【後夜祭】内気な人間はいかにして友だちの輪になじめばいいのか?【ギャルゲーBAR☆カワチ_第26回】
都会の喧騒から少し離れたところにひっそりと佇む"ギャルゲーBAR☆カワチ"。ここは、日々繰り広げられるコンクリートジャングルでの生存戦争に負けそうになっているメンズたちのピュアハートを、ゲーム好きのマスターが「ギャルゲートーク」で癒してくれるという、シシララTVオススメのゲームBARなのだ……。
そんな体裁でお送りするギャルゲーコラム。気になる第25回目のお客様の悩みと、その痛みを癒してくれるゲームとは?

第23回目のコラムはコチラ→『同級生2』
第24回目のコラムはコチラ→『サーカディア』
第25回目のコラムはコチラ→『ToHeart』

■あの美樹本晴彦さんがキャラをデザインしたギャルゲーがあった!?

カランカラン……。

カワチ:いらっしゃい。

──あ、ど、どうも。

カワチ:……。

──……。

カワチ:ん? どうした。好きなところに座りなよ。

──は、はい。

カワチ:お客さん、ご注文は? ここはギャルゲーBARだから、古今東西いろんな美少女ゲームを取りそろえているぜ。

──え、えーと。なんでもいいです……。

カワチ:そうなのか。じゃあ『ダブルキャスト』とかどうだい? サスペンス風味なんだけどヒロインが可愛くてな。あとケツもエロいぞ。

──あ、えーと、すみません……。怖いのはニガテで。

カワチ:うーん。じゃあ『Ever17』はどうだろう。ヒロインも魅力的だし、ストーリーもじつによくできているんだ。ちょっとプレイ時間は長めだけど、やってみるかい?

──ご、ごめんなさい。仕事が忙しくてあまり時間がかかるゲームは……。

カワチ:おいおい。なんでもいいと言いつつなんでもよくないじゃないか。最初にちゃんと言ってくれよ。

──す、す、すみません。自分、いつもこうなんです。口下手でなにも言えないから仕事でも主体性がないって怒られて……。それで部署異動までさせられたんですけど、そこでも孤立してしまっていて……。

カワチ:なるほど、そいつはたいへんだ……。でも、そんなお客さんにピッタリのゲームがあるよ。『後夜祭』ってタイトルなんだけど。
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──『後夜祭』……ぜんぜん聞いたことがないゲームですね。

カワチ:まぁ、正直ちょっとマイナーなゲームだからね。1999年にSEモバイル・アンド・オンラインから発売されたタイトルで、2002年にはサクセスの「SuperLite 1500シリーズ」で廉価版も発売されている。今はゲームアーカイブスでも配信されているから、PS3やPS Vitaで手軽に遊べるよ。

──そうなんですか。今でも遊べるのはうれしいですね。

カワチ:ああ。そんな本作だが、最大のポイントはなんといっても美樹本晴彦さんがキャラクターデザインをしていることだ。
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──このイラストのタッチは見たことがあります……もしかして美樹本晴彦さんって!?

カワチ:そうさ。『超時空要塞マクロス』や『トップをねらえ!』、最近だと『甲鉄城のカバネリ』なんかのキャラクターデザインで知られるアニメ界の大御所さんだ。

──も、ものすごいビッグネームじゃないですか。そんなゲームがあったんだ……。

カワチ:ああ、PlayStationの公式サイトにも「美樹本晴彦キャラクターデザイン&作画監督で100パーセント参加!」と書いてある。「100%参加」という日本語の意味はちょっとがわからないが、とにかく自信が伝わってくるよな。アキラ100%ならぬハルヒコ100%ということだ。

──そ、そうですね……。でも、いったいどういうゲームなんですか? 『後夜祭』っていうぐらいだから学校の後夜祭が舞台とか?

