──は、はぁ。聞いたことないんですけど、有名なゲームなんですね。
カワチ:あぁ、有名も有名………有名すぎるがゆえにこのギャルゲーBARでも敢えて取り上げなかったぐらいだ。とはいえ、PCでこの作品が発売された20年前は今ほど“萌え”がメインカルチャーとして語られることがなかったから、世間的な知名度が高かったわけじゃないけどね。でもアニメ化もされたし、PS版も10万本以上の売上だったし、オタク界隈ではすごい勢いだった。
東鳩の愛称が生み出されたりと、とにかくファンが熱くてね。二次創作がものすごく盛んだった。オレも『Go!To!Heart』というマンガが大好きで、フロッピーで買ってたものさ…………。
──遠い目をしている……。そこまで人気ということは、よっぽどストーリーが斬新だったりしたんですかね?
カワチ:いや、じつはそういうわけでもないんだ。『ToHeart』を発売したLeafはそれまで『雫』や『痕』というカルトな伝奇モノを発表していたんだが、次はもっと広く売れるものを作ろうということで王道のラブコメを作ることになった。それがこの『ToHeart』なんだよ。だから『ToHeart』は正統派な学園ラブコメなんだ。
──なるほど……。ボクは王道って嫌いじゃないですよ。安心して楽しめるし。
カワチ:ああ。「王道=退屈」って人もなかにはいると思うけど、丁寧に作られた王道ストーリーほど人の心を揺さぶるものはないからな。あと、サスペンスを発表してきたLeafが王道ラブコメを作るということ自体が、これまでのLeafへのカウンターになっていて話題になった。
ちなみに『ToHeart』制作の経緯は
TINAMIX INTERVIEWに詳しく載っているので参考にしてくれ。『ToHeart』に限らずビジュアルノベルの制作論とか本当に目からウロコの話ばかりなので、ぜひチェックしてみてほしい。
──おぉ、今でも読めるんですね。
カワチ:このインタビューで『ToHeart』のキーマンである高橋龍也さんは「だから『To Heart』でやりたかったのは「一緒にいて楽しい」ということなんです。性欲を抜きにしても、一緒にいて楽しい女の子を」と言っているんだが、これがすべてな気がするよ。当時のファンも、その楽しい時間を共有したくて2次創作をしていたんじゃないかな。
──なるほど。ちょっと気になってきました。プレイしてみようかな。