【沙耶の唄】世界を侵す恋の真実を理解することで子育ても上手くなる【ギャルゲーBAR☆カワチ_第28回】
都会の喧騒から少し離れたところにひっそりと佇む"ギャルゲーBAR☆カワチ"。ここは、日々繰り広げられるコンクリートジャングルでの生存戦争に負けそうになっているメンズたちのピュアハートを、ゲーム好きのマスターが「ギャルゲートーク」で癒してくれるという、シシララTVオススメのゲームBARなのだ……。
そんな体裁でお送りするギャルゲーコラム。気になる第28回目のお客様の悩みと、その痛みを癒してくれるゲームとは?
第25回目のコラムはコチラ→『ToHeart』
第26回目のコラムはコチラ→『後夜祭』
第27回目のコラムはコチラ→『メモリーズオフ6』

■『魔法少女まどか☆マギカ』などで知られる虚淵玄氏が手掛けた初期代表作

──こ、ここがギャルゲーBARか。もう予約した時間だけど開店してるのかな。なんか薄暗いし……。

カワチ:あdkgkfdぁkふぁおえあがp@!

──わ、わぁ! なんだ!?

カワチ:くぁwせdrftgyふじこlp!

──お、お化けだ~! 助けて~!!(バンバン!)

カワチ:イタッ! 痛い! 俺! 俺だよ、この店のマスターだよ!! 殴るのをやめてくれ!

──な、なんだ。てっきり不審者かと……。というか怖いマスクをつけて俺を驚かすつもりだったのか?

カワチ:フフフ。久しぶりにお店に予約が入ったのがうれしくてね。ついサプライズを用意してしまったのさ。驚いた?

──そんなくだらないことしてるから、お客さんが来ないんじゃないの?

カワチ:そ、そんなことないもん!

──いや……ぶりっこされても可愛くないし……。

カワチ:ほっとけ! そんなことより悩みがあってここに来たんじゃないのか? 予約してまでお店に来たってことは、俺に話したいことがあるんだろう?

──そうだった! こう見えて、俺には小学生になる娘がいるんだが、じつはこの子がYouTubeの動画にハマッていてね……。

カワチ:時代だねぇ。でも、それの何が問題なんだ?

──動画を見ているだけならよかったんだけど、将来はYouTuberになりたいって言いだしててね……。

カワチ:ほう。最近の小学生のあいだではYouTuberがなりたい職業ランキング上位だって聞いてたけど、本当なんだな……。

──YouTuberって目立ってなんぼだから、過激なことをして問題になることも少なくないだろ? それもあって、なんだか心配でね。

カワチ:小学生が言ってることなんだし、そこまで気にしなくても。

──いや、最近はYouTuberの養成学校もあるらしくてね。そこに通いたいとまで言っているから、わりと本気なんだと思う。先が見えない職業だから止めたほうが無難だろうって気持ちと、親として子の夢を応援すべきだっていう両方の気持ちがあって、うまく考えがまとまらないんだよ。

カワチ:なるほど、それで俺に相談してきたわけか。じゃあ、このゲームをプレイしてみたらどうだ?
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──えっと、『沙耶の唄』?

カワチ:あぁ、ちなみにアダルトゲームで18禁だから気をつけてくれ。それなりにグロいシーンもあるからな。

──おいおい。なんで小学生の娘の相談に来てエロゲーをプレイしなきゃいけないんだ。もしかして、俺をからかってるのか?

カワチ:大真面目だよ。むしろ、エロゲーだからって偏見はよくないぞ? 『沙耶の唄』の脚本を手掛けた虚淵玄さんは、TVアニメの『魔法少女まどか☆マギカ』や『仮面ライダー鎧武/ガイム』の脚本も手掛けている人気作家だし、クオリティは担保できる。

──そうなのか? 仮面ライダーの脚本というのはすごいな……。

カワチ:ああ。今、アニメのシナリオライターやライトノベル作家として活躍している人のなかには、エロゲー業界出身の人も多いんだよ。もともと実力がないと生き残れないシビアな世界で戦っていたんだから、作る作品のクオリティは折り紙付きってわけさ。

──そうなのか……。なんだか偏見みたいなものがあったみたいだ。すまなかった。

カワチ:気にするな。で、『沙耶の唄』の話に戻すと、もともとは2003年12月26日にアダルトゲームブランドのニトロプラスから発売されたビジュアルノベルなんだ。2018年の12月に、ノベライズ版が星海社から発売されたことでまた話題になったんだよ。

──2003年のゲームが2018年にノベライズってすごいな!

カワチ:ああ。しかも第1巻は原作をなぞるような内容だったが、予定されている続巻は作者が「真っ向続編です」とツイッターで発言しているくらい気合が入っていてね。まさかエンディング後のストーリーが描かれるとは思っていなかったから、驚いているファンも多い。



──へぇ~!

カワチ:第1巻も評判が高いからね。俺も続きを楽しみにしている。ちなみに『沙耶の唄』はアメコミにもなっているんだ。

──え? アメコミ?

カワチ:ああ。キャラクターたちがめちゃくちゃ濃い顔になっていて、申し訳ないけどかなり笑えるんだ。 ニトロプラス オンラインストア
──わぁ! 本当に濃いなぁ……(笑)。

カワチ:ニトロプラス10週年のイベント「NITRO SUPER SONIC 10th Anniversary」で電撃発表されてさ。じつは俺もその現場にいたんだけど、そのときの空気は忘れられないな(苦笑)。

──これだけ絵柄が変わっちゃえばね……。で、そろそろどんなストーリーなのか教えてもらいたいんだが。

──ああ。それもそうだな。ちなみに最初のほうにも言ったがグロい作品なので気をつけてくれ!

