残酷なものだったよ。じつは彼女は、フェイドゥムの本体を倒すため、三栗智和と邂逅するためだけに130年間の時を眠っていた巫女だったのさ。ネイトの言葉でいうと「130年分もの爆発力を持つ人間爆弾」ってことで、な……。
――に、人間爆弾? そ、そんな……それじゃあまるで、人類のためにその身を捧げる生贄みたいじゃないですか……。
カワチ:でも彼女は最後の瞬間に「智和、私、今、すっごく幸せよ。最後にこんなに素敵な思い出が作れたんだもの。こんなに素敵な恋人になれたんだもの」と言葉を口にする。信じられるか? 最初は「もね」しかしゃべれなかった女の子がこんなことを言うんだぞ!? 自分の意思で!! ハッキリと!!!! ……そして、彼女は世界を救う。我々人類を救うために。
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――!!
カワチ:言葉を話せない女の子ですらこれだけのことを成し遂げ、最後は全力で気持ちを表現してくる。我々プレイヤーは、そんな姿に心を打たれる。これはゲームでも、現実世界でも一緒だと思うんだ。君が口下手で大変なのはわかる。だからといって、他人と交流することを諦めたら、そこですべてが終わってしまうだろう。面接のときとか、相手に自分を知ってもらおうとしてみたか? 最後の瞬間モネのように、ひたすらがむしゃらだったか? よく振り返ってみるといい。
――た、たしかに僕は殻に閉じこもっていました。真正面から人と交流することにビビっていましたよ。でも、この物語は残酷だ。モネのように全力投球したからって、幸せになれるわけじゃないってことを、思い知らされるだけじゃないですかっ!
カワチ:あれ、何か勘違いしてないか? モネは物語のラストで、智和のところに戻ってくるよ。この物語はハッピーエンドだからね。
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――そ、そうなんですか!? 僕はてっきり……というか、マスターも人が悪いなぁ。完全にダマされましたよっ!
カワチ:ハハハ。まぁ、世の中はそこまで捨てたものでもないってことさ。もちろん、すべてがうまくいくなんてことはないだろう。だけど、たとえ智和のように不思議な力なんか持っていなくなって、努力しだいで自分の運命ぐらいは変えられる。俺はそう信じているのさ。ただ、そのためには自分自身で考えて、勇気を持って行動していかなければならないんだけどな。
――……ちょっとクサいけど、たしかにその通りですよね。僕、こんなところで腐ってないで、もう1度頑張ってみようと思います。人と本気で触れ合うことにビビっていたら、前になんか進めませんからね。
カワチ:お前さんなら大丈夫だよ。現に、こうして初対面の俺とも臆せず話せるようになったじゃないか。これは大きな進歩だろう。
──た、たしかに! 僕だって人とコミュニケーションがとれるんだ……。マスター、今日はありがとうございました!
カワチ:フフ、ちょっとはいい顔になったじゃないか。次は就職が決まったあとに、また店に来てくれ。お祝いに一杯おごらせてもらうよ。
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第1回目のコラムはコチラ→『センチメンタルグラフィティ』
第2回目のコラムはコチラ→『ダブルキャスト』
第3回目のコラムはコチラ→『Quartett!』
第4回目のコラムはコチラ→『リフレインラブ2』
第5回目のコラムはコチラ→『風雨来記』
テキスト:カワチ(Makoto Kawachi) 1981年生まれ。ライター。ビジュアルノベルに目がないと公言するが、本当は肌色が多けれななんでもいい系のビンビン♂ライター。女性声優とセクシー女優が大好き。
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