安藤:でも、そう答えると質問した側としても「なるほど、天使の設定をわかっているな」と納得はできますもんね。
M.T:あと、先日開催された「Lobi感謝祭」で、グレシルのコスプレをしているコンパニオンのお姉さんがいて。もちろん、コスプレなのでおへそがあるんですよ。それでまたおへそ談義が盛り上がっちゃいまして(笑)。コスプレのお姉さんに「じつは先日、グレシルのおへそについてこういうやり取りがあったんです」ってその場でお話ししたら、ちゃんとひもでへそが隠れるようにうまくやってくれたんですよ。
安藤:それはコスプレのお姉さんもプロ意識がありますね。それだけ、ゲーム内のキャラクターが立っている証拠ともいえますよ。キャラが立っていないと、そもそもそういう議論にすらならないで、みんなの中でスルーされちゃいますからね。普通、キャラクターのへそに関して開発者とコスプレイヤーが話すなんてないですよ。とてもいいキャラクターを生み出している証拠ですね。では、そろそろM.Tさんの好きなゲームを教えていただけますか。
M.T:1本でと言われると、僕は『2Moons』というゲームを挙げます。日本では『DEKARON』という名前でリリースされていたMMO・RPGなんですけど、これはもともと『2Moons』というヨーロッパのゲームなんです。
安藤:『2Moons』ですか……月が2つある世界の物語なんですか?
M.T:そうです。世界観として、2つの月が重なるとき、世界が終わるという内容のものでした。じつは、このゲームを遊ぶまでの僕は人とコミュニケーションを取るのがめちゃくちゃ嫌いで、絶対に話さない、会話をしない人だったんです。学校のクラスメイトはおろか家族とも会話がなくて、本当に誰とも会話をしない生活をしていました。そんななかで、僕が初めてコミュニケーションを取ったのは、学校でも家族でもなくてこの『DEKARON』の世界だったんですよ。
安藤:頑なに人を寄せ付けなかったM.T少年は、ゲーム内の何がきっかけでコミュニケーションをとることになったんですか?
M.T:『DEKARON』って、いわゆるPK(Player Kill)ができるゲームなんですけど、僕はそのゲームを始めたばかりの頃、見ず知らずの人にPKされたんですよ。それにものすごく腹が立って「絶対こいつをPK仕返してやる」と心に近い、相手のキャラ名をメモに控えたんです。そのとき僕はレベル30くらいだったんですけど、PKを仕掛けてきた相手はレベル120とかで。そりゃもう、逆立ちしても絶対勝てないような相手だったわけです。当時、レベル120まで上げるのに3~4カ月かかるといわれていましたが、僕は1カ月でそこまで到達して、相手へのリベンジを果たすことができました。
安藤:おお、ちょっと怖いくらいに執着していたってことですね。でも、通常の3倍くらいの勢いでハマっていたってことでもあるわけか。
M.T:ええ。それで僕は、そのゲームで初めてNo.1を取ったんです。ゲーム内で1番強い人間になったんですよ。そこで「強いですね」「すごいですね」ってみんなに褒められて、それをきっかけにコミュニケーションをとることになりました。
安藤:みんなから認められた、という瞬間がゲームで初めて起こったんですね。そこまでは復讐の鬼だったけれど、1位になった瞬間に認められるという経験があって、コミュニケーションをとるようになった。
M.T:そこから、やっと学校で友だちとコミュニケーションを取るようになりました。今度はその友だちも誘ってゲーム内で最強のギルドを作り、さらにはゲーム内の最強メンバーをそろえて、チーム戦でもNo.1になりました。最終的には僕らしかそのサーバーにいなくなるぐらいまで遊んでいましたね。それぐらいの勢いでハマったゲームでした。最後までやりきったというか。
安藤:文字どおり、ゲームにいろいろ助けられたというか、M.Tさんがみんなと普通にしゃべれるようになったのは『DEKARON』のおかげだったんですね。
M.T:そうですね。色々な意味で、とても感謝している忘れられないゲームです。
安藤:わたしを含めた我々の世代は、ゲームクリエイターという仕事がなかったら、何をしていたかわからないような人の集まりなんです。今でこそ、大手のゲーム会社に務められると親御さんからは喜ばれると思いすが、わたしたちの時代は親戚を含めて、全員に反対されるようなことも多くて。ある意味、つぶしがきかない人が集まるような仕事だったとも言えるんですよね。だからこそ「何かおもしろいことを成し遂げよう」「我々はゲームを作ることでしか救われない。だった、すごいものを作ってみんなをワクワクさせたい」ってところがありまして。
でも、今ってちょっと違うというか、ゲームがビジネスになっている部分がある。それは業界として成熟してきた証でもあるんですが、新卒者の面接なんかを担当していたら、ゲームを作りたいからゲーム会社を志望しているわけではなく、大手企業だから安定しているだろう……といった人が意外と多くいることにビックリして。
つまるところ、今どきのゲームはそんな人たちが作っているのか、って愕然としたんですよ。ゲーム屋だと思っている自分からすれば、言葉を選ばずに言うと「そんな考え方だったらゲームなんて作らんといてほしいな」って感じるんですね。本来、ゲーム以外には何もないっていうぐらいの人がゲームを作るべきだとわたしは思っているんですけど……って、大分お話が逸れてしまってお恥ずかしいのですが。
飯沼:いえいえ、とても安藤さんらしいアツい言葉でしたよ。
安藤:何を言いたかったかというと、今のところスーパーアプリは、そういった「ゲームを作ることでしか救われない」っていうような人たちが集まって、モノ作りをしている会社だなと感じたってことです。みなさんと、とりわけM.Tさんとお話をしていて、強くそう感じました。ここでM.Tさんから「そんなことないですよ」「Webサービスもアリです」って言われたら、トークとしては最高のオチなんですけどね(笑)。
M.T:(笑)。でも、少なくとも僕なんかは、ゲームのこと以外はあまり得意ではないので。その一方、ゲーム……とくにMMO・RPGに特化していうと、僕よりMMO・RPGについて知っている人は世界に10人くらいしかいないとも自負しています。それくらいゲームをやりましたね、僕は。
安藤:M.Tさんはとりわけ突出しているのかもしれませんが、ここにいるメンバーは多かれ少なかれ、そういう側面を持った人たちばかりだと思います。あらためて、スーパーアプリという会社が際立っている部分が垣間見えた気がしますね。では、ここからはデザイナーチーム。女性メンバーにもお話をお聞きしていきましょう。(インタビュー後編に続く)
インタビュー後編:これからのゲームクリエイターに必要となるたった一つのモノ
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