■すべてが不快に映る世界で出会う、不思議な少女

カワチ:本作の主人公は匂坂 郁紀(さきさか ふみのり)。彼は普通の医大生だったが、交通事故に遭って生死の境をさまよう。最新の医療技術で、硬膜下血腫の除去手術をしたことにより、身体は回復するんだけど後遺症が残ってしまってな。

──後遺症……いったいどんな?

カワチ:知覚障害だ。風景や人物が不気味な肉塊のような姿形に見えるようになってしまうし、声もノイズが入っていて聞き取ることが困難になってしまうほどのな。……これは実際にグラフィックを見てもらったほうが早いだろう。上が通常の視点で下が郁紀の視点だ。
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──こ、これはきついな。

カワチ:ああ。そんな状況だから、郁紀の性格もどんどん沈んでいってしまうんだ。かつての仲間にも冷たくあたってしまったりね。まぁ、それぐらいだったらいいんだけど、物語の後半のほうになると本当に凄惨で……。

──医者には診てもらわないのか?

カワチ:ん? あ、あぁ。彼自身が医大生だからね。モルモットのように扱われることがわかっているから……。

──そうなのか……かなりツラいな。

カワチ:ちなみに、有志によってこの視点はVRでも再現されてるよ。気になったら観てみるといいかもしれない。


──え。遠慮しておこうかな……。

カワチ:賢明かもな。……話を戻そう。郁紀はストレスによって自殺まで考えてしまうようになるんだが、病院で沙耶という謎の少女に出会ったことで運命が変わる。
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──どういうことだ?

カワチ:郁紀の狂った世界で、彼女だけは唯一、正常な姿で映る存在なんだよ……。

──おぉ。すべてが狂ってしまったわけじゃなかったんだな。……って、なんで彼女のことだけ正常に見えるんだ? おかしくないか?

カワチ:んー。これはネタバレになっちゃうんだけど、じつは彼女、異次元の生命体なんだ。
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──えぇ!? ものすごいネタバレだな!?

カワチ:すまん! ただ、これを説明しないとどうにもその先を語れないから許してくれ。……で、正常なものが異常に見える郁紀が唯一正常に見える存在ということはだよ……。

──! まさか……。

カワチ:ああ。普通の人にとって、沙耶は醜い肉塊に見えるってわけだ。ちなみに『沙耶の唄』はクトゥルフがモデルになっていて、沙耶の元になった生物である「宇宙からの色」や「異次元の色彩」などを検索してみると、ビジュアルがわかりやすいと思う。まぁ、ショックを受けるかもしれないが……。

──うわー、めっちゃ気になるけど検索するのが怖い!

カワチ:そんな『沙耶の唄』だけど、主人公の視点とほかのキャラクターの視点が交互に切り替わりつつ進行するのが特徴でね。主人公の旧友や隣人が沙耶と遭遇するシーンなんかは完全にホラーで、かなり緊張感があるよ。

──マスターの話を聞いてめちゃくちゃ気になってきた。これはプレイしてみないと!

カワチ:ああ。5~10時間ぐらいで終わる短編だから、気になったらぜひクリアまでプレイしてみてほしい。……ただ、もうちょっとだけ語らせてくれ。アンタ自身の悩みはまだ解決していないだろうから。

──おっと、そうだった。

カワチ:じつは、『沙耶の唄』はほとんど1本道のストーリーなんだが、中盤でとても重要な選択が出てくるんだ。

──ほう。それはいったい?

カワチ:ぶっちゃけていうと、そのまま沙耶とともに生きるか、それとも沙耶に後遺症を治してもらって元の生活に戻るか……その二択だ。

──え!? 沙耶に治療してもらえば元に戻れるのか? だったら戻してもらうべきだろう!

カワチ:あぁ。普通はそう考えるよな。でもそれは郁紀にとって沙耶の姿が肉塊のような醜い姿になってしまうことを意味する……。

──……そ、そうだった。どちらか一方しか選べないというわけか。つらいな。

カワチ:元に戻るルートだと、自分の姿を思い出のままにしてほしいと伝える沙耶と携帯電話のメール越しでお別れするシーンがあって、これがまた寂しいんだ。
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──身を引くってことか……いい娘じゃないか。

カワチ:『沙耶の唄』はホラーだけど、ジャンルは純愛だと言われている。それはきちんと本作をプレイして、郁紀と沙耶の視点に立たないとわからないことなんだけど。

──周囲からは理解の出来ない化物に見えても、2人は愛し合っていたってことだな……。
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カワチ:そう、見た目ではないってことなのさ。アンタもYouTuberに憧れる娘を頭ごなしに否定しようとしているみたいだけど、ちゃんと動画を観たりしているのか?

──ウッ。そ、それは……。

カワチ:娘の視点に立ってみることで、はじめて分かることだってあるんじゃないかな。

──一方向から見ただけでは、大切なことはわからないって言いたいわけか。

カワチ:回りくどい言い方ですまないが、まぁ、そういうことだな。

──よくわかった。まずは娘に寄り添って、彼女の目線でも考えてみないとな。

カワチ:一緒にYouTubeを観てみるところから始めてみたらどうだ? きっと楽しいと思うぞ。娘さんを大事にしていることはよく伝わってくるし、アンタなら大丈夫さ。

──ありがとう、マスター。がんばってみるよ!
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テキスト:カワチ(Makoto Kawachi) ビジュアルノベル好きのフリーライター。さまざまなメディアに記事を寄稿しており、マニアックな知識や小ネタなどで読者を唸らせている。深みのあるゲームが好きかと思えば、「エロければなんでもいい」と豪語する猛者。
ツイッターアカウント→カワチ@kawapi

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