カワチ:うむ。高校最後の学園祭を仲間とともに成功させることと、そして最終日の後夜祭で親睦を深めたクラスメートといっしょにダンスパーティを過ごすことが目的となるゲームだ。最近は壮大なストーリーのギャルゲーが多くなったが、こういった日常を切り取ったものも昔はたくさんあったんだよ。話もコンパクトにまとまっているから、サックリ遊べるのも魅力といえるね。

──自分も社会人であまり長い時間はゲームを遊べないので、サックリ遊べるのはありがたいです。

カワチ:ボリュームの少なさは当時のフルプライスでは不満といえるかもしれないけど、ゲームアーカイブス版が安価で手に入る今なら気にならないと思うな。ゲームの冒頭で文化祭の出し物を「模擬店」にするか「お化け屋敷」にするか、それとも「人力飛行機」を作って飛ばすかを選択できるんだけど、選んだものによってストーリーも変わるしね。全ルート、全キャラクターのエンディングを見ようと思ったら、けっこう時間もかかるぞ。

──へぇ、出し物とか選べるんですか。おもしろそう。
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カワチ:ああ。本作は女性キャラクターたちがかわいいのはもちろん、男性キャラクターたちもいい味を出していて、そこがおもしろいんだ。男子が女子のシャワーを覗くお約束のイベントがあるんだけど、なぜか女子が覗き返すイベントもあったりしてな。
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──そ、それは誰得なんですかね……。

カワチ:ハハハ。ギャルゲーだから女の子と仲よくすればいいってか? 違うんだな。やっぱり雰囲気や世界観は重要だよ。男女の仲がいいほうが、なんか青春っぽい感じがしていいだろ?

──たしかにそうですね。女の子と仲よくなるだけでは味気ないかもしれません。
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カワチ:ああ。ギャルゲーに限らずゲームってさ、いかに感情移入できるか……その世界に浸っていたいと思わせてくれるかが重要だと思うんだ。で、本作には男性キャラクターにもイベントがたくさん用意されているんだよね。さらに、魅力的なサブヒロインまでいたりするから、当時は「男性キャラにイベントの労力を費やすならサブヒロインにエンディングを追加しろ」なんて意見も出ていた(笑)。
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──そう言いたくなる気持ちもわかりますね。

カワチ:まぁ、サブヒロインはサブという位置づけだからこそ輝くものがあると思うんだけどね。ちなみに学園祭の準備はシミュレーションっぽくなっていて、キャラクターを各作業に配置していくことになる。とはいえ難易度は低く設定されているから、適当にやっててもちゃんと成功するわけだが。むしろ、狙ってやらないと失敗しないかな(笑)。
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──そうなんですか? 自分はゲームがそんなに得意じゃないので助かりますけど。
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カワチ:ゲームの冒頭で主人公を含めた6人が学園祭実行委員に選ばれるんだけど、その後の選択肢によってメンバーが増えて最大で9人になるんだ。その9人で作業すれば文化祭は確実に成功するよ。おもしろいのは、特定の女の子と仲よくなってくると、ほかのメンバーが気をつかって2人きりにしてくれるところだな。
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──空気を読んでくれるんですね! 優しいなぁ。

カワチ:目の前でイチャイチャされても困るだろうしな(笑)。

──なるほど。たしかにおもしろそうなゲームですね。マスターの話を聞いてプレイしたくなってきました!

カワチ:そうだろう。それでお前さんにはできれば攻略してもらいたいヒロインがいるんだ。

■折笠愛さんの演じる大人しい少女に心がつかまれる!

──ん? そうなんですか?

カワチ:ああ。もちろん気に入ったヒロインを選んでくれればいいんだけど、今のキミの現状を打破するヒントになるであろうヒロインがいてね。

──ぜ、ぜひ教えてください!

