──えっと、『沙耶の唄』?
カワチ:あぁ、ちなみにアダルトゲームで18禁だから気をつけてくれ。それなりにグロいシーンもあるからな。
──おいおい。なんで小学生の娘の相談に来てエロゲーをプレイしなきゃいけないんだ。もしかして、俺をからかってるのか?
カワチ:大真面目だよ。むしろ、エロゲーだからって偏見はよくないぞ? 『沙耶の唄』の脚本を手掛けた虚淵玄さんは、TVアニメの『魔法少女まどか☆マギカ』や『仮面ライダー鎧武/ガイム』の脚本も手掛けている人気作家だし、クオリティは担保できる。
──そうなのか? 仮面ライダーの脚本というのはすごいな……。
カワチ:ああ。今、アニメのシナリオライターやライトノベル作家として活躍している人のなかには、エロゲー業界出身の人も多いんだよ。もともと実力がないと生き残れないシビアな世界で戦っていたんだから、作る作品のクオリティは折り紙付きってわけさ。
──そうなのか……。なんだか偏見みたいなものがあったみたいだ。すまなかった。
カワチ:気にするな。で、『沙耶の唄』の話に戻すと、もともとは2003年12月26日にアダルトゲームブランドのニトロプラスから発売されたビジュアルノベルなんだ。2018年の12月に、ノベライズ版が星海社から発売されたことでまた話題になったんだよ。
──2003年のゲームが2018年にノベライズってすごいな!
カワチ:ああ。しかも第1巻は原作をなぞるような内容だったが、予定されている続巻は作者が「真っ向続編です」とツイッターで発言しているくらい気合が入っていてね。まさかエンディング後のストーリーが描かれるとは思っていなかったから、驚いているファンも多い。
──へぇ~!
カワチ:第1巻も評判が高いからね。俺も続きを楽しみにしている。ちなみに『沙耶の唄』はアメコミにもなっているんだ。
──え? アメコミ?
カワチ:ああ。キャラクターたちがめちゃくちゃ濃い顔になっていて、申し訳ないけどかなり笑えるんだ。
ニトロプラス オンラインストア
──わぁ! 本当に濃いなぁ……(笑)。
カワチ:ニトロプラス10週年のイベント「NITRO SUPER SONIC 10th Anniversary」で電撃発表されてさ。じつは俺もその現場にいたんだけど、そのときの空気は忘れられないな(苦笑)。
──これだけ絵柄が変わっちゃえばね……。で、そろそろどんなストーリーなのか教えてもらいたいんだが。
──ああ。それもそうだな。ちなみに最初のほうにも言ったがグロい作品なので気をつけてくれ!
■すべてが不快に映る世界で出会う、不思議な少女
カワチ:本作の主人公は匂坂 郁紀(さきさか ふみのり)。彼は普通の医大生だったが、交通事故に遭って生死の境をさまよう。最新の医療技術で、硬膜下血腫の除去手術をしたことにより、身体は回復するんだけど後遺症が残ってしまってな。
──後遺症……いったいどんな?
カワチ:知覚障害だ。風景や人物が不気味な肉塊のような姿形に見えるようになってしまうし、声もノイズが入っていて聞き取ることが困難になってしまうほどのな。……これは実際にグラフィックを見てもらったほうが早いだろう。上が通常の視点で下が郁紀の視点だ。