カワチ:フフ……。いいぞ前向きになってきたじゃないか。そのヒロインの名前は伊藤沙絵(いとうさえ)。初期メンバーではなく、主人公に誘われる形で実行委員に参加する女性だ。
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──あ、かわいい……。でも、なんだか暗そうな女の子ですね? 自分がいうのもなんですけど。

カワチ:そうだな。暗いというか、ミステリアスというか。じつは俺、こういうタイプに弱いんだよね。やっぱりクラスの人気者っぽい女の子より、孤立している女の子のほうが特別感があっていい……この出会いがボーイ・ミーツ・ガールのはじまりって感じがしてね。

──そうなんですか? 自分は明るくていろいろ引っ張ってくれる女性も好きですけど。

カワチ:そうか。俺はクラスの人気者と自分が付き合っているイメージが作れなくてな……。“運命の出会い”や“奇跡”というフィルター越しでないと、学園モノに感情移入できない部分があるわけさ……。

──ギャルゲーマスターなのに……。

カワチ:ん? なにか言った?

──いえ、なんでもないです……。

カワチ:話を戻すぞ。キミの指摘どおり、沙絵はいつも窓際で外ばかり見ているような、クラスで一番目立たない女の子だ。注目してもらいたいポイントはキャラクターボイスだな。この子はね、それまで「色っぽい女性」や「勝ち気な女性」を演じるイメージが強かった折笠愛さんを起用していて、新たな化学反応を引き起こしているんだよ。この声を聴いて、沙絵のようなおとなしい女の子の抑えた演技もいいなぁ……って思ったものさ。

──そうなんですね。声もしっかり聞いてみたいと思います。
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カワチ:ああ。大人しい沙絵だけど、ちょっと天然なのかなと思えるところもあって、そこもカワイイんだ。昼休みや一緒に下校したときに会話ができるんだけど、好きな食べ物を聞くと「美味しいものです」、「嫌いな食べ物」を聞くと「美味しくないものです」と応えたりしてな。かわいいだろ?

──素直なんですね。ちょっと笑っちゃいます(苦笑)。

カワチ:「会話を広げる気はないの!?」って思っちゃうよな。でもそこがピュアでいいんだよ。たこ焼きの材料になるタコに同情して話しかけたりね(苦笑)。あと、基本的に主人公のことを立ててくれるところもいいんだ。大和撫子って感じでさ。口数こそ少ないけど、いっしょにいてホッとする存在だ。

──いいですね。癒やされたいです……。

カワチ:ただ、そんな彼女だからこそ、失敗したり誤解されちゃったりもするんだよな……。

──え?

カワチ:仲間に確認しないで作業を進めちゃったり、自分1人でがんばりすぎて倒れちゃったり……。なんというか、不器用なんだよな。
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──そんなことしてたら孤立しちゃいそうですけど、大丈夫なのかな……。

カワチ:そうなんだけど、仕方がないとも思うんだよ。もともと友達もいなくて、クラスでも浮いていた存在なんだからね。人間、急には本質を変えられない。ただ、主人公に「意志はきちんと伝えないとわかってもらえない」と言われて、彼女は気づくんだ。自分の気持ちを口にして、相手に伝えることの大切さを……ね。そしてそれをきっかけに、彼女は少しずつ成長していくことになる。
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──気持ちを伝えることが大切……。マスターのいいたいこと、なんとなくわかった気がします。

カワチ:別に無理して明るく振る舞わなくてもいい。でも、想いは言葉にしなければ伝わらないんだ。1人でモヤモヤしていたって、何も解決しないと思うぜ。だったら、誰か話しかけやすい人に相談してみなよ。そこからすべてが始まる。自ら行動することで、キミの風向きはきっと変わると思うんだ。

──そうですね。すぐに諦めたりせずに、もっと自分の気持ちを出してコミュニケーションをとってみようと思います。マスター、ありがとうございました!

カワチ:おう。たいへんだと思うけど、がんばりなよ!
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テキスト:カワチ(Makoto Kawachi) 1981年生まれ。ライター。ビジュアルノベルに目がないと公言するが、本当は肌色が多ければなんでもいい系のビンビン♂ライター。女性声優とセクシー女優が大好き。
ツイッターアカウント→カワチ@kawapi

第1回目のコラムはコチラ→『センチメンタルグラフィティ』
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第9回目のコラムはコチラ→『ルームメイト・麻美 -おくさまは女子高生-』
第10回目のコラムはコチラ→『Ever17 -the out of infinity -』
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